『21世紀の道徳』
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動機
第1部 現代における学問的知見のあり方
第1章 リベラルだからこそ「進化論」から目を逸らしてはいけない
都合の悪い事実や知見を無視し、平等という理想を追い求める左翼の人に向けて書かれた文章 平等という目的を本当に達成するためには、ちゃんとデータなどと向き合い原因を特定する必要がある
ダーウィン主義は右派寄り、
Peter Singerは左派寄り、
その下で、Peter Singerがダーウィン主義的左派(ダーウィニアン・レフト)を提案
データを見ることをダーウィン主義と言っているの #?? ダーウィン主義的左派の説明はあまり書かれていないmrsekut.icon
社会的諸関係の総和を全面的に返ることができれば、人間の本性も違うものに変えられるだろう
マルクス主義的
しかし、実際は
人間の本性とは、社会的関係の総和だけではない
生物学席な側面も影響しているはず
従って、ダーウィニアン・レフトの提案をする
今や左派は、我々は進化によって出来てきた動物であること、それは解剖学的なものやDNAだけが関係するのでなく、行動についてもまた然りなのだということを真剣に捉えるときにある
左翼の目的を本当に達成するためには、マルクスの思想に頼っていてはいけない なぜなら、マルクスは人間の本性についての理解を誤っているから。
原因を誤っていると、その対処作も誤る
だから、マルクス主義は失敗した
右派寄り
ダーウィン主義
左派寄り
マルクス
ダーウィン主義的左派?
ピーター・シンガー
第2章 人文学は何の役に立つのか?
「人文科学は何の役に立つのか?」という問いに対する拒否の3パターン その問自体が敵意を込められたもので、回答を求めているものではないので答える価値がない
「役に立つとは何か?」と質問で返す(哲学的)
「役に立つかどうか」という観点で考えるのがおかしい(社会学的)
人文学は何の役に立つのか?
民主主義が健全に機能するためには、一定数以上の市民が人文学に触れて、批判的思考や想像力を適切に培わなければならない
職業教育などでは予め箱が決められて、そのルールを前提として教育される
哲学をやると、そのルール自体に変動が起こっても、箱の外で目的を設定し直す能力が身につけられる
箱の外に出て思考を行う態度や習慣を身につけることができる
自分と違った考えや意見に対する感受性や耐性を得られ、柔軟に対応できる
本当に人文学をやれば箱の外に出る事ができるのか?
人文学者の中にも枠にハマった考え方をする人も多い
左派、リベラル
学校における芸術の役割
後日と感情移入の一般的な能力を養おうこと
各文化固有の盲点を扱うこと
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なんでそもそもその質問に応えなければいけないのか?
好きならばやればいいじゃんと思う
でも、お金の問題があるからなぁ...
人文学は戦時中に役に立ちすぎたことを反省し、舵を切っているという話、めちゃくちゃおもしろかったmrsekut.icon
第3章 なぜ動物を傷つけることは「差別」であるのか?
倫理的な理由で実践される完全菜食主義
権利
動物に生存権が適用されないのは差別ではないか?
理性を働かせることができるかどうかではなく、苦しむことができるかどうか
当事者が苦しむなら、それは考慮されるべき
逆に、苦しみや幸福に対する感覚が無いならば、考慮する必要はない
感覚を持つかどうかが判断基準
以降、この命題が前提として話が展開されるmrsekut.icon
動物に対する道徳的配慮の必要性を否定する人の主張
動物は権利に対応する「義務」の存在を認識して守るための知性を持たないから、動物に権利を認めることはできない
道徳とは何らかの相互性に基づくものである
動物が人間に対して道徳的に行為することができないから、
人間も動物に対して道徳的に行為する必要はない
この論理だと、赤ちゃんや認知症の人を殺しても良くなる
植物には痛覚がないので殺してもいい
しかし、感覚や意識を持たない存在は、自分の生命に対していかなる利益を持ちようもない。だから、殺されることも危害にはならないのである。
対象が生命であるかどうかは道徳的には重要ではない
安楽死ならok?mrsekut.icon
「どんな生命にも同じ価値があり、同じように大切にするべきだ」という言葉はもっともらしく聞こえるものだし、簡単ですぐに学べるルールでもある (..)しかし、すべての生命に同じ価値を認めて同じように大切に扱おうとする規範は、苦痛や危害を発生させる行為とそうでない行為との区別をつけられなくしてしまう。
なんか微妙に納得感がないmrsekut.icon
死に対する知能
知性の高い動物が死ぬことを知性の低い動物が死ぬことよりも重大な危害であるとみなして、どちらかが死ななければいけないときに後者を死なせることは、種差別ではなく合理的な区別だ。
逆に、「人間だから」という理由で赤ちゃんや重度な知的障害者たちが死ぬことを知性の高い動物が死ぬことよりも重大な危害であると見積もることは、合理的な区別ではなく種差別である。
捕鯨
人間が知性が一番あるから、人間の命の価値が一番大きい?
