3.2 C. Alexander の思索の軌跡
※要約
Alexanderの実績は、「ノート」に代表される数学的フォーム探求から始まり、その後PLおよび幾何学的秩序の研究へと、同一の関心の下で研究主題が変化し続けた。しかしながら、これらの研究が連続的であったため、一般的にPL理論の時代ごとの特徴や違いが十分認識されてこなかった。そこで本研究では、Alexanderおよびその理論を批判的に継承するために、PL理論の構成要素を時系列で整理し、各時代の特徴と課題を把握することとした。目的は年代の厳密な整理ではなく、PL理論の発展過程を理解し、継承可能な部分を明らかにすることにある。
3.2.1 形の合成に関する研究
Alexanderの1964年の著書「ノート」では、デザインの目的を「コンテクスト」と「フォーム」の適合であると定義し、集合論とダイヤグラムを用いた科学的手法を提案した。良い適合とは調和のとれた全体のことであり、複雑な課題には客観的な方法論が必要とされた。「ノート」ではフォームとコンテクストの関係を構造的に可視化する手法が示されている。
3.2.2 セットという概念
1965年の論文で、都市をツリー構造とセミラチス構造に分類し、近代都市の問題点を指摘した。セットとは関係するエレメントの集まりであり、相互作用するときシステムと定義される。「ノート」の手法はツリー状になる欠点があった。 3.2.3 パタンという着想
BARTプロジェクトで要求条件の多さから、それらをパタンとしてアーカイブする発想に至った。
3.2.4 関係のデザイン: Tendency, Form, Context
環境の最小単位は関係であり、フォースがフォームを生み出すとされた。パタンはフォースのセットと、それらの関係を調停するフォームが組み合わさったものである。 3.2.5 二つのパタン・ランゲージ
マルチサービスセンターやソーシャルハウジングのプロジェクトで、それぞれの対象に合わせた独自のPLが制作された。パタンの有効性は実際の利用で検証・更新されることが期待された。
3.2.6 システムデザイナーとしての建築家
建築家はオブジェクトそのものではなく、generating systemをデザインするべきであると主張された。
良い空間は主観的ではなく客観的に捉えられ、その中心は名付けられない「無名の質」にあるとされた。
3.2.8 パタン・ランゲージ理論の完成
1977年の「A Pattern Language」と1979年の「The Timeless Way of Building」により、PLはツールと理論のセットとして完成した。その間、資金調達や生産体制までを含む社会システムの提案が行われた。
3.2.9 「生きた構造」の探求
実現した建物に深遠な質が備わっていないとの問題意識から、より包括的な概念が提示された。
3.2.10 既存の社会システムとの闘い
入間市の東野高校プロジェクトでは、Alexanderの手法が既存の社会システムと不適合になり、批判を受けた。