起ったことはもう起ったことだし、起っていないことはまだ起っていないことなのだ
つまり世の中には正しい結果をもたらす正しくない選択もあるし、正しくない結果をもたらす正しい選択もあるということだ。このような不条理性──と言って構わないと思う──を回避するには、我々は実際には何ひとつとして選択してはいないのだという立場をとる必要があるし、大体において僕はそんな風に考えて暮している。起ったことはもう起ったことだし、起っていないことはまだ起っていないことなのだ。村上春樹. パン屋再襲撃 (Japanese Edition) (p.6). Kindle 版.
村上春樹の根本思想の一つ
「正しい結果をもたらす正しくない選択もあるし、正しくない結果をもたらす正しい選択もある」はいいとして、そこから「何一つ選択してない」「選択なんてしない」ってことを導く無茶苦茶な論証。でも、日本人これ、大好きでしょ。
/motoso/基素.iconさんの/motoso/ゼロから始める政治に表明されてるような感覚がこれをよく表してると思う。
>象の消滅を経験して以来、僕はよくそういう気持になる。何かをしてみようという気になっても、その行為がもたらすはずの結果とその行為を回避することによってもたらされるはずの結果とのあいだに差異を見出すことができなくなってしまうのだ。ときどきまわりの事物がその本来正当なバランスを失ってしまっているように、僕には感じられる。あるいはそれは僕の錯覚かもしれない。象の事件以来僕の内部で何かのバランスが崩れてしまって、それでいろんな外部の事物が僕の目に奇妙に映るのかもしれない。その責任はたぶん僕の方にあるのだろう。村上春樹. パン屋再襲撃 (Japanese Edition) (p.52). Kindle 版.