雑に読む八代集
八代集を雑に読むcFQ2f7LRuLYP.icon
ピンときた歌を雑に書いてく
なんでピンと来たのか書く時もあるし書かないときもある
作者を調べたら別ページに作る
最新更新分を上に持ってくる
8. 新古今和歌集
いぜんしっかり雑に読んでいたのでピンときた歌が多い
巻第一・春歌上
1 み吉野は山も霞みて白雪のふりにし里に春は来にけり (藤原良経)
3 山深み春とも知らぬ松の戸にたえだえかかる雪の玉水 (式子内親王)
代表歌
6 春といへば霞みにけりな昨日まで波間に見えし淡路島山 (俊恵法師)
11 あすからは若菜摘まむとしめし野にきのふもけふも雪は降りつつ (山部赤人)
30 梅が枝に鳴てうつろふうぐひすの羽根白妙にあは雪ぞ降る (よみ人しらず)
32 岩そそく垂水の上のさわらびの萌え出づる春になりにけるかな(志貴皇子)
36 見わたせば山本霞む水無瀬川ゆふべは秋と何思ひけむ (後鳥羽院)
後に水無瀬百韻の巻頭歌題材に
38 春の夜の夢の浮橋とだえして峰に別るる横雲の空 (藤原定家)
源氏物語由来
39 折られけりくれなゐにほふ梅の花けさ白たへに雪は降れれど
紅梅と白雪のコントラスト
実景じゃないかも
62 帰る雁今はの心有明に月と花との名こそ惜しけれ(藤原良経)
巻第二・春歌下
101 はかなくて過ぎにしかたを数ふれば花にもの思ふ春ぞ経にける(式子内親王)
104 ももしきの大宮人はいとまあれや桜かざして今日も暮らしつ(山部赤人)
たのしそう
110 春雨はいたくな降りそ桜花まだ見ぬ人に散らまくも惜し(山部赤人)
112 風かよふ寝覚の袖の花の香にかをる枕の春の夜の夢(俊成卿女)
114 またや見む交野のみ野の桜狩花の雪散る春のあけぼの(藤原俊成)
伊勢物語の交野の桜狩を踏まえていそう
5. 金葉和歌集
巻第二・夏
95 夏山の青葉まじりの遅桜はつはなよりもめづらしきかな(藤原盛房)
余花題
夏に咲き残った春の花
97 たまがしはにはも葉広になりにけりこや木綿四手て神まつるころ(源経信)
113 聞くたびにめづらしければ時鳥いつも初音の心地こそすれ(永縁)
この歌が由来で初音の僧正と呼ばれたらしい
128 よろづ代にかはらぬものは五月雨のしづくにかほる菖蒲なりけり(源経信)
129 菖蒲草ひく手もたゆくながき根のいかで安積の沼におひけん(藤原孝善)
145 風ふけば蓮のうき葉に玉こえてすずしくなりぬ蜩の声(源俊頼)
これ好きcFQ2f7LRuLYP.icon
巻第七・恋上
354 逢ふと見て現のかひはなけれどもはかなき夢ぞ命なりける(藤原顕輔)
368 谷川のうへは木の葉にうづもれて下にながると人しるらめや(藤原実行)
387 よとともに玉散る床のすが枕見せばや人に夜はのけしきを(源俊頼)
4. 『後拾遺和歌集』
巻一・春上
4 春の来る道のしるべはみ吉野の山にたなびく霞なりけり(大中臣能宣)
9 たづのすむ沢べの蘆の下根とけ汀萌えいづる春は来にけり(大中臣能宣)
この辺から大中臣能宣が好きになれそうな予感がしてくる
35 春日野は雪のみつむと見しかども生いづるものは若菜なりけり(和泉式部)
43 心あらむ人に見せばや津の国の難波わたりの春のけしきを(能因法師)
有名歌
44 難波潟浦吹く風に波たてばつのぐむ蘆の見えみ見えずみ(よみ人しらず)
「つのぐむ」がよくわかんない
みえずみえずみの音好き
春の駒の題が出てくるのこれ以前では見たことがなかった
47 狩に来ばゆきてもみまし片岡の朝の原にきゞす鳴くなり(藤原長能)
詞書に屏風歌との記載
53 梅が香をよはの嵐の吹きためて真木の板戸のあくる待ちける(大江嘉言)
板戸を開いた瞬間にぶわっと梅の香が香ってきそう。好きcFQ2f7LRuLYP.icon
68 帰る雁雲居はるかになりぬなりまた来ん秋も遠しと思ふに(赤染衛門)
76 あさみどり乱れてなびく青柳の色にぞ春の風も見えける(藤原元真)
80 小萩咲く秋まであらば思ひ出でむ嵯峨野を焼きし春はその日と(賀茂成助)
こういう歌好き
春にありながら別の季節にも思いを馳せている
緑なるひとつ草とぞ春は見し秋はいろいろの花にぞありける(古今・秋上・245)
