文章理解のためのQNKSから導入(4月〜通年)
QNKS読むから実践した。
読む過程と書く過程が類似しており、読む過程で本文要約を行うことがそのまま書くプロセスを形式的になぞっていることになっていた。導入の流れは2018年の実践のときと同じように社会→国語と展開していった。この流れを文章産出的な視点でみると社会ではQは存在せず、Nで教科書の太字を抜き出し、Kで論理展開を明らかにし、Sでその流れをただ淡々と文章化するという流れになっている。文章を書く際にもっとも難しい「問題設定」や問いの洗練という過程は存在せず、その次に難しい「相手意識」もしなくていい。それだけでなく、自身のアイディアを出す必要もなく、ただ目の前に羅列されている文章からキーワードを抜き出し、再構築すればいいだけである点から、この社会の教科書の自力読解のために行われる要約活動は最も初歩的な文章産出過程の体験となっているといえる。
国語科での要約活動では社会科と同じようにQを自分で設定する必要はないが、Nでは社会科のように重要なキーワードが太字になっているわけではないし、物語文の読解においては様々な表現技法が用いられるため、N(情報の抜き出し)の難易度は上がる。さらに次のKの段階では社会科とは大きく異なる性質が現れる。それは国語科では段落構造において社会科よりも一層読者を意識した工夫がされているという点である。児童は集めた情報を組み立てる中で、そのような筆者の表現の工夫に気づかせ、段落構造の美しさに気づくよう指導しながら情報の組み立てを行う。この活動を文章産出的な視点からみると、児童は文章理解のために本文の論理構造を読み取っているのだが、そこで読み取った論理構造の工夫はそのまま文章産出の際に使える知識となる。このように文章理解のためのQNKSを社会から国語へと展開していく流れは、文章産出のためのQNKS的な視点から見ても、段階的な足場掛けを行いながら徐々に、文章産出活動に慣れていくデザインとしても解釈できてしまうのである。これが #文章理解モデルとしてのQNKS実践 の「文章理解のためのQNKSについてのアンケート」で文章産出における良さに対する指摘もあったということの理由であると考えられる。 よって本稿で紹介する「文章産出のためのQNKS」という実践でも、初めは2018年の実践と同じように「文章理解のためのQNKS」から導入していった。その流れは #文章理解モデルとしてのQNKS実践 で述べた内容と変わらないので本稿では省略し、その取組の延長として行った「文章産出のためのQNKS」の実践の概要について述べる。