知的財産法 前期第9回
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本日の授業
職務発明規定により、ライン餅やN角形切り溝餅の発明を譲り受けた株式会社越前屋は、それら発明につき、特許出願をすることとなった。さて、どのような手続きをしなければならないのだろうか。実際の事件の例でどのような手続きがなされたのかをみてみます。
「知っておきたい特許法』工業所有権法研究グループ(株式会社朝陽会)(22訂版)P43~121に説明があります。
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平成14年10月31日・・出願 (特願2002-318601号)
平成15年 8月 6日 出願審査請求
平成16年5月27日 出願公開
平成17年 5月27日・・拒絶理由通知
同年 8月 1日・・手続補正書、意見書及び手続補足書を提出
同年 9月21日・・拒絶理由通知
同年11月25日・・手続補正書、意見書及び手続補足書を 提出
平成18年 1月24日・・拒絶査定
平成18年 2月27日・・拒絶査定不服審判請求(不服2006-3586号事件)
同年 3月29日・・請求項等の手続補正書及び審判請求理由を変更する 手続補正書を提出
同月31日・・手続補足書を提出
平成20年 2月19日・・拒絶理由通知
同月29日・・請求項等の手続補正書、意見書を提出
同年 3月24日・・特許すべきものとの審決
同年 4月18日・・本件特許権の設定登録
事前に判断すべきこと
ある商品・製品を開発した場合、どのような知的財産が生まれているのか、その性質決定をする。
発明・考案・・・特許出願or実用新案登録出願
意匠(外観デザイン)・・・意匠登録出願
商標(商品名)・・・・・・商標登録出願
さて、ライン餅、N角形切り溝餅の発明をした者は、どのような出願により、どのような保護を受けるべきだろうか?
1) 特許出願
特許出願をするには、発明を文章で特定しなければならない。
文章作成には、日本語が重要:おすすめの図書
【新版】日本語の作文技術 (朝日文庫) 本多勝一
発明者(考案者)は、自身の発明・考案を、提案書に記載して、会社(知財部)に届けるべきことが、職務発明規定や従業者規則に定められているのが一般的です。
発明を文章で説明してみよう
例題:六角形の鉛筆の発明
鉛筆を転がりにくくするために、鉛筆の断面を六角形にしてみた。
さて、どのように発明をとらえて、言葉で表現したら発明を適切に保護できるだろうか。
下の写真は、上2本が断面が円形のため、机の上から転がり落ちてしまい、芯を折ってしまうことが多々起こっていた。そこで、一番下の写真の鉛筆のように断面を六角形にしてみたところ、転がりにくくなり、机から落ちることがほとんどなくなった。
転がりにくい鉛筆を「発明」として定義する。発明=技術思想。
発明を文章で説明することの意味=発明のコンセプトを特定するということ。
文章による特定方法(用語の選択)により権利の範囲が広くなったり狭くなったりすることに注意。
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(特許出願)
第三十六条 特許を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならない。
一 特許出願人の氏名又は名称及び住所又は居所
二 発明者の氏名及び住所又は居所
2 願書には、明細書、特許請求の範囲、必要な図面及び要約書を添付しなければならない。
3 前項の明細書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 発明の名称
二 図面の簡単な説明
三 発明の詳細な説明
4 前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
一 経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。
二 その発明に関連する文献公知発明(第二十九条第一項第三号に掲げる発明をいう。以下この号において同じ。)のうち、特許を受けようとする者が特許出願の時に知つているものがあるときは、その文献公知発明が記載された刊行物の名称その他のその文献公知発明に関する情報の所在を記載したものであること。・・・/pat-spec/<先行技術文献> 5 第二項の特許請求の範囲には、請求項に区分して、各請求項ごとに特許出願人が特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項のすべてを記載しなければならない。この場合において、一の請求項に係る発明と他の請求項に係る発明とが同一である記載となることを妨げない。
6 第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
一 特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。
二 特許を受けようとする発明が明確であること。
三 請求項ごとの記載が簡潔であること。
四 その他経済産業省令で定めるところにより記載されていること。
7 第二項の要約書には、明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した発明の概要その他経済産業省令で定める事項を記載しなければならない。
<一発明一出願>
第三十七条 二以上の発明については、経済産業省令で定める技術的関係を有することにより発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するときは、一の願書で特許出願をすることができる。
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切り餅事件
出願当時の発明品(角形・丸形の餅を開発した)
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願書の作成
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発明を特定するために必要と認める事項のすべてって何?
