LIFESPAN―老いなき世界
https://gyazo.com/050a463177ff38402e44e4a2eba1186a
2020
https://www.youtube.com/watch?v=9nXop2lLDa4
50歳ぐらいの時の公演
ハーバード大学医学大学院で遺伝学の教授を務め、長寿研究の第一人者である著者は、そのような世界がすぐそこまで迫っていることを示す。
本書では、なぜ老化という現象が生物に備わったのかを、「老化の情報理論」で説明し、なぜ、どのようにして老化を治療すべきなのかを、最先端の科学的知見をもとに鮮やかに提示してみせる。
私たちは寿命を延ばすとともに、元気でいられる期間を長くすることもできる。
では、健康寿命が延びた世界を、私たちはどう生きるべきなのだろうか?
著者によれば、寿命が延びても、人口は急激に増加しない。また、人口が増加しても、科学技術の発達によって、人類は地球環境を破壊せずに、さらなる発展を目指すことができるという。
いつまでも若く健康で生きられれば、年齢という壁は消えてなくなる。
孫の孫にも会える時代となれば、私たちは次の世代により責任を感じることになる。
SFなら人口増に技術が追いつかずに出生制限をかけるパターンだ基素.icon
本書は過去現在から未来にかけての老化研究の具体的かつ非常に優れた総説である。概要を知りたい人には、まず目次を読まれることをお勧めする。問題点がわかりやすく明確に書かれている。
老化や死とは、自然の経過なのだから、あまり人為的に干渉すべきではないというのが世界のいわば「良識的」な意見ではないかと思われる。著者は多年の研究結果に基づいて、それにはっきり反対意見を述べ、まず「老化は病気である」と結論する。病気であれば治療できるはずである。
現在の医療ではいわゆる生活習慣病の治療が大きな問題となっている。たとえばガンは加齢とともに増加する。脳や心血管障害も同じである。こうした疾患の予防や治療に努力やお金をつぎ込むなら、老化の防止にそれらをかけたほうがいいという著者の主張には強い説得力がある。
日本の山中伸弥教授の仕事は老化と関係が深い。本書でもしばしば引用されている。日本でそれが著者の研究のようなごく「基礎的」な方向に発展するかどうか、私はかなり疑っている。日本ではiPS細胞の臨床応用のような「実用」の方向に向かいやすい。それは科学者のせいというより、社会の常識のあり方の問題であろう。 老化は正常な過程ではなく「病気」である、というのがシンクレアの基本的な考えだ。 遺伝子から読み出される情報...その読み出され方がおかしくなることこそが、さまざまな老化の症状を引き起こすたった1つの原因であるというのがシンクレアの考えだ。
もう少しわかりやすく説明してみよう。細胞の状態はわれわれの体にある2万個の遺伝子の情報がどう読み出されるかによって規定されている。加齢によって情報の読み出され方がおかしくなってしまったのが、老化した状態である。だから、そのような間違えた状態を若い頃と同じように変えてやることができれば老化を防げるはずだとする。
シンクレアは、もともと出芽酵母――パンやビールを作るときに使われる酵母――の研究者だった
たった3つのグループのタンパク質をうまく制御してやれば――もう少し詳しく言うと、サーチュインとAMPKを活性化させ、TORを抑制してやれば――「老化という疾患」を予防できて健康な長寿が手に入るというのだ。
サーチュインは遺伝子からの情報発現の制御に関与するタンパク質で、NAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)...分子によって活性化される。
AMPK(AMP活性化プロテインキナーゼ)という酵素
TOR(ラパマイシン標的タンパク質)
サーチュインの活性化には、NADの前駆体であるNMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)や、赤ワインなどに含まれるポリフェノールとして有名なレスベラトロールが効く シンクレアは毎日1グラム飲んでいるらしいが、ネットで見ると安いものでグラム当たり2000円近くもする。
AMPKの活性化には、糖尿病の治療に使われる安価な薬剤メトホルミンが効く
TOR阻害剤は副作用が強いのだが、いずれ毒性の低い化合物が作られるだろう。
私はいまだに半信半疑である。論理的には信じるべきだと脳が指示する。しかし、感覚的に受け入れられない
これから、どれくらい健康寿命が延びていくのだろうか。医療の進歩により10年、食事などの自己管理により5年、先に書いたような長寿遺伝子を働かせるような化合物により8年で計23年、というのが現段階でのシンクレアの試算である
目次
はじめに――いつまでも若々しくありたいという願い
第1部 私たちは何を知っているのか(過去)
第1章 老化の唯一の原因――原初のサバイバル回路
第2章 弾き方を忘れたピアニスト
第3章 万人を蝕(むしば)む見えざる病気
第2部 私たちは何を学びつつあるのか(現在)
第4章 あなたの長寿遺伝子を今すぐ働かせる方法
第5章 老化を治療する薬
第6章 若く健康な未来への躍進
第7章 医療におけるイノベーション
第3部 私たちはどこへ行くのか(未来)
第8章 未来の世界はこうなる
第9章 私たちが築くべき未来
おわりに――世界を変える勇気をもとう
謝辞
原註
シンクレアの利害関係情報開示
大きさの比較
登場人物紹介
用語集
用語一覧