サルコイドーシス
(sarcoidosis)
#免疫アレルギー  #眼科 #呼吸器
<参考>20231107講義、国試、朝倉
【概念・疫学】
原因不明(アクネ菌)の非乾酪性の類上皮細胞肉芽腫病変形成を主徴とする全身性疾患(肺(縦隔、肺門リンパ節):95%以上、眼:30~40%、皮膚:5~10%)
肉芽腫:類上皮細胞や多核巨細胞、マクロファージなどからなる巣状慢性炎症病変
Ⅳ型アレルギー
遺伝的要因を背景とした未知の抗原に対する免疫反応と理解されている。
【だれ】
男女ともに20歳代
40歳代以降は女性症例が多い
※高齢発症増加傾向
【病態生理】
炎症反応は、マクロファージとCD4陽性Tリンパ球の活性化・増加に特徴づけられる
【症状】
• 無症状の健診発見例(BHL)が多い。
眼症状(両側性の霧視・飛蚊症→ぶどう膜炎、視力低下、硝子体混濁、羞明、充血):50%
虹彩炎,豚脂様角膜後面沈着物,虹彩結節,隅角結節,虹彩前癒着,脈絡膜結節,網膜血管周囲炎,網膜出血,視神経乳頭の発赤・腫脹,硝子体混濁(雪玉状) など
呼吸器症状(肺門部リンパ節腫脹):10~15%、
全身症状(発熱・倦怠感):10%、
皮膚症状(結節性紅斑):10%、
その他:
リンパ節腫脹
神経系(尿崩症、顔面神経麻痺)
心病変(伝導障害) #心サルコイドーシス
唾液腺病変の他,肝,骨,脾,上気道、消化管、乳房、生殖器
筋(肉芽腫による圧迫や疼痛)腫瘤型は自然消退、慢性ミオパチーや筋炎型は治療介入
腎病変(高Ca血症)など
発熱、倦怠感、疼痛など臓器非特異的症状を呈することも
【検査】
CXR:上肺野。粒状影、斑状影、網状影。石灰化を伴う。
胸部CT:
リンパ球性胞隔炎、肉芽腫病変としての微小粒状影・結節影 Galaxy sign
気管支血管周囲束の肥厚
線維化が進行すると網状影や牽引性気管支拡張
Ⅰ期;BHLのみ、Ⅱ期;BHL+肺野病変、Ⅲ期;肺野病変のみ、Ⅳ期:肺線維症期
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67Gaシンチ、F-FDG-PET:心病変に保険適用。活動性の指標。縦隔肺門リンパ節に連続した集積(λサイン)・左右対称に涙腺唾液腺への集積(パンダサイン)
MRI:脳で髄膜・脊髄病変の検出。心病変のGa造影遅延(心筋線維化の指標)
<生化学・免疫検査>
ツベルクリン反応陰性(細胞性免疫が抑制されているため)
γ-グロブリン増加(液性免疫があがる)
血清ACE高値,血清リゾチーム高値
可溶性IL-2受容体抗体(sIL-2R)高値
高Ca血症(40%)
KL-6
<呼吸機能検査>
線維化進行に伴い%VC、DLcoの減少(異常所見は少ない)
<気管支鏡検査所見>
粘膜下の網目状血管怒張(微小血管病変)、顆粒状・結節状の白色または黄色の隆起病変(肉芽腫病変)、気道閉塞所見(リンパ節腫脹などによる非特異的所見)
<病理組織学的所見(経気管支肺生検TBLBなど)>
非乾酪性類上皮細胞肉芽腫
リンパ球浸潤、ミクロアンギオパチー
肺における肉芽腫の分布はリンパ管周囲性で線維化病変へと進むことも。
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気管支肺胞洗浄液:➀総細胞数・②リンパ球の増加・③CD4/CD8比の上昇<過去問21>20231122
眼底所見→隅角検査
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【診断基準】
A. 【臨床症状】:呼吸器、眼、皮膚、心臓、神経を主とする全身のいずれかの臓器の臨床症状や所見、あるいは臓器非特異的全身症状
B. 【特徴的検査所見】:➀BHL、②血清ACE高値・血清リゾチーム値高値、③血清sIL-2R高値、④67Gaシンチ・18F-FDG/PETにおける著明な集積所見、⑤BAL液のリンパ球比率上昇・CD4/8比の上昇(3.5)
C. 【臓器別特異的臨床所見(臓器病変を強く示唆する臨床所見)】➀呼吸器病変(画像でBHLまたはリンパ路沿いの間質性陰影)、②眼病変、③心臓病変
D. 鑑別疾患
E. 組織所見
組織診断群:A~Cのいずれか1つ以上、D除外、E
臨床診断群:A1つ以上+Bの2/5+Cの呼吸器・眼・心臓の2/3、D除外、Eなし
【組織診断群】
全身のいずれかの臓器で乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫が陽性であり,かつ,既知の原因の肉芽腫および局所サルコイド反応を除外できているもの. 特徴的検査所見および全身の臓器病変を十分検討することが必要である.
【臨床診断群】
類上皮細胞肉芽腫病変は証明されていないが, 呼吸器,眼,心臓の3臓器中のうち2臓器以上において本症を強く示唆する臨床所見を認め,かつ,特徴的検査所見(表1)の5項目中2項目以上が陽性のもの
【鑑別診断】
同じ肉芽腫性病変;過敏性肺炎 HP、非結核性抗酸菌症 NTM
リンパ増殖性疾患;悪性リンパ腫、IgG4関連疾患、その他癌性リンパ管症
肺線維症
【経過・予後】
• 肺サルコイドーシスの多くは予後良好(1年目;50~60%、3年目;80%前後に自然消退)
重症例の治療はステロイド→MTX(保険適用なし)
• 一部の症例では線維化の進行から予後不良の経過を辿る。心病変で死亡する症例もある。
• 眼病変に対してはステロイドの点眼。心病変を有する場合、進行性の肺病変にて肺線維症を来たす場合、難治性の皮膚病変、骨病変、神経病変、高Ca血症を示す難治症例では全身性のステロイド投与がおこなわれる。
・BHLのみの場合は、ステロイド治療の必要がない