心雑音
1.心雑音の原理(平島修先生)
➀血流の増大:血管の中を血液が通って乱流ができる。体の中でも最も血流が増大する瞬間が聞こえる。心臓が拍出した瞬間=大動脈から心基部に向かって通った時。
②局所の狭窄:ASなど。
③急速な径の増大
④ ②+③
※影響する因子
圧較差(≒狭窄の強さ):強くなると高調な雑音を生じる(=blowing murmur)シュー
流量:強くなると低周波~中周波の雑音が生じる(=rumbling murmur)
粘稠度:強いほど大きい
2.収縮期流出性雑音 Systolic flow murmur
<原因>
1) 薄い胸壁・小児
2) 1回拍出量の増加=血流の増大(➀)
➀シャント ex. ASD 左房から右房に流れた血液が右室に行って、肺動脈に行くときに雑音がする
②心室容量の増加 ex. AR、PR、Pregnant
③hyperdynamic ex. 甲状腺機能亢進症、高度貧血(5以下)、運動
4)大動脈の硬化「50/50 murmur」
弁輪の硬化。狭窄なし(上行大動脈、弁、弁輪が硬化)
上行大動脈のアテローム斑
50歳以上の50%以上
5)拡張した動脈
大動脈瘤
高度肺高血圧症(拡張してくる)
https://scrapbox.io/files/68197621fbd7df7327b1e422.jpg
汎収縮期雑音:心室中隔欠損、房室弁逆流
収縮期駆出性雑音:動脈狭窄、血流増加による相対的動脈弁狭窄(心房中隔欠損)
拡張期雑音:動脈弁閉鎖不全症、房室弁狭窄(血流増加による相対的狭窄もあり,心房中隔欠損の相対的三尖弁狭窄や,心室中隔欠損の相対的僧帽弁狭窄が有名)
連続性雑音:動脈管開存、動静脈瘻、シャント
<収縮期流出性雑音 systolic flow murmur>平島修先生
・収縮早期にピーク
・2RSB~3LSBに限局
・短く、弱い
・valsalva、hand gripで消失
〔心雑音が異常であるサイン〕
悪い仲間がいる バイタル、JVP↑、Ⅲ音、心電図、Xp
Ⅱ音の減弱、消失
全ての汎収縮期拡張期連続性雑音
a
収縮期駆出性雑音(機能性雑音):ピークが収縮期前半にあり,漸増・漸減型である.大動脈弁狭窄症 ASの駆出性雑音に似ているが持続時間が短いのが特徴である.小児期や若年男性では健常者でもみられる.C15循53 肺動脈狭窄症 収縮早期の雑音は機能性雑音に特徴的であり,心拍出量の増加による相対的な弁狭窄で聴取される.心拍出量が増加する機序は一回拍出量や心拍数の増加であり,特に一回拍出量の増加が相対的弁狭窄の原因となる.一回拍出量は循環血漿量,心収縮力に正の相関を示す
b
第3肋間胸骨左縁を最強点とする収縮期駆出性雑音(→大動脈弁あるいは左室流出路由来の心雑音の可能性がある)
第2肋間胸骨右縁を最強点とする収縮期駆出性雑音(→AS Valsalva法で減弱 第4肋間胸骨左縁~心尖部を最強点とする収縮期駆出性雑音(→閉塞性肥大型心筋症 HOCM Valsalva法で増強。流出路狭窄の増悪・寛解は左室容積と心収縮力によってきまる。しゃがみ込み(蹲踞)では静脈還流量増加と、後負荷および末梢血管抵抗の増大が起こり、左室容積が増えて雑音が減弱する。 c
収縮後期逆流性雑音:僧帽弁逸脱症 MVPが想起されるが,MVPは典型的には収縮中期クリック音に続いて連続性の雑音を聴取する.C107 d
収縮期逆流性雑音(全収縮期雑音):比較的一定の大きさで全収縮期に及ぶ逆流性雑音である.MRや心室中隔欠損症 VSD(血液流入時に心雑音が発生)に特徴的である.重症のMRでは漸増漸減型になることもある.C15循52 吸気で増強する収縮期雑音:三尖弁閉鎖不全症におけるRivero-Carvallo徴候 e
早期逆流性雑音:漸増漸減型で拡張後期に消失している.肺動脈弁閉鎖不全症 PRや,ARでも拡張早期逆流性雑音を呈するが,一般的にはほぼ全拡張期にわたる漸減性雑音となる.さらにARでは相対的大動脈弁狭窄音を伴いto and fro murmur(往復雑音またはブランコ様雑音)となるのが典型的である.また選択肢fと紛らわしいが,僧帽弁開放音(OS)がない点で異なる.C15循52 f
拡張中期雑音(拡張中期ランブル):Ⅱ音直後のOSと,OS後より始まる拡張中期雑音である.Ⅰ音の亢進も描かれており,いずれも僧帽弁狭窄症 MSに特徴的な聴診所見.MSでは前収縮期雑音も聴取されうるが,本症例では慢性心房細動を合併していると考えられるため図のように前収縮期雑音は聴取されない.C15循52 心尖部にLevine 3/6の拡張期雑音を聴取し,心雑音の強さは体位で変化(→左心房内腫瘍による僧帽弁狭窄症 MS様雑音
g
https://scrapbox.io/files/682c607ebfdb1bedb0885335.jpg
■生理学的負荷による心雑音の増強
座位前屈位:大動脈弁が胸壁に接近 大動脈弁雑音
左側臥位:心尖が胸壁に接近 僧帽弁雑音
肘膝位:心膜が胸壁に接近 心摩擦音
立位:静脈還流量↓⇒心肺血流量↓⇒左室内腔↓
吸気時:胸腔内圧↓⇒肺内血液貯留↑⇒右心系血流量↑、左心系への血液充満↓⇒左室内腔↓ 右心起源の雑音、HOCM、MVP
呼気時:胸腔内圧↑⇒肺内血液貯留↓⇒左心系への血液充満↑ 左心起源の雑音(HOCM、MVPを除く)
opening snap
肥厚・硬化した僧帽弁の開放時に生じる僧帽弁開放音をopening snap(OS)と呼ぶ.C102
収縮中期クリック
僧帽弁逸脱に特徴的な聴診所見である.C107
収縮期駆出性雑音
大動脈,肺動脈弁狭窄に特徴的な聴診所見である.C15
拡張早期高調性雑音
急性大動脈弁閉鎖不全では拡張早期のみの高調性の漸減性雑音を聴取しうる.C15
拡張中期低調性雑音
僧帽弁開放音に続いて,狭窄した僧帽弁を血流が通過する際に,低調な雑音(ランブル)を聴取する.
■僧帽弁狭窄症の聴診所見
●Ⅰ音の亢進
●opening snap(僧帽弁開放音)
●拡張期ランブル(左側臥位でよく聴こえる.)
●前収縮期雑音……AFが起こると消失する.洞調律のとき聴かれる.
●重症例で,Graham Steell雑音(=拡張期灌水様雑音(肺高血圧になった場合のPR雑音),胸骨左縁第2〜3肋間)