AS
大動脈弁狭窄症
<20250527 三枝先生>
大動脈弁の肥厚、線維化、石灰化による開放制限
慢性的に左心室に圧負荷がかかるため、うっ血、低心拍出よる症状
【病因】
先天性<リウマチ性(A群β溶連菌感染)<加齢変性
先天性は二尖弁が最も多い
適切な抗菌薬治療によりリウマチ性はほとんど認めない
高齢社会により加齢変性が最も多い
動脈硬化との関連は少ない
【病態】
正常の大動脈弁口面積は3-5cm²前後
弁口面積が1.5cm²以下になると、収縮期に左室と大動脈の間に優位な圧較差が生じる
大動脈弁硬化→弁尖肥厚、線維化、石灰化による
慢性的な圧較差により左室肥大
→左室が広がりづらい(拡張障害)
→左室内腔が狭くなる
【症状】
SAD三徴[syncope, angina, dyspnea]
1.狭心痛:「絞めつけられる」「押されるように」圧負荷による左室肥大→心筋酸素消費量増大。冠動脈に狭窄はなくても狭心症の症状
3.心不全:「息が苦しい」左室拡張末期上昇→左房圧上昇→肺毛細血管圧上昇→肺うっ血(左心不全)
これらの症状が発現し、適切な治療を行わないと生命予後は不良
心不全が出現すると1.5~2年
失神症状が出現すると3年
狭心症状が出現すると5年
上記症状がなくても(無症候性)、重症ASの場合、予後が良好
突然死の可能性がある(1%/年)、人工弁治療しない場合、5年生存率93%
「症状がない」場合でも、無意識に活動制限した結果、無症状になっていることがあり、実際は有症状のことがある。丁寧な問診が必要
【身体所見】
遅脈、収縮期血圧低下、脈圧の減少
聴診所見★
収縮期駆出性雑音(第2肋間胸骨右縁で最強点):1漸増・漸減性ーダイアモンド型を示す、2頸部へ放散
重症化し、1回拍出量が低下すると収縮期雑音は小さくなる。心雑音の大きさとASの重症度は一致しない
Ⅱ音の奇異性分裂:ⅡA-ⅡP時間が短縮し始め、ⅡP-ⅡAの奇異性分裂(吸気時に分裂が目立たず、吸気時に分裂が聴取)がみられる。※Ⅱ音の生理的分裂は、吸気時に分裂が聴取され、呼気時に分裂が目立たなくなる
【検査】
胸部X線:心胸郭比は初期は増大しない(求心性肥大:内側に厚くなる)、上行大動脈の狭窄後拡張(post-stenotic dilatation)
心電図:左室に近いところで高電位、ST低下(:ストレインパターン)ST低下をみると虚血性心疾患を考えるけど。この組み合わせだとASを考える
心エコー★:狭窄の形態と成因の診断、収縮期圧較差と弁口面積の算出が可能。重症度を判断する。圧較差(mPG、流速から求める、基準が決まっている、左室圧と大動脈圧の差)、大動脈弁弁口面積(AVA)、大動脈弁最大血流速度(Vmax)
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※低流量低圧較差大動脈弁狭窄(low flow-low grandient AS)
左心駆出率が低下(EF<50%、Low EF)し心拍出量が低下(SVi(心拍出量係数)≦35ml/m²、low flow)している場合、圧較差が低値(low gradient)に測定され、本来の大動脈弁狭窄の重症度を表さないことがある。ドブタミン負荷心エコーで、心拍出量を増加させた状態の圧較差、弁口面積などの再評価が必要(ベルヌーイの式から)
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心臓カテーテル検査:カテーテルを左心室、大動脈に挿入。観血的圧測定を行う。左心室と大動脈の収縮期圧較差と弁口面積の算出、左室造影による左室容量と収縮能の算出などを行う。
心臓CT検査:心電図同期下で施行。石灰化が強いほど重症度が高い
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【治療】
1.薬物療法
心不全症状に対して、一般的な心不全治療薬(利尿薬、血管拡張薬、強心薬)を用いる。利尿薬、血管拡張薬の過度な投与は、左室前負荷不足を生じ、低心拍出症候群に至る場合があるので留意する。内科的治療では弁狭窄は改善せず、限界がある
2-1.開胸手術による外科的大動脈弁置換術(SAVR)
手術リスクが高くない有症候性重症AS、左室機能低下を伴う無症候性重症AS患者では第一選択。症状や予後改善が期待できる。
2-2.低侵襲心臓手術による外科的大動脈弁置換術(MICS-AVR)
小切開で行う外科的大動脈弁置換術。胸骨部分切開もしくは肋間小開胸で行い傷が目立ちにくい。視野が限られるため手術時間が長くなる傾向。
3.非開胸手術である経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)石灰化を利用して圧着
手術リスクが比較的高い方に対してカテーテル(管)を用いて人工弁を留置する方法。術直後から安静度拡大が可能で活動度低下を来しにくい。侵襲度は低く患者からのニーズは高いが、人工弁の耐久性(約10年)が問題点。
※治療方法の洗濯については、循環器内科、心臓血管外科を交えた心臓治療チーム(ハートチーム)での狭義が必要
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【予後】
不良
突然死の可能性あり