アウトラインプロセッシング入門
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階層化、折りたたみ、入れ替えが三大機能
しかし、すべてのアウトライナーに共通する基本機能があります。それは「アウトライン表示の機能」、「アウトラインを折りたたむ機能」、「アウトラインを組み替える機能」の三つです。アウトラインプロセッシング入門 Tak. (p.15). Kindle 版. 作業が一段落したら「未使用」の中を整理します。既存の項目に収められそうであれば、適切な場所に動かします。既存の項目に収まらず、なおかつ残しておきたい内容であれば、類似の内容をグルーピングして新しい見出しを立てます。トップダウン型で作業を始めたにもかかわらず、ここで行っているのはボトムアップ型の作業です。「未使用」の中でいくつかまとまりができてきたら、既存のアウトラインに組み込む余地がないか、あらためて考えます。うまく収まるものもあれば、新しいパートの追加が必要なものもあるでしょう。いろいろ工夫して組み込むべきものを組み込みます。どうがんばっても組み込めないものは「未使用」に残しておきます。ときどきアウトラインを折りたたんで全体の構造を確認します。想定外の項目を組み込んだ結果、肥大化してしまったパートがあるかもしれません。整理していくつかのサブパートに分割し、バランスを整えるためにアウトラインを組み直します。その過程でまたいくつか新しい項目が立つかもしれません。再びトップダウン型です。さらに、乗っているとき勢いで追加したまま「未使用」に入っていた断片が、新しく立った項目と関係していることに気づいたりもするかもしれません。このようなプロセスを繰り返すことで、アウトラインは成長していきます。これが「シェイク」です。「アウトライン」とはいっても、内容も同時に書かれていることが重要です。書くことによってアウトラインを成長させているのです。アウトラインプロセッシング入門 Tak. (p.36). Kindle 版. 同じことはアウトライナーでなくてもできますが、アウトライナーのいいところは「未使用」見出しを折りたたんでおけば、その存在をほとんど意識しないですむことです。また、いったん「未使用」に入れた内容をあらためて検討・整理するときに、アウトライナーの機能を活かせるのもポイントです。アウトラインプロセッシング入門 Tak. (p.76). Kindle 版. 考えてみると、文章を書くということは「構成・流れを組み立てる」ことと「個別のフレーズを考え、滑らかにつなぐ」ことという、まったく異なる作業を同時にやっているわけです。これは頭にとってはかなりの負荷です。すごく説得力のある構成を思いついたけど、うまいフレーズ(文章)が浮かばず悩んでいるうちに流れがわからなくなる。逆にとても素敵なフレーズが頭に浮かんだけれど、つなぎ合わせてみたら説得力がなく、ああでもないこうでもないと考えているうちにフレーズが色あせて見えてくる。そんなことはないでしょうか(私はよくあります)。異なる二つの作業を同時にやろうとすることの難しさです。アウトラインプロセッシング入門 Tak. (p.37). Kindle 版. 空間配置が可能な発想法は、四方八方に広がる発想をキャッチできるメリットがある反面、最終的なアウトプットである文章としては分断されたままになっています。文章とはリニアに流れていくものなので、空間配置から流れ(フロー)に変換する作業が必要になります。アウトラインプロセッシング入門 Tak. (p.127). Kindle 版. アウトライナー自体は発想ツールではありません。キーワードのグルーピングによる発想法に使えないことはありませんが、そうなると項目の「空間配置」ができないことが不満になってきます。自由な発想は四方八方に広がります。しかしアウトラインはインデント(字下げ)によって立体的な構造を表現しているものの、本質的にはリニアなものなので、自由に広がる発想は捉えきれないのです。アウトラインプロセッシング入門 Tak. (pp.116-117). Kindle 版. 〈否定派〉は「アウトライナーは本来階層構造で表現できないものまで階層構造の中に閉じ込めてしまう」、そして「アウトラインのツリー構造よりも、網目構造の方が複雑な情報を扱える」と主張します。ここでいう網目構造とは、たとえば相互にリンクされたハイパーテキストや、複数のタグがつけられたEvernoteのノートをイメージすればいいでしょう。一方の〈肯定派〉は「アウトライナーは階層構造を強制などしない」、「むしろテキストの固まりの移動が容易にできること、マクロな視点とミクロな視点を行き来できることで、より自由に編集ができる」と主張します。アウトラインプロセッシング入門 Tak. (p.119). Kindle 版. 確かにアウトライン上では、ある記述は「A」と「B」どちらかにしか分類できません。しかしアウトライナーに入っている限り、それはある記述が「A」と「B」のどちらに含まれるべきかという思考プロセスの、最新のスナップショットにすぎません。今「A」に分類されている内容が、次の瞬間には「B」に再分類される可能性を常にはらんでいます。見た目上「A」に分類されているけれど、同時に「B」でもある可能性が常にある。それはもはや単純なツリーではありません。アウトラインプロセッシング入門 Tak. (p.121). Kindle 版. アウトラインが単なる目次と異なる点は、平面に見えて実は立体だということです。階層の上下関係を入れ替えることで、同じ内容を目的に応じたさまざまな視点から眺めることができます。アウトラインの組み替えは視点の組み替えでもあるのです。アウトラインプロセッシング入門 Tak. (p.54). Kindle 版. 時間を測って20~30分間、頭にあることを一気に書き出します。テーマが決められているならそのテーマについて自由に、そうでなければ書きたいこと、書けそうなことについて自由に書きます(ここではテーマが決められていないものとして進めます)。形式も順番も表現も誤字脱字も気にすることなく、ひたすら頭に浮かぶことを書きます。ひとつだけ注意するのはキーワードの羅列にはしないこと。ラフでいいので「文章」の形を取ります。