自然変換について、丁寧に見てみる
まず、圏$ \mathscr{A},\mathscr{B}があって、その間の2つの関手$ F,Gを考える。
https://gyazo.com/0e9a1c601df8681981d7fd251a8ca28a
$ F,Gは関手なので圏$ \mathscr{A}の任意の対象$ Aに対して、圏$ \mathscr{B}の対象$ F(A),G(A)が定まる。
https://gyazo.com/29b9aa17514e4fdca4228cd4f8d0dcc8
https://gyazo.com/10b43051f590e32ed3d9028eb62d2518
すでに知っている「射」は
対象と対象、の間の対応を表すものだった
また、「関手」は
圏と圏、の間の対応を表すもの、というのを上で見た
そして「自然変換」とは、さらにメタで
関手と関手、の間の対応を表すものだ
https://gyazo.com/99bf5cd90194b1b8055865255f8221da
先程の図に縦方向の矢印を加えたものだ。
この縦方向の矢印が自然変換になる
関手から関手への対応だということが見て取れる
上図が可換図式であるということから、以下の関係が成り立つことがわかる。 https://gyazo.com/70a58bd17d4859f6081fa39fae56000a
この点線矢印が唯一つに決まるので以下の等式が成り立つ
$ \alpha_{A_2}\circ F(f)= G(f)\circ \alpha_{A_1}
要は、$ \mathscr{A}の2対象の間の射$ f:A_1\rightarrow A_2に対して、一つの$ F(A_1)\rightarrow G(A_2)が対応する
このとき、
圏$ \mathscr{B}の射の族$ \{F(A)\xrightarrow{\alpha_A} G(A)\}_{A\in\mathscr{\mathrm{ob}(A)}}のことを自然変換といい、 $ \alpha:F\Rightarrow Gと表す
射の族とは?って感じなので、ここも丁寧に見てみる。
ここでは$ \mathrm{ob}(\mathscr{A})を添字集合として考えているのだ。 なので下図のように、集合の中身と、添字は別の話をしていることを前提に置く必要がある。
https://gyazo.com/fc1440a56506ca17e116b264bd04efde
わかりやすい例を考えよう。
添字集合$ I=\{1,2,\dots n\}があったとき
$ \{O_i\}_{i\in I}は有限個の開集合$ O_1, O_2,O_3,\dots,O_nのことを表す
$ I=[0,1] があったとき
$ \{A_i\}_{i\in I}は$ A_0,A_{0.5},A_{0.33..},A_{\frac{1}{\sqrt{2}}},\cdotsなどになる
他にも無限にある
ここで、話を戻すと
$ \mathrm{ob}(\mathscr{A})は「圏$ \mathscr{A}の対象の集まり」であった
これに含まれる任意の対象$ Aに対して、$ \{F(A)\xrightarrow{\alpha_A} G(A)\}_{A\in\mathscr{\mathrm{ob}(A)}}だと言っているのだ。
もっと具体的に書いてみると
仮に圏$ \mathscr{A}に対象が$ n個存在し、それらを$ A_1,A_2,\cdots,A_nとラベル付けすると、
自然変換は$ \{F(A_1)\xrightarrow{\alpha_{A_1}} G(A_1),F(A_2)\xrightarrow{\alpha_{A_2}} G(A_2),\cdots,F(A_n)\xrightarrow{\alpha_{A_n}} G(A_n)\}という感じになる
これあってんのか?mrsekut.icon
$ A\in\mathrm{ob}(\mathscr{A})と同じ数だけ$ \alphaがあるってことだよな?
ここで自然変換の定義を振り返る
自然変換$ \alpha: F\rightarrow Gとは
$ \mathscr{B}の射の族$ \{F(A)\xrightarrow{\alpha_A} G(A)\}_{A\in\mathscr{A}}であって、$ \mathscr{A}の各射$ A\xrightarrow{f}A'について下図が可換になるもののことをいう https://gyazo.com/af686423eaaf80426c47afc060e0763b
つまり$ \alpha_{B}\circ F(f)= G(f)\circ \alpha_{A}が成り立つ
例えば、$ fが恒等射だったとき、どうなるかを考えてみよう
$ f:A\rightarrow Aに対する自然変換を考える
$ f=1_A
関手$ F,Gを考えると
$ F(f):F(A)\rightarrow F(A)
$ G(f): G(A)\rightarrow G(A)
となる
つまり$ F(f)=1_{F(A)},G(f)=1_{G(A)}だ
同じように図にするとこうなる
https://gyazo.com/cbe3c7ec76cc6d36934d6c490422a810
↑は同じものを2回描いているので、もっと簡潔に以下のように描ける
https://gyazo.com/72a09d9f541c1dbe5b470ccebe778e9b
なので可換の条件もわかりやすい
$ 1_{G(A)}\circ \alpha_A=1_{F(A)}\circ\alpha_Aなのでこれはつまり、$ \alpha_A=\alpha_Aのことである
$ \mathscr{A}の2対象の間の射$ f:A_1\rightarrow A_2に対して、一つの$ F(A_1)\rightarrow G(A_2)が対応すると言ったが
この「一つの射」がまさに自然変換$ \alpha_Aそのものになる
$ \mathscr{A}を離散圏とし、$ F,G:\mathscr{A}\rightarrow\mathscr{B}を関手とすると 関手は$ \mathscr{B}の対象の族$ (F(A))_{A\in\mathscr{A}}
自然変換は$ \mathscr{B}の射の族$ (F(A)\xrightarrow{\alpha_A}G(A))_{A\in\mathscr{A}}
参考