ひとつのアウトラインですべてを管理する
簡単にいうと、ブログでもやりかけの翻訳でも、未完成の文章はすべてひとつの巨大なアウトラインに入れることにしたのです。やり方はとてもシンプルです。単純な二階層のアウトラインを作ります。第一階層がタイトル、第二階層以下が内容です。ここに内容も順番も関係なく、書きかけのものはすべて放り込みます。それぞれの完成度はまちまちです。完成に近いものもあれば、断片的なフレーズもあります。完成度を区別しないことがポイントなのです。アウトラインプロセッシング入門 Tak. (p.65). Kindle 版. 書きためておくことならテキストファイルでもできます。しかしテキストファイルやワープロのファイルに書き込まれたアイデアは、否応なしにファイルに縛られます。ファイルはいくらでも自由に作れますが、書かれた文章はそのファイルに従属してしまいます。そして開いてみないかぎり中身に触れることはできません。これはたとえばEvernoteのノートでも同じことです。ひとつのアウトラインに書き込まれた断片は、どこにも従属しません。それ故に圧倒的に自由です。独立した文章として扱うことも、文章の一要素として扱うこともできます。内容は項目をまたがって移動します。そこに壁はありません。アウトラインプロセッシング入門 Tak. (pp.68-69). Kindle 版. すべてがひとつアウトラインに入っていれば、思い付いたことは新しい項目を立ててただ書くだけです。新規ファイルを作る必要もなければ保存先を決める必要もありません。タイトルをつける必要も保存場所を気にする必要もありません。どこから書き始めるか迷うこともありません。ただ書いて、後から適切な場所に動かせばいいのです。全体を俯瞰して「適切な場所」を見つけ出して移動する。これこそアウトライナーが最も得意とする作業です。そのことから来る、書き手としての起動の速さです。アウトラインプロセッシング入門 Tak. (p.68). Kindle 版 「アウトラインは複数の文章の集合体である」という思想を極限まで推し進めたのがWorkFlowyです。WorkFlowyは「ひとつアカウントにはひとつのアウトラインしか作れない」仕様になっています。本当にファイルの概念を捨ててしまったわけです。当然WorkFlowyの中ではフォーカス機能(WorkFlowyでの名称は「Zoom(ズーム)」)が重要な役割を果たしています。アウトラインプロセッシング入門 Tak. (p.72). Kindle 版. 「ひとつのアウトライン」は未完成なものを扱うには最適ですが、完成品を保管しておくことには向いていません。完成した文章をアウトラインに入れたままにしておけば、再び断片の集合離反が始まります。「生きたアウトライン」は常に変わり続け、永久に完成しないという性質を持っているからです。一度アウトプットしたものが、原型をとどめなくなってしまうかもしれません。完成品を保管し活用するためにはファイル単位、あるいはEvernoteのような「ノート」単位の管理ができるものの方が都合がいいでしょう。アウトラインプロセッシング入門 Tak. (pp.72-73). Kindle 版. じゃあアウトライナーでなくてもいいじゃないかと言われるかもしれませんが、何かを考えるために新しくファイルやノートを作らなくてもいいという、アウトライナーの手軽さとスピード感は他では代え難いものです。何でも入れておける汎用のアウトラインをひとつ作っておいて、常に開いておきます。後はアウトライン上でリターンキーを叩けば新しい項目ができます。タイトルを考える必要も保存する必要もありません。本当に生活に密着した「考える」ことには、そのくらいの瞬発力とスピードが必要です。もちろんスピードだけではありません。考えようとしていることが意外に複雑だったりややこしかったりしたら、階層化・折りたたみ・入れ替えというアウトライナーならではの機能がいつでも助けてくれます。アウトラインプロセッシング入門 Tak. (pp.94-95). Kindle 版.