状況的認知
1. モデリング: 師匠は、徒弟に自分の技を観察させる 2. コーチング: 師匠は、徒弟に学んだ技を使わせてみる。そしてその様子を観察し、アドバイスを与える。 正統的周辺参加論の前提として唱えられてきた考え方に、「状況的認知論」(Situated cognition)がある。「我々が用いている知識は、それが用いられる状況や文脈の中で適切に生起するものであり、身の回りの道具や他者との間に分かちもたれているのであって、決して特定の個人の中にしまい込まれているわけではない」との主張。単に人が自分で知識を構成する、というよりは、人とのやり取りの中で「社会的に」知識を構成していく、という点を強調する意味で、単に「構成主義」ではなく「社会的構成主義」と区別して呼ぶ場合がある。 「発達の最近接領域(ZPD:zone of proximal development)」は、ロシアの心理学者ヴィゴツキーが提案した概念。一人で問題解決が可能な現在の発達レベルと、一人では解決できないが援助を得ることによって達成可能な発達レベルの間の領域を意味している。たとえば、自転車の乗り方を練習するときの「補助輪」のように、最初は自転車に乗れないが、「補助つき」ならばできる。「補助つき」で試みを繰り返しているうちに、自力で(補助輪なしで)できるようになる。この「補助輪付」の領域をZPDと呼ぶ。ZPDは、「人は、人やものに囲まれ、互いに影響を与えながら学んでいる。人の学びは、周囲のものや人が行動のリソースになって生じ、個人の頭の中だけで起こるのではない。学習は個人個人の中で起きるのではなく、周囲の環境とのかかわりの中で起こる」という状況的認知論の拠り所となっている。