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切り餅事件:出願当初の【特許請求の範囲】
【請求項1】 角形の切餅や丸形の丸餅などの小片餅体の載置底面ではなく上側表面部に、周方向に長さ を有する若しくは周方向に配置された一若しくは複数の切り込み部又は溝部を設けたこと を特徴とする餅。
【請求項2】 角形の切餅や丸形の丸餅などの小片餅体の平坦頂面や載置底面ではなく上側表面部の側周 表面に、周方向に長さを有する若しくは周方向に配置された一若しくは複数の切り込み部 又は溝部を設けたことを特徴とする請求項1記載の餅。
【請求項3】
【請求項8】 前記切り込み部又は溝部は、周方向に連続させてほぼ環状に設けたことを特徴とする請求 項1~7のいずれか1項に記載の餅。
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切り餅事件の出願当初の明細書
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2) 出願公開制度
(出願公開)
第六十四条 特許庁長官は、特許出願の日から一年六月を経過したときは、特許掲載公報の発行をしたものを除き、その特許出願について出願公開をしなければならない。次条第一項に規定する出願公開の請求があつたときも、同様とする。
2 出願公開は、次に掲げる事項を特許公報に掲載することにより行う。ただし、第四号から第六号までに掲げる事項については、当該事項を特許公報に掲載することが公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると特許庁長官が認めるときは、この限りでない。
一 特許出願人の氏名又は名称及び住所又は居所
二 特許出願の番号及び年月日
三 発明者の氏名及び住所又は居所
四 願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項並びに図面の内容
五 願書に添付した要約書に記載した事項
六 外国語書面出願にあつては、外国語書面及び外国語要約書面に記載した事項
七 出願公開の番号及び年月日
八 前各号に掲げるもののほか、必要な事項
3 特許庁長官は、願書に添付した要約書の記載が第三十六条第七項の規定に適合しないときその他必要があると認めるときは、前項第五号の要約書に記載した事項に代えて、自ら作成した事項を特許公報に掲載することができる。
3) 審査
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(特許出願の審査)
第四十八条の二 特許出願の審査は、その特許出願についての出願審査の請求をまつて行なう。
(出願審査の請求)
第四十八条の三 特許出願があつたときは、何人も、その日から三年以内に、特許庁長官にその特許出願について出願審査の請求をすることができる。
2 第四十四条第一項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願、第四十六条第一項若しくは第二項の規定による出願の変更に係る特許出願又は第四十六条の二第一項の規定による実用新案登録に基づく特許出願については、前項の期間の経過後であつても、その特許出願の分割、出願の変更又は実用新案登録に基づく特許出願の日から三十日以内に限り、出願審査の請求をすることができる。
3 出願審査の請求は、取り下げることができない。
4 第一項の規定により出願審査の請求をすることができる期間内に出願審査の請求がなかつたときは、この特許出願は、取り下げたものとみなす。
5 前項の規定により取り下げられたものとみなされた特許出願の出願人は、第一項に規定する期間内にその特許出願について出願審査の請求をすることができなかつたことについて正当な理由があるときは、経済産業省令で定める期間内に限り、出願審査の請求をすることができる。
6 前項の規定によりされた出願審査の請求は、第一項に規定する期間が満了する時に特許庁長官にされたものとみなす。
7 前三項の規定は、第二項に規定する期間内に出願審査の請求がなかつた場合に準用する。
8 第五項(前項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定により特許出願について出願審査の請求をした場合において、その特許出願について特許権の設定の登録があつたときは、その特許出願が第四項(前項において準用する場合を含む。)の規定により取り下げられたものとみなされた旨が掲載された特許公報の発行後その特許出願について第五項の規定による出願審査の請求があつた旨が掲載された特許公報の発行前に善意に日本国内において当該発明の実施である事業をしている者又はその事業の準備をしている者は、その実施又は準備をしている発明及び事業の目的の範囲内において、その特許権について通常実施権を有する。
優先審査制度と早期審査制度
優先審査制度は特許法で定められた制度
(優先審査)
第四十八条の六 特許庁長官は、出願公開後に特許出願人でない者が業として特許出願に係る発明を実施していると認める場合において必要があるときは、審査官にその特許出願を他の特許出願に優先して審査させることができる。
優先審査の対象・・・出願公開後、第三者がその特許出願に係る発明を業として実施しており、出願人と実施者
の間で生じている紛争を早期に決着する必要がある特許出願。(特許庁より:
