結晶世界
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J・G・バラード作/中村保男訳
創元SF文庫・長篇
http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488629021
概要
ニューウェーヴの代表作のひとつにして、入門作。
すべてのものが結晶化し、美しく滅びゆく世界を描いた作品。
SFマガジン700号記念人気投票にて海外長篇部門第42位を獲得。星雲賞受賞。
おすすめポイント
滅びゆく外宇宙、満たされゆく内宇宙。
生き物も大地も水も、すべてのものが美しい結晶になる現象が広がり、その現象が緩やかに広がり滅びつつある世界が舞台の作品です。普通の作家だったなら、同じ世界を舞台としていても、この滅びゆく世界やパニックに陥る人々、崩壊する文明社会に焦点をあてた作品を書いていたことでしょう。しかしながら、バラードは滅びゆく世界そのものや、その科学的な原理に興味はないのです。あくまで滅びゆく世界というものは装置に過ぎず、バラードが本当に描きたかったものは、美しい結晶の世界、死の世界に魅せられた人物たちの内面の物語だったのです。
「外宇宙《アウタースペース》から内宇宙《インナースペース》へ」という言葉の通り、自分の内面と外世界とが緩やかに繋がりをもつよう、結晶化しつつある世界に人物の内面を投影することによって、バラードはまったく新しい物語を描き出しました。
残念ながら翻訳の耐用年数を過ぎて読みづらさは否めないのですが、それでも物語自体の輝きは失われていません。新訳版さえ出てくれれば、非の打ちどころのない作品です。
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