NMN
ビタミンB₃からつくられた食品成分「NMN(ニコチンアミド・モノヌクレオチド)」の抗老化効果が、世界的に注目を集めている
その発端となったのは、米国ワシントン大学医学部発生生物学部門・医学部門の今井眞一郎教授(神戸医療産業都市推進機構先端医療研究センター・老化機構研究部特任部長兼任)らが、マウスを使って実施した研究だ。同教授は、酵母やマウス、人間の体内にある酵素「サーチュイン」が、老化や寿命を制御しているという事実を発見したことで知られる世界的な老化研究者で、現在は、NMNのヒトへの有効性をみる研究を進めている。 NMNが抗老化効果を発揮するのは、体内に入るとすぐに、NAD(ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド)という、私たちが生きていく上で欠かせない補酵素に変換されて、サーチュインの働きが活性化されるから。サーチュインは老化や寿命をコントロールする酵素で、日本ではその遺伝子は長寿遺伝子と呼ばれている。哺乳類にはSIRT1(サーティワン)から7まで7種類あるが、老化を制御する上で特に重要なのが、糖や脂肪の代謝を改善し神経細胞を守る働きがあるSIRT1だ https://gyazo.com/a91b5d4d746701dfe9d2d992440305c7
人間がSIRT1を高めるには
マウスでの研究を基に考えると、脳でSIRT1の機能を高めるには、食事の摂取量を減らすカロリー制限、あるいは運動やNMNなどの補充によってNADを増やす方法がある。ただ、カロリー制限はつらいから長く続けるのが難しいし、感染症にかかりやすくなるリスクがあるため、お勧めできない。また、NADを増やすには、NMNの補充以外に、NADの合成に不可欠なNAMPT(ナムピーティ/ニコチンアミド・ホスホリボシルトランスフェラーゼ)という酵素を高める方法もある。私たちのグループでは、このNAMPTを高める方法についても研究を進めている NMNとNAMPT以外で有力だと見ている抗老化研究
①臓器や組織にたまっている老化細胞を除去する「セノリティクス(老化細胞除去薬)」
②免疫抑制剤のラパマイシンの誘導体である「ラパローグ」
ラパローグは、哺乳類の老化の制御に関わるmTORと呼ばれる遺伝子の働きを抑えることで、老化を遅らせ、寿命を延ばすことが線虫やマウスで確認されている。
③糖尿病薬としても用いられている「メトホルミン」の活用である
このうち、特にビジネスと投資の観点から脚光を浴びているのが老化細胞除去薬だ。
米国では、ユニティバイオテクノロジーなどのベンチャー企業が、関節炎や認知機能低下など、加齢によって増える病気の治療をターゲットに老化細胞除去薬の開発を進めている。
「 ...医師の処方が必要な薬として開発が進んでいる。薬という形ではなく、抗老化研究の成果を社会実装していくという意味で、現時点で最も先行しているのはNMNだ。NMNカプセルは既に市販されており、誰でも試してみることができる」(今井教授)