p189)
(早期審査)・・・早期審査・早期審理制度は、一定の条件を満たす出願について、出願人からの要請に応じ
て審査・審理を通常よりも早く行う制度。特許庁のガイドラインに従い提供されているサービスで法律に基づくものではない。
対象
(1)中小企業等
(2)外国関連出願
(3)実施関連出願
(4)グリーン関連出願
審査の結果
審査官が特許要件を審査して、拒絶すべき理由の有無を判断
拒絶すべき理由が見つかった場合
(拒絶の査定)
第四十九条 審査官は、特許出願が次の各号のいずれかに該当するときは、その特許出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならない。
一 その特許出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面についてした補正が第十七条の二第三項又は第四項に規定する要件を満たしていないとき。
二 その特許出願に係る発明が第二十五条、第二十九条、第二十九条の二、第三十二条、第三十八条又は第三十九条第一項から第四項までの規定により特許をすることができないものであるとき。
三 その特許出願に係る発明が条約の規定により特許をすることができないものであるとき。
四 その特許出願が第三十六条第四項第一号若しくは第六項又は第三十七条に規定する要件を満たしていないとき。
五 前条の規定による通知をした場合であつて、その特許出願が明細書についての補正又は意見書の提出によつてもなお第三十六条第四項第二号に規定する要件を満たすこととならないとき。
六 その特許出願が外国語書面出願である場合において、当該特許出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項が外国語書面に記載した事項の範囲内にないとき。
七 その特許出願人がその発明について特許を受ける権利を有していないとき。
(拒絶理由の通知)
第五十条 審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし、第十七条の二第一項第一号又は第三号に掲げる場合(同項第一号に掲げる場合にあつては、拒絶の理由の通知と併せて次条の規定による通知をした場合に限る。)において、第五十三条第一項の規定による却下の決定をするときは、この限りでない。
餅事件の場合
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拒絶理由通知に対する対応策・・請求項の補正、明細書の補正と意見書の提出
第十七条の二 特許出願人は、特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる。ただし、第五十条の規定による通知を受けた後は、次に掲げる場合に限り、補正をすることができる。
餅事件の場合
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切り餅事件の拒絶査定不服審判
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拒絶すべき理由がみつからない場合
(特許査定)
第五十一条 審査官は、特許出願について拒絶の理由を発見しないときは、特許をすべき旨の査定をしなければならない。
特許査定・特許権の発生
特許権の発生(設定登録)
特許権の設定の登録・・・特許査定(特51 )、少なくとも第1年から第3年までの特許料の納付(特107 )を条件として、出願にかかる発明について、原簿に特許権の設定登録をすること(特27 、特66 )。
登録の効果
特許権の発生
特許証の交付(特28)
特許公報への掲載(特66③)
切り餅事件:特許査定された特許請求の範囲
【特許請求の範囲】
【請求項1】 焼き網に載置して焼き上げて食する輪郭形状が方形の小片餅体である切餅の載置底面又 は平坦上面ではなくこの小片餅体の上側表面部の立直側面である側周表面に、この立直側 面に沿う方向を周方向としてこの周方向に長さを有する一若しくは複数の切り込み部又は 溝部を設け、この切り込み部又は溝部は、この立直側面に沿う方向を周方向としてこの周 方向に一周連続させて角環状とした若しくは前記立直側面である側周表面の対向二側面に 形成した切り込み部又は溝部として、焼き上げるに際して前記切り込み部又は溝部の上側 が下側に対して持ち上がり、最中やサンドウイッチのように上下の焼板状部の間に膨化し た中身がサンドされている状態に膨化変形することで膨化による外部への噴き出しを抑制 するように構成したことを特徴とする餅。
【請求項2】 焼き網に載置して焼き上げて食する輪郭形状が方形の小片餅体である切餅の載置底面又 は平坦上面ではなくこの小片餅体の上側表面部の立直側面である側周表面に、この立直側 面に沿う方向を周方向としてこの周方向に一周連続させて角環状の切り込み部又は溝部を 設けたことを特徴とする請求項1記載の餅。
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登録後の制度
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特許権の消滅
消滅事由
他の例でもみてみよう
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