資本主義における主婦の誕生と変遷
重要なことは、主婦がひとつの生活様式を反映しているということ
つまり、主婦の誕生と変遷の歴史は、生活様式の変容の歴史 主婦には 2 種類の類型 (主婦は 2 回誕生したと言える) 資本総体にとっては有害
このような状況は、主婦誕生の前段
貧困圧力により、夫婦双方の劣悪な労働条件・低賃金のもとでの就労 農業中心の社会から産業中心の社会への転換期の過渡期の状態
次のような錯綜する力学
個別資本は徹底的に労働力を利用することを考える、が、資本総体にとっては有害
家父長制は、女性の役割を家庭におき、男子家父長の統率のもとにおこうとする
2 つの柱
年少者や女性の労働に対する制限
男子労働者の労働条件の改善
重工業が中心となってくることも女子を労働市場から撤退させる要因になった 一方の極 (生産点) に位置するのが近代的な労働関係に基づく雇用労働者 低賃金での夫婦 2 人での就労の代わりに、生産労働と再生産労働との質の高い専従者をつくり出して、労働力の安定的な再生産をはかる (家族賃金と主婦の専業化) 次世代の労働力、使い古しの労働力のケアを含む
どちらが男でどちらが女でも良いわけだが、従来の役割配分の規範が、「男 = 生産労働、女 = 再生産労働」 と読み替えられた
当の既婚女性にとっては多くの場合苦役からの解放、階層上昇を意味したため、積極的に受け入れられた
近代主婦誕生の別のルート
当時の女あるじは、自ら手を動かすことはなく、家事使用人が担当した その後、ホワイトカラーの職種が女子にも開かれることで、そちらに流れるように
中流階級の女性も、自ら家事をしなければならなくなった
東アジアの諸社会でも、広大な農村セクターを残す場合は同様ではあるが、多少の違いはある 既婚女子の近代産業での就労は必ずしも一般的ではない
工場法などによる大きな変化と言うよりは、男子の賃金上昇により徐々に分業が可能になっていった
近代主婦の生活様式
近代主婦は、夫婦愛と母性愛という 2 つの力に支えられて、家庭という領域を自分の活動領域と考え、再生産労働という新たに生じた作業に専念する 庶民にとって、従来、家事はその他の多くの仕事の中のひとつであり、特に重視されていたわけでもない
育児もそうで、里子に出されたり、農作業の間、布にまかれて放置されたりしていた
子どもは 「小さな大人」 でしかなかった
主婦という存在形態に対する疑問が生まれることは少なかった
他のことを省みる余裕がなかった
主婦でいることが階層上昇を意味することが多かった
主体に、家事を 「労働 (labor)」 だと感じ、できればやらずに済ませたいもの、やむを得ず担うものという意識がないと、家事時間の短縮は起こらない → そういう意識の発生が現代主婦の誕生のためには必要 家事がもっていた情緒的な意味のはく奪
このとき、家事以上にやりがいを感じることがあれば、家事労働時間は短縮される
女性の教育水準の上昇と、それに伴う高学歴女性の就業機会の増加が大きな役割を果たした
高学歴女性の就業は、専業主婦として家庭の中にいるよりも多くの可能性を開く 高学歴女性自身が就労するというだけの話ではなく、それにより専業主婦にとって自らの作業に対する意味づけに大きな変化をもたらす
女性の学歴が上がると労働力率が上がるのか、あるいは下がるのかは、女子労働に関するイメージを左右する大きな要因 前者のような社会は就労がもてはやされやすく、後者のような社会では主婦であることの地位が相対的に高い
単に外で働けば女性の地位が変わるといった単純なものではない
特徴
2. 主婦という存在に対する疑問が出てくる
3. 家庭の外に自己実現を求める場合と同様に、家庭の中に自己実現を求める傾向もみられる
掃除、洗濯の頻度や料理の質などの要求水準が上がるだけに留まらず、趣味的な要素が強い家事が大衆レベルで出現
主婦の消滅
主婦というものは、ある歴史的条件のもとでうまれた近代社会の産物である → ある条件の下で消滅しえる
次のような状況が必要
産業化の側から、質の高い労働力を求めるために、女性に対等な就業と昇進の機会が与えられる必要
あるいは、国家のイニシアチブで、高齢化社会へのソフトランディングの一環としてそのような社会政策が採用される可能性
家父長制が、役割の配分を対等なものになる必要
主婦の側が、家庭の外で自己実現を求める傾向が強まる必要
関連
参考文献