「生」に対して強い利益を一番持っている人の命の価値が優先される?
何かしらで命の価値に優先順位を付ける必要があるのね
倫理的な判断とはトレードオフに対して最善の回答をおこなおうとする判断のことである
第2部 功利主義
第4章 「権利」という言葉は使わないほうがいいかもしれない
この章は実用主義的に考えることが前提にある
プラグマティズム的
第5章 「トロッコ問題」について考えなければいけない理由
前者では太った男を殺すが、後者ではそうしない人が多い
理由は後者には以下の2つがあるから
密着効果
危害を加える意図
この結果、感情が理性を上回り、太った男を殺さない選択をする人が多い
理性で考えれば(功利主義)、1人を殺すほうが良い
太った男を突き落とすのではなく、スイッチを押すと歩道橋から落ちてトロッコが停止する
思考問題の設定に異を唱えることに対して
その反論は的外れである
わかるmrsekut.icon
これにちょっとページ割きすぎな気もした
第6章 マザー・テレサの「名言」と効果的な利他主義
偽善に対する批判として、マザーテレサが持ち出されがち
まず身近な人を助けなさい、というやつ
弱者を助けようとする人は、自分が可愛そうだと思う弱者化優先して助け、そう想えない弱者は無視する
特定可能な被害者効果
統計的な情報よりも個人的なエピソードのほうが、人を助けたいという気持ちに訴えかける
自分の国で苦しんでいる人を他の国で苦しんでいる人より優先することも、バイアスがかかった判断であるかもしれない
本当にの意味で「合理的」に考えるなら、わたしたちは外国で苦しんでいる人たちのことを自分の国で苦しんでいる人たちのことと同じように気にかけるべきである
そうだねmrsekut.icon
池に溺れている子供の話
目の前のこどもを助けることが前提に話が進んでいるmrsekut.icon
この視点から見ると、むしろ他国の弱者を助けるべき
マザーテレサの主張と逆になる
同じ金額でより多くの人を幸福にできる
これ何の話をしてるんだ、と思ったが、道徳を並べて倫理の整理をしているのかmrsekut.icon
第3部 ジェンダー論
第7章 フェミニズムは「男性問題」を語れるか?
有害な男らしさ論
性や人種の「多様性」を考慮するために発言や振る舞い方などに関するルールが複雑で曖昧になっていくことは、アスペルガー症候群や自閉症を持つ人たちを排除する結果をもたらすために「脳神経特性の多様性」に反している、とミラーは主張するのだ。 ここ面白いmrsekut.icon
第8章 「ケア」や「共感」を道徳の基盤とすることはできるのか? 『ふだんづかいの倫理学』.iconを読んだおかげで理解できるmrsekut.icon
この章、比較的面白いmrsekut.icon
従来の倫理学が理性に基づくべきであると前提していたが、
コールバーグの主張
男性は第4段階まで発達させられるが、女性は第3段階で留まる人が多い
男性は正義に基づいて判断できるが、女性は共感に基づいた判断しかできない
だから劣っている
「男性は第4段階まで発達させられるが、女性は第3段階で留まる人が多い」自体には同意
ケアは正義の前段階に位置する劣ったものではない
ケアと正義は別の次元に位置するものである
ここでの「本質主義」の使われ方
女性なら100%こう、みたいなノリ
女性的な声質を持っていない女性は、女性と認めない、みたいなノリ
ケアの能力が女性が優れているのは男性中心主義的な社会によるもの
ファミニズムの区別
平等派
男女平等を目指す
差異派
差異を認めて、女性に結びつけて語られることを肯定する
ケアの倫理はこちら
表面上は理論や原則を否定しつつも、政治運動などを介して常識という原則に従っている
主張の背景となる価値観や原則が表立った議論を抜きにして無条件で前提とされているからこそ、左派的な社会運動や政治活動に携わっている人にとっては、通常の規範倫理よりもケアの倫理やポストモダニズム的な思想のほうが支持しやすいのかもしれない。/mrsekut-book-4794972830/185 感情は、道徳の基盤とするにはあまりに恣意的で不確かなものである
共感だけではやっていけない
そもそも全員に共感することは無理だし、できたとしてもそれだけでは判断を下すことができない
第9章 ロマンティック・ラブを擁護する
この章だけやたら長いmrsekut.icon
欲求と理性の対立
普通の恋愛に対して論じている哲学が少ない
セックスについては比較的語られる
恋のエネルギー
恋人といる時のホルモンとドーパミン
哺乳類が、新しい受容可能な性的パートナーと出会うと性的欲求を回復させる現象
ヤングの一夫一婦制の分類
社会関係上の一夫一婦制
かけがえのない
