なぜリベラルは敗け続けるのか
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「リベラル」については、既に書いた本で説明していますが、(「そもそもリベラルがわからない」『静かに「政治」の話を続けよう』、亜紀書房、二〇一一年)、それは「国家よりも個人を、伝統よりも新しい価値観をやや優先して、そして経済を市場だけに委ねないやり方で社会を守る」くらいの立ち位置を意味するだけです。私がもし「リベラル派」だとするなら、それは鋼鉄のようなイデオロギーがあるからではないです。私の考えをもう少しだけ丁寧に言うとこういうことです。なぜリベラルは敗け続けるのか岡田憲治 p.18 野党陣営は、一体なぜこのような「ボロ負け」状態になったのでしょうか?それはひとえに野党側が、小さな違いを懐に収めながら、大同団結するという判断をせず、非常に狭い範囲でここに戦いをしてきたからです。やり方を考えれば勝てたのに、守るべきものを間違えて、いくつもの勝機を逃していたからに他なりません。なぜリベラルは敗け続けるのか岡田憲治p.24 たとえば、二〇一七年秋の選挙において投票に行った人の数は比例代表の得票総数で五五七五万人ですが、この中で自民党と公明党の得票数は、全体の四五%に過ぎません。得票比率で考えれば、自公連立政権は、過半数すら取れない勢力なのです。逆に野党は、もし統一候補者名簿を作成し、選挙の現場での共闘に成功していれば(維新を除く)、全体の約四七%を獲得して、自公勢力を凌駕していることになるのです。さらに、投票に行かなかった有権者を含めた全体で見れば「自公政権に投票しなかった人たち」は、全体の七四%(比例代表投票ベース)になります。要するに、積極的に自公政権を支持している人たちは、全有権者の四人に一人しかいません。この数字を見れば、身の回りに「自公政権を断然支持する」「安倍首相は正しい!」という人が、それほどいないという理由も納得できるでしょう。なぜリベラルは敗け続けるのか岡田憲治 (pp.40-41). Kindle 版. これは、いったいどういうことなのでしょうか?はっきりと言いましょう。それは我々が負けることにあまりにも慣れすぎて、負けることにカタルシスさえ覚えるような「心のこじらせ方」をしてしまっているからです。なぜリベラルは敗け続けるのか岡田憲治p.42 これは、要するに「負け戦覚悟の少数の仲間を励ます」という、まったくもって狭い「政治」です。社会の少数派として正しさを貫くということ以外に、人々の力を引き出す働きとなっていません。こんな発想に留まっている間は、我々はつねに負けます。この発想を見てお分かりのように、要するに、こんな風なことを言って開き直って、そして負けるのは、我々が「子ども」だからです。なぜリベラルは敗け続けるのか岡田憲治p.43 自分が長い間、本当には「政治をして」こなかったと反省的に振り返りつつある今日、私は「しょせん政治ですから」というドライな認識をあえて堅持し、友人がどのような政治的信条を持っているかによって、区別しないように心がけています。もちろん、あからさまな民族差別やヘイトスピーチをして平気な人間とは生涯、友人にはなることはないでしょうし、人間の様々ある属性のうちの一つや二つをとって、それでその人を単一のカテゴリーに押し込めることを常とするような人間への物言いは当然厳しくなります。アホな友人は愛おしいですが、あるレベルを超えて愚劣な者とは付き合えません。しかしそれを前提として、政治的なスタンスや価値観が異なっているからと言って親密な関係を作れないとはまったく思いません。なぜならば、私は政治的価値観を、どだい人間の持っている価値観の表層部分に過ぎないと考えているからです。ええ、しょせん政治なんですから。なぜリベラルは敗け続けるのか岡田憲治 (pp.164-165). Kindle 版. これを政治学の言葉で表現するのはひじょうにむずかしいのですが、およそ人間の心根、あるいは心の「水脈」というものは、政治的言語「だけ」では理解できないものです。政治においてはつねに何かを決断し、限られた選択肢の中から何かを選ばなければいけないわけですから、その選択が自分と違うからといって、その人と自分との間に大きな違いがあるとは限りません。言ってみれば、政治的価値観、政治的選択というのは、心という大きな氷山の一角に過ぎないと思うのです。なぜリベラルは敗け続けるのか岡田憲治 (p.165). Kindle 版. なぜリベラルは敗け続けるのか岡田憲治 (p.165). Kindle 版. これは他の野党にも言いたいことではあるのですが、ことに日本共産党の人たちに言いたいのは、もし独善の果ての孤高なる全敗と消滅を良しとしないならば、一〇〇年近く続く輝く栄光の理想と、必死に鍛えてきた綱領はきちんと維持したまま、いわば天敵であるような反共主義者すら翻意させることができるほどの「具体的かつ実現可能性のある四年間の工程表」を示さねばならないということです。なぜリベラルは敗け続けるのか岡田憲治 (p.175). Kindle 版.