AR
大動脈弁閉鎖不全症
拡張期の大動脈弁の接合が不完全となり、拡張期に大動脈から左室への逆流が起こる。
【病因】
大動脈弁自体の器質的変化によるもの
先天性(二尖弁、一尖弁)、リウマチ性、感染性心内膜炎、加齢変性(最も多い)、外傷、薬剤性など
大動脈弁基部の拡張によるもの
【病態】
慢性ARの場合
持続的な左室への容量負荷が特徴
拡張期左室内容量増加→収縮期1回拍出量の増大→収縮期血圧の上昇 180mmHgとか!!!
拡張期の左室内への血流逆量→拡張期血圧の低下(脈圧の増大)30mmHgとか!!
(左室拡大)
EFが保持され心拍出量が保持されることが多く、無症候で持続することが多い(左室肥大など代償機転を取ることができる)
急性ARの場合:IE、大動脈解離、外傷など
急激な左室容量負荷→左室拡張末期圧上昇→急性肺水腫、低心拍出(ショック)
(代償できず急性の呼吸循環不全を生じる)
【症状】
1.心不全
労作性呼吸困難、起座呼吸(足からくる血液が少なくなる。前負荷が減る)、発作性呼吸困難などの左室不全
2.狭心症
大動脈拡張期圧の低下による冠動脈血流量の減少
【身体所見】
速脈、Musset徴候(頭部の動揺)、Quincke脈(爪床の毛細血管の拍動)
聴診 ※急性ARでは所見に乏しいこともある
漸減性拡張期雑音(逆流の音)
相対的駆出性収縮期雑音(相対的AS):弁がしっかり開放していても1回心拍出量が多くなるため
Austin Flint雑音(相対的MS):大動脈弁逆流が僧帽弁方向に流れる。心尖部領域
【検査】
胸部X線:左室拡大、上行大動脈の拡大
心電図:左心室側が高電位、T波陰転化
心エコー:
重症度評価:カラードプラ法で定量、定性評価
心臓カテーテル検査
上行大動脈造影による逆流の定性評価(Sellersの分類Ⅰ~Ⅳ度)。
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CT/MRI検査
心臓CT:弁尖、大動脈基部の詳細な形態評価、上行大動脈の石灰化の有無
心臓MRI:造影剤を用いずに左室径や駆出率、逆流の計測が可能
【治療】
1.薬物療法
心不全症状を伴う場合、一般的な心不全治療薬を用いる(血管拡張薬、利尿薬など)。
β 遮断薬は拡張期時間を延長させ、逆流量を増加させるため有益ではない可能性がある。
2-1.開胸手術(人工弁を入れる)
2-2.開胸手術による外科的大動脈弁形成術(自己弁を修復する)
※大動脈弁閉鎖不全症に対して、経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)は適応外。血管がつるつるだからね。