代替政策案
不正対策(ペーパーカンパニー排除)という政策目的を維持しつつ、過剰な参入障壁を調整する代替案の一覧。
基本方針
単純な「撤回」要求は「不正対策に反対」と誤読されやすい。「不正対策は維持しつつ、過剰な参入障壁を調整する」方向の提案が、行政・政治の双方で通りやすい。
代替案一覧
1. 段階的導入
資本金等の要件を一気に6倍にするのではなく、複数段階で引き上げる(例:一定期間は中間額を設定)
実現方法:省令再改正+経過措置の再設計
期待効果:新規起業の急減を緩和
留意点:段階を利用した"抜け道"をどう塞ぐかの設計が必要
2. 猶予期間の延長
既存在留者の3年猶予(2028年10月16日まで)を延長する
実現方法:Q&A・ガイドラインの改訂+必要に応じて省令附則の修正
期待効果:既存事業者の混乱を抑制し、準備期間を確保
留意点:既存者優遇の合理的根拠の説明が必要
署名キャンペーンの「あわせて求めること」にも含まれる要求
3. スタートアップ例外の拡張
現行制度では、特定活動(スタートアップビザ)からの移行について限定的な例外がある(告示改正施行日前に確認証明書が交付されている場合のみ改正前基準を適用)
この例外の対象範囲を拡大する
実現方法:告示・ガイドライン・省令の整合調整
期待効果:「スタートアップ推進」政策との整合性を回復
留意点:例外条件の客観的な基準設計が必要
4. 地域別緩和
地方創生枠として、過疎地域等で基準を緩和する
実現方法:例外規定の新設+自治体による確認制度
期待効果:地域経済への波及効果を維持
留意点:憲法上の平等原則との整合性(合理的区別の説明)が求められる
5. 実体要件による代替(事業実態に基づく審査)
資本金の額ではなく、売上実績・雇用実績・納税実績・事業所の実態など、事業の実体で審査する
実現方法:省令・ガイドラインの設計変更
期待効果:不正対策(ペーパーカンパニー排除)と事業継続の両立がしやすい
留意点:審査負担が増加する可能性がある
署名キャンペーンの主要求:「資本金の額ではなく、営業実績・納税実績・雇用実績など事業の実態に基づく審査基準への転換」
6. 実体審査の海外事例
実体に基づく審査を実装する国際的な前例として、以下が参考になる。
#### スペインの50万人正規化
スペインは2005年に約57万人の非正規滞在者の正規化を実施。犯罪率に変化はなく、経済への悪影響もなかったことが事後検証で示されている。
「スペインでは50万人を正規化したが、犯罪は増えていない」
— 児玉晃一弁護士(D4P 2026-03-09・安田菜津紀氏インタビュー)
#### 日本の2004年5万人正規化
日本でも2004年に「在留特別許可に係るガイドライン」運用が始まり、約5万人が在留資格を得た実績がある。
#### 韓国の更新時実態調査・税務調査
韓国では「最初の設立時の実態調査は難しいが、更新時に実態調査と税務調査を厳格化」する運用を行っている。出入国在留管理政策懇談会(2025年8月20日)で参照事例として引用された。
「韓国は最初の設立時の実態調査は難しいが更新時に実態調査と税務調査を厳格化」
— 出入国在留管理政策懇談会で引用(西村ちなみ議員質疑・衆議院法務委員会 2026-05-08)
韓国型の運用は、新規参入のハードルは低く保ちつつ実態のない事業を排除できる設計として、日本の現行改正に対する有力な対案となる。
なぜ「実体要件への転換」が最も本質的か
現行改正の名目上の目的は「ペーパーカンパニーの排除」である。しかし、資本金の額を引き上げても、実体のない会社が高い資本金を積むだけで要件をクリアできてしまう。一方で、実際に事業を営んでいる店舗(客が来ている、黒字である、雇用している、納税している)が資本金不足で排除される。
つまり、現行改正は「的を外している」。事業の実態で審査すれば、不正対策と事業継続の両立が可能になる。
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出典
衆議院法務委員会 2026-05-08(西村ちなみ議員質疑)