マルセル・デュシャン
一九一三年に私は自転車の車輪を台所用腰掛(スツール)に取りつけてそれが回転するのを眺めるという名案を得た。〜ちょうどその頃、この種の表示形式を指し示すために、「レディ・メイド」という語を思いついた。私はどうしても明確にしておきたいのだが、「レディ・メイド」の選択は美的楽しみ(esthetic delectation)によって指図されることはけっしてなかった。この選択は視覚的無関心(visualindiference) 基づいていた、つまり、良い趣味にせよ悪い趣味にせよ趣味の完全な欠如に、要するに完璧な無感覚状態(a complete anesthesia)に基づいていた。 ここでいう「視覚的無関心」「無感覚状態」はカント的美と解釈できる。