収縮性心膜炎
#循環器疾患 #右心不全
収縮性心膜炎の病像の本態は拡張不全(心膜が硬くなってしまう)であり,特に右心系の症状が強く出る.
心膜の炎症(陳旧性の結核感染やウイルス感染)により心膜が線維化・肥厚・石灰化などをきたして硬くなり,心臓の拡張が障害される
右室と左室の拡張末期圧が等しい.拡張早期に右室圧上昇が平衡に達して,拡張末期圧は両心室でほぼ等しくなる.吸気時には胸腔内圧低下による右房への静脈還流増大で,心膜肥厚による限られたスペース内で右室が拡大する結果,心室中隔を左室側へ偏位させ,しばしば奇異性運動を呈する.
●収縮性心膜炎では,4つの心腔(右房,左房,右室,左室)の拡張期圧がほぼ一致(差≦2mmHg)することが知られている(equilibrium of diastolic pressure)
【問診】
下腿浮腫(→右心不全徴候の一つ)
軽度の労作時呼吸困難感(→心拍出量の低下を示唆
【身体所見】
Kussmaul徴候(吸気時に頸静脈怒張が著明となる)(→右室の拡張障害を示し,収縮性心膜炎や右室梗塞
【検査】
拡張早期過剰心音を聴取(→いわゆる心膜ノック音を指し,収縮性心膜炎を示唆する所見の一つ)
右室と左室の圧を同時に計測し,さらにその呼吸性変動をみる
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A:心外膜の肥厚を認める(→)が,石灰化は明確ではない.
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右心カテーテル所見
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B:右房の平均圧は12mmHgと上昇している.y谷の急峻化がみられ,これは右房から右室への急激な血液の流入を示唆する.他にa波とv波の増高,x谷の下降も伴っており,全体的にM型もしくはW型といわれる形状を呈している.これらは収縮性心膜炎の特徴的な所見である.
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C:典型的なdip and plateauがみられ,これは右室拡張障害により拡張早期の右室への静脈還流が著しく阻害されていることを示す.(→収縮性心膜炎の他,右室梗塞,拘束型心筋症
【治療】
容量のコントロールのために利尿薬や強心剤を用いることはある
そこでコントロールがうまくいかないのならば心膜切除術の適応を考える必要がある.