文法:文法範疇:格☆
絶属斜能呼、或いは生殺与奪を始めとする27の格がある。
母音で始まる接尾辞が母音で終わる単語に接続し、かつ語末母音が半母音に変化しない場合、接尾辞の語頭母音が脱落する。(呼格と於格を除く)
ex.) nacic⇔wēnoc
-i, -ī で終わる単語に属格が、-e, -ē で終わる単語に斜格が接続する場合はそれぞれ- īc, -ē'となる。
ex.) brī→brīc, tangē→tangē'
また斜格は、-i, -uで終わる単語に接続する場合、それぞれ-yと-wに変える。
ex.) āgbeni→āgbenye', ūlu→ūlwe'
その他の格も同様である。
絶対格:1格:-bix(子音の後では-ix)
・自動詞主語(自分で制御出来ないもの 「震える」や「滑る」など)と他動詞目的語を示す文法格。
ex.1)Savwe kasi xasōbix.
彼は新木を(今)切った。or 新木は(今)切れた。
ex.2)Жevōge yas baшenix dai karonix luƣa'ob.
我々は心の中に怒りと悲しみを有しているものだ。※注記:動詞、形容詞をそのまま名詞に転用しています。
属格:2格:-ic
・所属を示す文法格。必ず後置修飾する。
・動詞を修飾する格(広く能格や絶対格も含む)を連体修飾語にするために用いる(日本語の「東京へ行く」→「東京への移動」のように)。
ex.1) bixat nāelworhwic
宝石の言葉たち(=宝石類の名前のことを指す)
ex.2) savexuswe-tasras ūzatixic Tēcēkoc
彼らの東京に最近移動したこと
斜格:3格: -e'
・文語では与格と同義の文法格。
ex.) Ƣiv ge qēka kaiƣe' ƣadyonix.
私はあなたに家を渡さない。
(以下は現代語の用法であることに注意)
※現代オ゛ェジュルニョェーッ語の斜格は、与格と大体の意味格が合流して形成されたものである。
※他の格の支配が指定されていない前置詞の後の名詞は必ず斜格を取る。また方向を示さない格の支配が指定されている前置詞の後の名詞は斜格を取ることができる。
ex.) ēnd(end) ƣadyone' 家から
能格:4格:-∅
・自動詞主語(自分で制御出来るもの 「歩く」や「泳ぐ」など)と他動詞主語を示す文法格。
呼格:5格:-u'e
・呼び掛け先を表す文法格。
・母音の後ろでも例外的に"u"は脱落しない。
・口語では現れない事も多い。
・"旧字旧仮名を使うような日本人"に相当する人間は口語でも呼格を使うだろう。
ex.) Жexluƣa'u'e!
ジョェヘふア゛ッよ!
於格:6格:-uъe
・場所を示す意味格。
・母音の後ろでも例外的に"u"は脱落しない。
ex.) Жaban'uъe
日本で
向格:7格:-ako
・着点の方向を示す意味格。
ex.) ƣadyonako nacic
私の家へ
奪格:8格:-end
・起点の方向を示す意味格。
ex.)Tēcēnd
東京から
通格:9格:-axu
・通過点を示す意味格。
ex.)dāп ƣadyonaxu
大きい家を通って
接格:10格:-op
・接着を示す意味格。
ex.) nacop
私に触れて
内格:11格:-oб
・非接着内側にあることを示す意味格。
ex.) ƣadyonoб
家の中に
外格:12格:-el
・非接着外側にあることを示す意味格。
ex.) ƣadyonel
家の外に
上格:13格:-az
・非接着上方を示す意味格。
ex.) kaiƣaz
あなたの上に
下格:14格:-es
・非接着下方を示す意味格。
ex.) kaiƣes
あなたの下に
側格:15格:-ya
・非接着側面を示す意味格。
ex.) kaiƣya
あなたの側に
時格:16格:-oal
・時間に関する意味格。「~するとき」を言う場合は、従属接続詞のtsadに接続する。
※意味拡張: 条件法とともに使うと、「もし〜なら」という意味の強調になる。
ex.) aku ntazoal 午前一時に
tsadoal wor ƣiv 私が見ているとき
tsadoal woroni savix もし私が見ているなら
頻度格:17格:-oƣa
・頻度に関する意味格。
ex.) aku vastaƣa 一日毎に
※意味拡張:vastaƣa単体では「毎日」という意味になる。
付格:18格:-uпix(付格・欠格的用法)
・付帯に関する意味格。
・with/withoutに相当する
・付帯状況を示す際には従属接続詞のtsadに接続する。
ex.)tsaduпix wor ƣiv 私が見ながら
第一用法(付格的用法) 付格ともいう。附帯していることを表す
ex.)lanvaпix 世界と共に
第二用法(欠格的用法) 欠格ともいう。附帯していないことを表す
ex.)ge-lanvaпix 世界なしに
変格:19格:-wir
・変化先を表す意味格。
・edderwir は英語でいうところの to change (絶対格の語) into edder という副詞句にあたる
ex.) gles brīwir
冷たい水にすべく
生格:20格:-ati
・得させるものを表す意味格(直接目的語にあたる)。益格ともいう。
・edderati は英語でいうところの to give (絶対格の語) edder という副詞句にあたる
ex.) tangenē'ati
金を得させるべく/〜の結果として金を得させる
殺格:21格:-atig
・失わしめるものを表す意味格(直接目的語のようなものにあたる?)。生格と対義。
・edderatig は英語でいうところの to make (絶対格の語) lose edder という副詞句にあたる
ex.) tangenē'atig
金を失わせるべく/〜の結果として金を失わせる
因格:22格:-eca
・原因や理由を示す意味格。絶対格主語受動文の動作主も示す。
・従属接続詞のtsadに接続して句をとることも可能。(dawi を使うよりも堅めの表現)
ex.)Vāca īluntitixic, satavusaweш ārnokunē пatiduzat nacatic Tsūdelveruъe.
