著作権法の課題
「19世紀の状況を前提にして構築された著作権制度が、インターネットの発展でとてつもなく大きな問題に直面している。混迷の度合いは、同じ知財法である特許法の比ではない」
著作権法の国際法「ベルヌ条約」が生まれたのは1886年。保護対象として想定されていたのは書籍や美術品などプロの手によるものだった。
最新の改正も1971年と、ネットが普及するはるか以前だ。
日本でのネットは1995年頃から一般に普及し始める
「新しいネットビジネスは、著作権を侵害する可能性が高く、著作権法がその阻害要因になっている。今のままでは、ビジネスを萎縮させるか、違法行為がはんらんするか、どちらかになる」
例えば検索エンジンのキャッシュの扱い。日本の著作権法では現状、キャッシュは複製とみなされるため、著作者に無断でキャッシュを作成・蓄積する検索エンジンサーバは「著作権侵害の可能性が高い」。ヤフーやグーグルなどは、検索サーバを国外に置いている。 ネットの配信でコピーをしないのは不可能だ
2009年の著作権法改正によって、こうした行為は著作権侵害にはならないことが明確になりました。改正された著作権法は2010年1月から施行されています。
2008年時点ではグレーゾーンだった
「現在の著作権法から見ると違法コンテンツが多く、著作権者は削除にやっきになっているが、YouTubeのようなサイトは絶対に消えない」
YouTubeは便利なので今後10年は確実に消えないだろう。もしかしたら20年消えないかもしれない
「著作権を侵害する可能性がある新ビジネスでも、単純に拒絶するのではなく、いかに利益を還元するか考えるべき。YouTubeとも手を組んで、利益の一部を権利者に還元すると考えていくべきだろう。ダメだとばかり言っていても、インターネットは止まらない」
「当時は強い著作人格権、特に同一性保持権がクリエイターの意欲を増すと考えられており、立法者はそれを考慮して『世界一強い同一性保持権を付けた』と話していた。創作のみを重視し、流通・利用は軽視されていたが、昭和40年代としてはやむを得なかっただろう」
だが流通する著作物の量が圧倒的に増え「著作物の経済財としての地位」が向上したため「処理しにくい人格権が流通を阻害している側面がある」と指摘する。著作権者の多くは『著作物をできるだけ利用してほしい』と望んでいるはずだが、強い人格権が邪魔をする」
強すぎる著作者人格権は、2次創作やパロディー文化の広がりもはばむ。「一般人による2次著作や共同著作が増えている。翻案文化はもう止められない」 法律で一度与えた権利を、法改正で縮小することは難しい。「法解釈によって権利水準を引き下げる努力が行われてる」のが現状だが「法解釈だけでは無理がある。立法の問題に踏み込まざるを得ない」。 著作権法は物権法的な考え方だが、それが当てはまらなくなっている。データは無体物である。 「有体物に付着して流通していた情報が、データという裸の形で、単体で流通し始めている。それをコントロールして封じ込めるのは不可能と認識すべき」――そんな現状認識も示す。
「従来の著作権法の枠組みは物権法的な構成になっているが、現代の著作物は、書籍やCDといった有体物に付着させなくても、データという無体物のままネット上を流通させられる。物権法的な構成のままでは、情報の利用が進まない」
「インセンティブは、創作への参加意識なのか、コミュニティーへの帰属意識なのか――研究を待つ必要があるが、独占を廃して共有し、利益を得るという考え方が出てきている。独占ではなく共有で発展しあう、という考え方に注目すべきだろう」