記憶の分類
記憶は陳述記憶(declarative memory)と非陳述記憶(non-declarative memory)に大別できる。
陳述記憶はさらにエピソード記憶、意味記憶に分けられる。
非陳述記憶は手続き記憶が該当する。
長期記憶
一般に知識といわれているものは記憶に保持されている情報のことである。語彙に関する知識であるメンタル・レキシコンのような記憶を、心理学では「意味記憶(semantic memory)」と呼ぶ。記憶には、その他に私たちの経験したことも保持されている。このような記憶情報を「エピソード記憶(episodic memory)」と呼ぶ。
意味記憶とエピソード記憶をまとめて、「宣言的記憶(declarative memory)」とか「命題的記憶(propositional memory)」と呼ぶ。なぜなら、これらの記憶情報は、完璧には無理かもしれないが、かなりの部分をことばで表現することができるからである。これに対して、お箸の使い方や、泳ぎ方、自転車の乗り方のようなスキルに関する情報の記憶は、「手続き記憶(procedual memory)」と呼ばれる。手続き記憶は、宣言的記憶ほどうまくことばで表現することが難しいことが多い。たとえば、自転車の乗り方を説明しても、それを聞いて自転車に乗れるようになるわけではない。練習を通して、学習しなければならない。つまり、ことばで表現できる情報以外の情報も相当存在するということだ。宣言的記憶と手続き的記憶をあわせて、「長期記憶(long-term memry)」と呼ぶ。
table:記憶の分類
1 2 3 4 5 脳との対応
記憶 長期記憶 陳述記憶(宣言的記憶) エピソード記憶 内側側頭葉・大脳新皮質
意味記憶 内側側頭葉・大脳新皮質
非陳述記憶(非宣言的記憶) 手続き記憶 運動技能 線条体
知覚技能 線条体
認知技能 線条体
プライミング 新皮質
古典的条件付け 情動反応 扁桃体
骨格筋反応 小脳
非連合記憶 関連する反射経路
短期記憶
意識的に想起できる記憶(言語化、イメージ化できる)
・エピソード記憶(episodic memory)
いつ、どこで、誰とといった時空間に特定する体験に相当する記憶
・意味記憶(semantic memory)
鳩は平和のシンボルといった知識の記憶
意識的には想起されない記憶、言語で表現することが難しい
・手続き記憶(procedural memory) 自転車の乗り方といった、意識には上がらないが反復によって習熟する技能
運動技能
知覚技能
認知技能
・プライミング
・古典的条件付け
・非連合効果
・順応水準理論
出典
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外界の情報は感覚器官で受容され、一次感覚野に入り、高次の連合野で処理された後、大脳辺縁系にも情報が送られる。一方、海馬や扁桃体など辺縁系から各皮質連合野に情報が送られる経路も存在している。このように、海馬には各感覚入力や情動、運動出力などを担う各領域と双方向の連絡があるため、体験した事象の統合的な記憶を担っていると考えられてきた(小野ら 1994など)。現在では各皮質領域で処理された情報を海馬を介して統合する形でエピソード記憶が形成されるとする考えが有力である(Eichenbaum 1993, Milner 1989)。
出典
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