氷
https://gyazo.com/78c97b96997064f00cdc8d162a3a1f07
アンナ・カヴァン作/山田和子訳
ちくま文庫・長篇
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480432506/
概要
氷に浸食され滅びゆく世界の中で、あるひとりの少女を追い求める「私」と、その少女を支配する専制的な「長官」との、一種の競争を物語の中心に据えた作品。
ヘロイン中毒の作家カヴァンが抱えていた”世界への不安”を体現したカヴァンの代表作。
おすすめポイント
不安と滅びで形づくられた世界を楽しむ。
「氷」は筋書きを楽しむ小説ではありません。作品冒頭部からも分かるように、作中では語り手である「私」の視点は現実から妄想へ、また妄想から現実へとシームレスに移行し、面食らう箇所も多いかと思います。しかしながら、その妄想と現実が入り混じった世界は壊れゆく美しさをたたえ、氷に浸食される世界はその冷たさと不安感の象徴でもあります。「私」や「長官」、そして「少女」には時折不可解な言動がありますが、それらもカヴァンの描く世界への不安感の表れなのです。
美しくも滅びゆく、不安な世界を楽しんでみませんか。
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