性的な一夫一婦制
不安定
ポリアモリーの中にも、一夫一婦制がいるというのはそらそうだろうmrsekut.icon
他人の不倫を紛糾することで、自分の身を守る
不倫がダメだという倫理観があったほうが自分の恋人が取られる心配がない
危害原則的に見れば、他人の性行動を制限するのはおかしい 結婚と自由主義は相性が悪い
人によって、性欲に対する捉え方が大きく異なる
例えば、セックスすることに対しての捉え方
キリスト教的には、恋人の有無に関わらず他の人とするのは不貞
他の食欲や睡眠欲と比べて人によって差異が大きい
カント
義務論的に恋愛を捉える
セックスは他者を、性的欲求を充たすための手段として使っているので不正
マスターベーションも不正ということになる
グリーン
カントの議論は難解な理屈で感情を正当化するものでしかない
ヌスバウム
性的モノ化が悪いかどうかは文脈による
当事者同士が互いに尊重し合う関係性なら善い
他者の人間性に興味を持ってそれを目的としたコミュニケーションを成立させられることは価値のあることである
ロマンティック・ラブの理想とは、恋人と2人で目的の国に引っ越すこと
他人のことをそんなふうに扱わずに、相手を目的として扱ってその人間性を尊重したいという願望を、わたしたちは多かれ少なかれ抱いているはずなのだ。
第4部 幸福論
第10章 ストア哲学の幸福論は現代にも通じるのか?
「幸福」や「人生の意味」とは何か
欲求をコントロールして、心の平静を得ることこそが幸福な人生につながる
生物学的インセンティブ・システム
進化の主人に対して反乱を起こす
目標を内部化する
他者がいないと充たされない
第11章 快楽だけでは幸福にたどりつけない理由
幸福論の正解を探る
前者
持続的な幸福
人生に与えられた素材をうまく扱って、困難に対処する
幸福と徳が結びついている
「強み」も必要
エリート主義的
後者
短期的、快楽の最大化
快楽の合計値を上げる
徳とは技能である
訓練、実線、反省などを経て発達させていく
そのためには、価値観が必要
知恵
勇気
ヒューマニズム
正義
節制
超越性
人々がヘドニズムに魅力を感じる理由は、幸福の定義を引き下げられるから
意識の高さが必要ない
内容自体は良いけど、どこかで聞いたような話が多くて、あまり発見がないmrsekut.icon
快楽と徳って、突き詰めると同じでは?
徳的なものに対して、快楽を感じているのなら、快楽主義と言える
世間的に良いモノに対して、徳と呼んでるだけ
「快楽」の定義が曖昧すぎる?
第12章 仕事は禍いの根源なのか、それとも幸福の源泉なのか?
サボりのすすめ
資本主義のもとでは、労働者はどれだけ真面目に働こうが資本家に搾取される立場であり続ける
サボっても資本主義から脱出できない
働くという行為が人生にもたらす意味とはなにかについて
働くことで自分自身のアイデンティティを構築する
仕事や労働から逃避して幸福になることはできるか?
コヒーレント
人生が、その人の存在の三回層間でコヒーレントである時、人生の意味が感じられる
仕事を通じて社会に参加することに幸福を感じる
のは、社会構造に因るものではなく、
人間がそういうふうにできている
という結論
終章 黄金律と「輪の拡大」、道徳的フリン効果と物語的想像力
道徳はつめたいものであるべき
以下2つの比較
生物学的な道徳
e.g. やられて嫌なことは人にするな
自分が「損」をする可能性がある
自分と相手の振る舞いが同等であることを前提しないと成り立たない
あらゆる文化で黄金律が採用されて いることは、古来から数学や物理学に関する普遍的な真理がそれぞれの 文化で独自に発見されてきたのと同じように、道徳的な真実についても それぞれの文化で独自に発見されてきたことをあらわしている。つま り、ゼロの概念や万有引力の法則が自然界に存在しているのと同じよう に、「道徳とはこういうものである」「こういうときにはこうするのが 道徳的に正しい」という法則も自然界に存在している、と考えられるの だ。
その推論、合ってるのか...??mrsekut.icon
私達は「進化の奴隷」ではない
多くの人は不一致の感覚を放置することはできないため、自分 が間違っていたことを認めて、他の人の意見のほうがただしいことを受 け入れるようになる。つまり、他人に説得するためにおこなったはずの 推論が、自分自身を説得することになるのだ。
ほんまかいな?mrsekut.icon
世界は徐々にマシになっていっている
しかし、その速度がおそすぎやしないか
学校の教育レベルの向上によって、抽象的な思考をする能力が上がっている
他人の視点で他人の立場に身を置くためには、物語的想像力が必要
輪を広げて倫理をやっていこう
あとがき