イヌワシが怖くて (=イヌワシたちへの恐怖により)、私達の先祖はツ―デルヴェルに住むことを止めたのだろう。
ex.) Tsadeca edarix wor ƣiruvuswe, twavusoдi фes пaotшeca, tsadix nacarix дadжeca ƣirulivexozari zuzikadiv.
私達三人がそれを見たので、王は私達三人が火によって近いうちに殺されなければならないだろうと(高らかに)言った。
具格:23格:-iж
・道具や手段を示す意味格。能格主語受動文の動作主も示す。
・因格と同様、tsadに接続しても使われる。
ex.)savus-фesrasiж ūzic 彼の発言によって
tsadiж фes savus 彼が発言したことによって
配分格:24格:-aшn
・物を分配するとき、その配分を示す意味格。
ex.)Savusaдi qēka Kāsiм шekezādarix жaшn Ibrāye', akwaшn Жexluƣa'e'.
カーシムは3つのチョコレートをユブラーユに2個、 ジョェヘふア゛ッに1個渡した。
※意味拡張:tsadと共に用いると、並列の意味を表す。
ex.)Tsadaшn ūz qaksira savigwe, aqih ba.
その男は食べ、その女は作る。
様態格:25格:-ahi(様格的用法・類格的用法(・法格的用法)・等同格的用法)
・様態に関する意味格。
第一用法(様格的用法) 「~として」のような、立場・任務・状態に関する意味を示す。
ex.) жex ƣaqēhi 正しい人として
第二用法(類格的用法) 「~のように」のような、様子が類似していることを表す。
ex.) жex ƣaqēhi 正しい人のように
第三用法(法格的用法(その1)) 古代、原始オエル語では能力・目的/意図・可能性を表していたが、早期に消失した。消失後は助動詞を用いてこれらの意味を表す。
第四用法(法格的用法(その2)) 古代、原始オエル語では必要性・義務・許可を表していたが、早期に消失した。消失後は助動詞を用いてこれらの意味を表す。
第五用法(等同格的用法) 類格的用法から派生したもの。集合体や複数事物に接続して、それらの構成事物が互いに等しいことを表す。
また、これらとは別に形容詞に接続した場合、副詞にする働きがある。
比較格:26格:-apra
・比較対象を示す意味格。
・チェチェン語などでは何某の事物に似ている、何某の事物の性質を持つという意味も表し得ることとなっているが、オエル語ではそのようなことはなく、ただ単に比較の意味を表すだけである。
名詞に接続する場合は、
比較格「まさに(ちょうど)~と同じ程度である」
側格+比較格「~と同じ位である」
上格+比較格「~より良い」
下格+比較格「~より悪い」
となる。
ex.)'Ev dzur nacapra.
貴方は私とまさに同じくらいバカだ。
'Ev dzur nacyāpra.
貴方は私と同じくらいバカだ。
'Ev dzur nacazapra.
貴方は私よりバカだ。
'Ev dzur nacesapra. (='Ev ge dzur nacazapra.)
貴方は私よりバカではない。
形容詞に格単体で接続すると最上級を表せる。これは、「まさに~と同じ程度である」という本来の意味から派生した用法である(hsosopra「まさしく"良い"という程度だ」→「最も良い」)。
※意味拡張:名詞+比較格,名詞で「~と」という意味、ge+名詞+比較格,名詞で「~または」を表せる。なお現代口語ではdai、gegwehに置き換わっている。
ex.)oмapra nan 米とパン
ge nanapra hazoм パンか麦粥
位格:27格:-isш
・「~のために[意に沿って]」(work for の for にも近い)、また「~の支配下で」「~の摂理・規則・法などのもとに」を示す意味格。上下関係は含意するとは限らない。
・連体修飾も可能。
・ugu「自身」と組み合わせることで、「自由人として」(< 自身の意に沿って, 自身の支配下で) のような意味にもなる。
ex.) Twavusoдi ūч ūz brībix nacisш.
彼は私のために水をついでくれた。
ex.) 'Evuxi krūg uneqiмix akwic nirbāghu'isш Ƣezne'bixic.
オエル語文法に則った文を一つ書きなさい。
ex.) Ūzeca ugwisш, twaveш tasite cwarat ūzugwisш ntaznē'ahi.
自由奔放な彼のことだから、いつもの如く彼自身のために動くに違いない。
(自由人としての彼は、いつものように彼自身の意に沿って物事を行うに違いない。)
なお、上の例では、能格項で能格語能格語句強調の因格形を、明示的当然の非受動性能格 -∅ を目的語においている。
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口語では前置詞は格支配の別がある。3或いは6格支配は(どちらを使うかは方言による。首都圏方言は全ての格支配が3格で表される)場所、4格以外の前置詞に関するもので、4格支配は方向に関するものである。このとき、話者の方言によって前置詞の母音の長短、有無が変わる。
ex.)Qrīжban, 'evye qaks isepexix ж дadжe' ēl ƣadyone'?!
あー、鳥っこ焼いて家の外で食おうぜ!
Nrжāqē, чadeca nac salōn qakse', ƣivi duш ko granerestaran.
うーん、腹減ったし、美味えレストランに行きてえな。
なお前述以外の意味格は、tsadの格変化を除き文語文でのみ用いられる。