Addison病(原発性慢性副腎皮質機能低下症)
原発性副腎萎縮 or 外傷で、そのうち80%は自己免疫、その他の原因として結核や悪性腫瘍
自己免疫機序によるもの(多腺性自己免疫症候群Ⅰ・Ⅱ型)が最も多く,半数近くを占める.感染症では結核のほか真菌やウイルスも原因となる.髄膜炎菌敗血症後の副腎出血による急性副腎不全症は,Waterhouse-Friderichsen症候群とよばれる.
【問診】
①体重減少(→代謝異常,消耗性疾患,悪性腫瘍など) 食欲、内服薬
顔や手足などの日焼けが周囲の人より目立つ
健診・既往:胸膜肥厚と肺野の石灰化病変(→結核感染の既往 【身体所見】
表情に乏しく,問診時も無関心な様子で言葉数が少ない.
②口腔粘膜と四肢・体幹部皮膚の色素沈着(→ACTH分泌亢進)
顔面・口腔内(口腔粘膜,歯肉,舌,口唇など),外陰部(腟口,陰囊皮膚など),四肢(手掌の線状溝や手足の伸側),その他日光に露出しやすい部分の皮膚に濃褐色の着色として生じる
皮膚の乾燥や四肢に浮腫を認めない(→細胞外液量はほぼ正常
【検査】
血液所見:赤血球341万,白血球2,500.好酸球増加
血液生化学所見:
コルチゾールは視床下部に作用し抗利尿ホルモンの合成・分泌を抑制
IGRA陽性(→結核感染の既往
ACTHとコルチゾール(血漿レニン活性とアルドステロンも)
抗利尿ホルモン1.4pg/mL(基準0.5〜2.0)コルチゾールは視床下部に作用し抗利尿ホルモンの合成・分泌を抑制する.コルチゾール低下により抗利尿ホルモン分泌が亢進し,低Na血症をきたす.細胞外液量はほぼ正常に保たれる.【鑑別】SIADH
原発性副腎不全では,単発の刺激(迅速ACTH試験)でも連続刺激(連続ACTH試験)でもステロイドホルモンの増加反応はみられない.一方,続発性の副腎不全(Sheehan syndromeやACTH単独欠損症など)では,単発の刺激で反応がみられなくても連続刺激を加えることで副腎皮質の萎縮が改善され,ステロイドホルモンの増加反応がみられるようになるのが特徴である. https://scrapbox.io/files/68209157f32367b2d1f52877.jpg
免疫チェックポイント阻害薬の使用中に,急性副腎不全症を発症することがある.下垂体炎やACTH単独欠損症による続発性副腎不全が多いが,副腎皮質自体の障害により生じた例も報告されている.今後,症例の蓄積とともに発症頻度やメカニズムが明らかにされていくものと思われる.