パヴァーヌ
https://gyazo.com/df631dde66145ad6323f8d2fbafe78f2
キース・ロバーツ作/越智道雄訳
ちくま文庫・長篇
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480429964/
概要
物語の舞台は20世紀のイギリス。エリザベス1世の暗殺によりアルマダの海戦でスペインが勝利し、イギリスはスペインに支配されていた。またイギリスにおける教会の改革に失敗したためカトリック教会が強大な権力をふるい、科学技術を弾圧したことで20世紀になってもヴィクトリア朝程度の科学技術しか存在せず、産業革命も未だ起こっていなかった。蒸気と石炭のネオ・ヴィクトリアンな世界を描く歴史改変SFの名作。
おすすめポイント
歴史改変SFの世界を、庶民の目線から描き上げる。
歴史改変SFでは、その改変された世界を描くために、その世界の中枢を担う人物の視点を交えて、大局的に世界を描き上げていくという手法がよく採用されます(例えば『ディファレンス・エンジン』)。しかし、この「パヴァーヌ」では、徹底的にこの世界の一般市民たちの目線から社会を描くことで、読者自身がその世界にいるかのような臨場感を楽しめるような作りになっています。
そして物語の様々なところで現れる社会のひずみ、そしてこの世界自体の不思議さ......。中世程度の技術に留まるイギリスの、悪臭漂う陰湿な世界が目の前に立ち現れる、そんな作品です。
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