そしてできるかぎり手を止めず書き続けます。何も浮かんでこなかったら「今、自分が書くべきことを書こうとしているのだが何も浮かんでこない。自分は何が書きたいのだろう?まずはここ数日身の回りで起こったことに何かヒントはないだろうか」とかなんとか書いてみます。何かを考えようとする思考をそのまま書き出してしまうのです。経験的に、深く考えずにただ手を動かしているうちに頭が働き始め、やがて書くべきことが流れ出してくることが多いようです。出てきたことは躊躇せずに書き出します。アウトラインプロセッシング入門 Tak. (pp.55-56). Kindle 版. 木村泉氏は『ワープロ作文術』の中で、文章に「補助線」を引くということを提案されています。「補助線」というのは幾何の証明問題のときに引くあの「補助線」です。どういうことかというと、公にする文章に書いてしまうと差し障りがある内容でも、それを書くことで勢いがつく、あるいは書き出すきっかけになるなら、敢えて書いてしまう、ということです(もちろん後で消します)。アウトラインプロセッシング入門 Tak. (p.62). Kindle 版. 簡単にいうと、ブログでもやりかけの翻訳でも、未完成の文章はすべてひとつの巨大なアウトラインに入れることにしたのです。やり方はとてもシンプルです。単純な二階層のアウトラインを作ります。第一階層がタイトル、第二階層以下が内容です。ここに内容も順番も関係なく、書きかけのものはすべて放り込みます。それぞれの完成度はまちまちです。完成に近いものもあれば、断片的なフレーズもあります。完成度を区別しないことがポイントなのです。アウトラインプロセッシング入門 Tak. (p.65). Kindle 版. 書きためておくことならテキストファイルでもできます。しかしテキストファイルやワープロのファイルに書き込まれたアイデアは、否応なしにファイルに縛られます。ファイルはいくらでも自由に作れますが、書かれた文章はそのファイルに従属してしまいます。そして開いてみないかぎり中身に触れることはできません。これはたとえばEvernoteのノートでも同じことです。ひとつのアウトラインに書き込まれた断片は、どこにも従属しません。それ故に圧倒的に自由です。独立した文章として扱うことも、文章の一要素として扱うこともできます。内容は項目をまたがって移動します。そこに壁はありません。アウトラインプロセッシング入門 Tak. (pp.68-69). Kindle 版. すべてがひとつアウトラインに入っていれば、思い付いたことは新しい項目を立ててただ書くだけです。新規ファイルを作る必要もなければ保存先を決める必要もありません。タイトルをつける必要も保存場所を気にする必要もありません。どこから書き始めるか迷うこともありません。ただ書いて、後から適切な場所に動かせばいいのです。全体を俯瞰して「適切な場所」を見つけ出して移動する。これこそアウトライナーが最も得意とする作業です。そのことから来る、書き手としての起動の速さです。アウトラインプロセッシング入門 Tak. (p.68). Kindle 版 「アウトラインは複数の文章の集合体である」という思想を極限まで推し進めたのがWorkFlowyです。WorkFlowyは「ひとつアカウントにはひとつのアウトラインしか作れない」仕様になっています。本当にファイルの概念を捨ててしまったわけです。当然WorkFlowyの中ではフォーカス機能(WorkFlowyでの名称は「Zoom(ズーム)」)が重要な役割を果たしています。アウトラインプロセッシング入門 Tak. (p.72). Kindle 版. 「ひとつのアウトライン」は未完成なものを扱うには最適ですが、完成品を保管しておくことには向いていません。完成した文章をアウトラインに入れたままにしておけば、再び断片の集合離反が始まります。「生きたアウトライン」は常に変わり続け、永久に完成しないという性質を持っているからです。一度アウトプットしたものが、原型をとどめなくなってしまうかもしれません。完成品を保管し活用するためにはファイル単位、あるいはEvernoteのような「ノート」単位の管理ができるものの方が都合がいいでしょう。アウトラインプロセッシング入門 Tak. (pp.72-73). Kindle 版. じゃあアウトライナーでなくてもいいじゃないかと言われるかもしれませんが、何かを考えるために新しくファイルやノートを作らなくてもいいという、アウトライナーの手軽さとスピード感は他では代え難いものです。何でも入れておける汎用のアウトラインをひとつ作っておいて、常に開いておきます。後はアウトライン上でリターンキーを叩けば新しい項目ができます。タイトルを考える必要も保存する必要もありません。本当に生活に密着した「考える」ことには、そのくらいの瞬発力とスピードが必要です。もちろんスピードだけではありません。考えようとしていることが意外に複雑だったりややこしかったりしたら、階層化・折りたたみ・入れ替えというアウトライナーならではの機能がいつでも助けてくれます。アウトラインプロセッシング入門 Tak. (pp.94-95). Kindle 版. さらに、タスクやプロジェクトを真剣に考えようとすると、それ以外のことを書くスペースが欲しくなってきます。これも既成のタスク管理ツール(デジタル、アナログ含め)に不満を感じる部分です。たとえば「ブログを書く」というタスクがあるなら、そこにそのまま下書きを書いてしまいたいのです。「A社と費用の交渉をする」というタスクがあるなら、どんなふうに交渉するのかまでその中で考えたいのです。タスクはタスクだけでは完結しません。頭の中では夢想から物思いから行動まですべてがつながっているのです。アウトラインプロセッシング入門 Tak. (p.98). Kindle 版. 文章を書く作業にアウトライナーが有効な理由のひとつは、最初からフローの形で発想をキャッチできることです。逆にいえば、文章を書くツールとしてアウトライナーを機能させるコツは、アウトラインをキーワードの羅列にしないということです。つまりアウトライン項目は文章、または少なくともその断片にするということです。アウトラインプロセッシング入門 Tak. (p.128). Kindle 版.