ひろゆきの賠償金踏み倒し
2020年4月改正の民事執行法によって財産開示手続きに刑事罰が追加された 西村氏は2ちゃんねるの書き込みの削除をめぐり、多くの裁判を経験したが、「電車男」の印税60万円ほどを差し押さえられた以外は、賠償金を支払わなかったそうだ。
「10年たつと時効だから(賠償金が)ゼロになる。払うよりも10年間逃げ切った方が得」
「お金はあるけど、(相手が)ここにあるぞと分からない限り、とれない。不動産とかマンションとか持っていたら、とられるけど、そういうのは持っていない」などと説明した。
一部上場企業(ドワンゴ)子会社の取締役を務めているのに報酬ゼロの理由について本書では「貰っても差し押さえられるだけだから」と不敵なコメントを残している。つまり、国内では正規ルートで給与を貰えない身になっているのが、現在のひろゆき氏だ。
なぜ給与を差し押さえられるかというと、2ちゃんねるへの書き込みを放置した管理者責任を問う損害賠償請求などの敗訴で賠償を命じられており、その支払いを拒否し続けているから。その額がまた、ハンパでない。
本人すら全体像を把握していないものを読売が執念深く計算しているのがまた面白いのだが、それによると、2007年3月時点で少なくとも43件で敗訴が確定し、賠償額は計約4億3400万円。さらに1日88万円ずつ「制裁金」が増えているそうだから、2年余り経った現在では、およそ11億円に膨らんでいることになる(これが2ちゃんねるを捨てた理由の筆頭なのは明らかだが、本書では触れていない)。
ひろゆきの裁判はほとんどやれば勝てたと川上量生は見ている 出席をせずに負けて賠償金が発生した裁判が、出席していれば勝てたのかは分からないじゃないかというのは原理的にはその通り。ただ、ほとんどの裁判は勝てた。
というかおそらく内容証明の段階で弁護士が対応していれば、そもそも裁判までも行かなかったケースが大半だったと考えている。
批判
川上氏が「裁判に出席しないから負けただけ」と書いてますが、これも事実とは反しています。
数少ない例外として初期の訴訟では西村氏は裁判に応じてきました。が、それでも敗訴してきました。
それは上記に書いた事情があったからです。
裁判の期日がダブった時に裁判所に日程をずらしてもらえなかったのが行かなくなったきっかけ
ファクトとして、そもそもひろゆきは最初から裁判を無視していたわけではない。最初は裁判にちゃんと出廷していた。ところが2ちゃんねるに関わる訴訟の数が膨大になってきて、物理的に出廷が不可能になったのだ。2ちゃんねる全盛時代、まだ、ネットはそこまで一般的ではなかった。2ちゃんねるに悪口を書かれた人もネットの使い方を知らない人が多くて、2ちゃんねるにアクセスして、そこで削除要求をするなんてことはできない人が多かった。弁護士もそうだった。なので、2ちゃんねるが用意した削除要請のフォーマットは見てもらえず、いきなり訴訟をおこなうケースが全国で多発していた。
批判
@masterlow: 私が2ちゃんねる被害者で法訴訟をした人たちに聞くと、みな最初は西村氏を訴えるつもりはなかったといいます。 それは削除請求に応じなかったから、そうしたということです。これはプ責任制限法以後も同様です。
つまり2ちゃんねるそのものに被害者救済の仕組みが機能していなかったということです
@masterlow: ...カドカワグループの動画サイトの役員になったあたりから、2ちゃんねるは以前よりも裁判所の請求(具体的には投稿者情報の開示請求)には応じるようになってきました。よって訴訟リスクは減りました。... 訴訟する方は簡単だ。本人訴訟ならほとんど切手代と最寄りの裁判所への交通費で済む。ところが訴訟されたひろゆきは全国の裁判所を飛び回らなければならない。いくら裁判をすれば勝てるといっても、ひろゆきの体は一つしかない。
あるとき同じ日に全国の別々の裁判所へ出廷するように命令がされて、事情を説明して片方の日程をずらしてほしいとひろゆきが裁判所にお願いしたのに裁判所から拒否をされたということがあった。これが、ひろゆきが裁判所に出廷しなくなった最初のきっかけだ。
弁護士を雇うのは金銭面以外のハードルがある
2ちゃんねるへの訴訟は全国で起きるので、全国規模の大手弁護士事務所に頼みたい しかし大手弁護士事務所は「法曹界の敵」ひろゆきの2ちゃんねるに関わりたがらないので困難
弁護士を頼むという選択肢もある。お金がかかりすぎるという問題もあったのだが、それは置いといても、実は受けてくれる弁護士もいなかった。なぜかというと2ちゃんねるの訴訟は全国で発生していたので、全国規模でサポートできる大きい弁護士事務所じゃないと受けることができない。で、そういう大きい弁護士事務所は2ちゃんねるに関わることを嫌がった。
当時2ちゃんねるとひろゆきは完全に法曹界の敵だった
各地で弁護士を雇うのは説明コストが高くつきすぎる
できなくもないがめちゃくちゃ大変。
別々に1から説明が必要だし、訴訟の対応方針を全国で統一するのも大変。企業でちゃんとした法務部とかあれば別だろうが(略)
ひろゆきの訴訟無視、賠償金支払い無視という戦略を、同情の余地はあるにせよ、僕として肯定しているわけではない。やはりまともな社会人としてはあり得ないと当時も今も思っているし、だから、受けてくれる弁護士事務所を探して紹介した。
というわけで、ひろゆきの訴訟を受けてくれる弁護士事務所を探して紹介したのは、僕だ。
それでやっと、ひろゆきは2ちゃんねるに関わる訴訟に対応することが可能になったのだ。
批判
仮定
AがプラットフォームXにBを批判する文章を書いた
Xが削除しなかった
Xの主張
Aの表現の自由がある
プロバイダーは直接名誉毀損をしていない(プロ責)
公益性や公共性、真実性を判断できない
責任追求側が立証責任せよ
これは,当該情報の内容が,人の品性,徳行,名声,信用等の人格的価値について社会的評価を低下させる事実の摘示,又は意見ないし論評の表明であるなど,他人の権利を侵害するものである場合に,
プロバイダーの責任があるときはこう
プロバイダーが当該情報が他人の権利を侵害することを知っていたときはもちろん,
プロバイダーが当該情報の流通を知り,かつ,通常人の注意をもってすればそれが他人の権利を侵害するものであることを知り得たとき
被害者側
権利侵害の認識 or その認識可能性の主張
立証責任
それ以上に権利侵害についての違法性阻却事由,責任阻却事由の主張立証責任についてまで規定をしているものではないと解される。
XはAの侵害を認識し得たので賠償責任がある
BはAの発言に対して賠償を求めることは表現の自由を侵害しない
ここで気になる点
賠償を求めることは表現の自由をもちろん侵害しないが
Xが消すべき判断基準が不明
例えば悪徳な医者がいたとして、その不評を書き込んだときに、Xが消さなくて損害賠償請求をしたらどうか?
プ責任制限法では、被害が発生した投稿の書き込み者に対して、サイト運営者が削除請求について照会し、これに同意(もしくは無視)すれば、運営者は削除しなければなりません。
同意しなければ運営者は削除しないでもよいことになりますが、運営者は申し立てがあったと告げることで、責任を回避できます
多くのサイトはこれによって訴訟リスクを回避してきました。
ところが2ちゃんねるは、誰が投稿者かわからないという体裁をとってきました。
(ただし実際は、法的には知ろうと思えば知ることはできますが)
そのため、削除請求についての照会が投稿者にできないことになります。