しかし、これらは一般的には注目されず、1962年にイギリスの生態学者ウィン・エドワーズV. C. Wynne-Edwards(1906―97)が、利他的行動も含めて動物の社会行動は、過剰密度によって個体群を絶滅させないための密度調節機構として、群淘汰によって進化したとする見解を発表して、個体淘汰論者との間に大論争を巻き起こすこととなった。近年では、適応度(どれだけの子孫を残すかという尺度)を指標として次のように問題とされる。
ライトやウィン・エドワーズの説では、生殖隔離された集団が前提にされているが、ハミルトンW. D. Hamiltonの1964年に提唱した包括適応度の概念に基づく血縁淘汰説では、生殖隔離を前提とせずに、近縁者間で近縁度が高く、自らの子孫を残さずとも近縁者経由で同祖遺伝子を次世代に伝えうる確率の高い場合に、利他的行動のおこる根拠を説明しうるとしている。ほかに、非近縁者間での協働淘汰を考える説も1970年代になってウィルソンD. S. Wilsonらによって提出されている。