春上はあと40首だけど雑に読むので一気に別の場所に飛ぶ
恋三を開いたので恋三から読むか
恋の歌まるでピンとこない
ピンと来た理由をすらすらっと言葉にできる歌よりも、できない歌の方がかえって思い入れが深い、なんてことがよくある
今初読のときに目に留まらない歌が後から好きになったりすることもよくある
巻十三・恋三
732 心をば生田の杜にかくれども恋しきにこそ死ぬべかりけれ(よみ人しらず)
生田に隠れた生く、それと死ぬ
736 いかばかりうれしからまし面影に見ゆるばかりの逢ふ夜なりせば(藤原忠家)
面影ばかりのあの人に会いたいよね
普段会ってばかりいるとその頃のことは忘れてしまう
744 つらしとも思ひしらでぞやみなましわれもはてなき心なりせば(大中臣輔弘)
755 黒髪のみだれも知らずうちふせばまづかきやりし人ぞこひしき(和泉式部)
過去の具体的記憶にどきりとする
759 忘れなんと思ふさへこそ思ふことかなはぬ身にはかなはざりけれ(大弐良基)
こういう同じ語句を繰り返す歌が好きな傾向がある
思ふさへ/思ふこと、かなはぬ身/かなはざりけれ
そういう文体を採用しがち
762 あふことのたゞひたぶるの夢ならばおなじ枕にまたも寝なまし(権僧正静円)
769 くもでさへかき絶えにけるさゝがにのいのちをいまは何にかけまし(馬尚侍)
巻軸歌。さすがの風格が有る
くもで=蜘蛛、蜘蛛の巣。ささがにの=蜘蛛、命の枕詞、かはるひ.icon
命と「絶え」が関連してるのもいいcFQ2f7LRuLYP.icon
式子内親王の百人一首歌を軽く思い出す
玉の緒よ絶えなば絶えね ながらへば忍ぶることの弱りもぞする
巻十六・雑二
970 風吹ばなびく浅茅はわれなれや人の心の秋を知らする(斎宮女御)
巻十七・雑三
988 破れ舟の沈みぬる身のかなしきはなぎさに寄する波さへぞなき(藤原基長)
1015 恋しくは夢にも人を見るべきを窓うつ雨に目をさましつゝ(大弐高遠)
歌集ごとの歌風というのは何度も読まないとぜーんぜんわかんない
雑に読むので今度は別の歌集に行ってみよう
六番目の勅撰和歌集である詞花和歌集にしよう。読んだことないし
6. 詞花和歌集
詞花和歌集は10巻だし収録歌数も400首あまりなのですぐに読み終わってしまう
巻第四・冬
140 なにごともゆきて祈らむと思ひしに神無月にもなりにけるかな(曾禰好忠)
やろうと思っててうっかり期日が来ることよくありますよね
巻頭歌
141 ひさぎおふる沢辺の茅原冬くればひばりの床ぞあらはれにける(同上)
143 いろいろにそむる時雨にもみぢ葉はあらそひかねて散りはてにけり(藤原家成)
落葉の題は冬なんだなあ
156 奥山の岩垣もみぢ散りはてて朽葉がうへに雪ぞつもれる(大江匡房)
大江匡房の歌を好む傾向があるcFQ2f7LRuLYP.icon
巻第六・別
175 とまりゐて待つべき身こそ老にけれあはれ別は人のためかは(藤原輔尹)
別れの餞宴は人のためでなくて自身のためのものであった
巻第九・雑上
276 木のもとをすみかとすればをのづから花みる人となりぬべきかな(花山院)
「花山」の追号とよく合う歌である
途中名所づくしめいた歌群がある
春日山、美作、和歌の浦、布引の滝、難波江、姥捨山
289 月はいり人はいでなばとまりゐてひとりや我が空をながめむ(大中臣能宣)
この人の歌好きだな……cFQ2f7LRuLYP.icon
290 池水にやどれる月はそれながらながむる人のかげぞ変れる(敦明親王)
303 よもすがら富士の高嶺に雲きえて清見が関にすめる月かな(藤原顕輔)
312 人しれずもの思ふことはならひにき花にわかれぬ春しなければ(和泉式部)
人知れずに物思いするのに慣れてしまっているのは、花と別れないですむ春がなかったから
いいなこれ
318 深くしもたのまざるらむ君ゆへに雪ふみわけて夜な夜なぞゆく(曾禰好忠)
337 おもひかね別れし野辺をきてみれば浅茅が原に秋風ぞふく(源道済)
「長恨歌のこころをよめる」とのこと
347 難波江の蘆間にやどる月みればわが身ひとつはしづまざりけり(藤原顕輔)
難波江の蘆の間の月をみると自分だけが沈んでるわけじゃなかったと気づいたのであった
ちょっとおかしみがある