パワハラ上司を科学する
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@rashita2: 『パワハラ上司を科学する』(津野香奈美 ちくま新書)を読み終えました。どんな人がパワハラ上司になりやすいのか、何を意識すればそれが避けられるのかといった話が具体的に紹介されます。これから部下を持つ人は一通り読んでもらいたい一冊です。 https://pbs.twimg.com/media/FvgsszCakAUnexl.jpg
【目次】 amazon ページより
1 パワハラの定義と判断要件
「改正労働施策総合推進法」におけるパワハラの定義/パワハラの六類型/事業主に義務付けられた雇用管理上の措置と罰則/パワハラの判断方法 2 パワハラの発生状況
第2章 誰がパワハラをしているのか
1 パワハラ行為者の職位
行為者の七割が「上司」/どのように聞くかで、パワハラを受けている人の割合は大きく変わる
2 なぜ、上司はパワハラをしてしまうのか
人を優越性を得ると横柄になる
3 パワハラ行為者の性別
パワハラ行為者には女性よりも男性が多い/なぜ、パワハラ行為者に男性が多いのか/①管理職に男性が多い/②男性の方が攻撃的な行動を取りやすい/③“有害な男らしさ”の影響を受けている/④男性の方が相手の感情を読み取りにくい/⑤パワハラ行為を行いやすい性格傾向を持つ人が男性に多い
4 パワハラ行為者の性格特性
ビッグファイブ・パーソナリティとヘキサコモデル/いじめとパワハラ加害者の性格傾向/邪悪な性格特性:ダークトライアド/組織に「邪悪な性格特性」を持った人がいるとどうなるのか/管理職登用の際に、邪悪な性格特性を持つかどうかをスクリーニングする/なぜ社会は、「邪悪な性格特性を持つ人」を評価してしまうのか/ダークトライアドとパーソナリティ障害/反社会性パーソナリティ/自己愛性パーソナリティ 5 パワハラ行為者の個人特性に着目したパワハラ対策
① パワハラ行為者に「自ら気付いてもらう」という幻想を捨てる/②文書で注意を行う/③管理職への登用の際、性格傾向にパワハラ気質がないか確認する
第3章 パワハラを引き起こす上司の三大リーダーシップ形態
1 破壊的リーダーシップ
破壊的・建設的リーダーシップモデル/組織には損害を与えるが、部下に対しては“破壊的”でないリーダーシップ形態もある
2 脱線型の上司
脱線型リーダーシップとは
3 専制型の上司専制型リーダーシップとは
専制型上司の特徴/会社の方針や施策が、専制型リーダーシップを奨励している場合がある/破壊的リーダーシップを発揮させる毒の三角形/専制型リーダーシップは、長期的には部下のパフォーマンスを下げる/なぜ専制型上司からのプレッシャーや要求度が高いと、部下は疲弊していくのか/なぜ専制型上司は部下の自尊心を傷つけるのか/恐怖と不安のマネジメントは、不正行為や逸脱行為を増やす
4 放任型の上司
放任型リーダーシップとは/日本に多い放任型・消極型上司/パワハラ防止研修が、放任型上司を増やしている/上司が放任型だと、パワハラが新規に発生しやすく、部下もメンタルヘルス不調になりやすい/放任型リーダーシップがパワハラ発生につながるメカニズム/専制型上司の上に放任型上司がいる職場が、最も危ない
第4章 なぜパワハラは起こるのか――パワハラが発生するメカニズム
1 個人的パワハラと構造的パワハラ
2 個人的パワハラの発生要因
① 自尊心が不安定に高い/米国におけるセルフ・エスティーム・ブーム/顕在的自尊心と潜在的自尊心/②感情知能が低い/③自分の言動が他者にどのように影響するか認識ができていない/④他者に対する期待水準が高い/⑤厳格な親タイプ 3 パワハラしやすいタイミングはいつか
新しくパワーを得た時/ストレスが高い時
4 いじめ・パワハラの発生と進行過程
神戸市教員いじめ・暴行事件から見るパワハラの進行過程/暴走するパワハラ行為者を止めるのは管理職の責任
5 構造的パワハラ
人が集団である限り、差別や排除は必ず起きる/ソーシャル・キャピタルとパワハラ/発達障害者へのパワハラ/日本の全制的施設的職場
6 パワハラを誘発させる職場環境はどのようなものか
要求度やプレッシャーの高い職場/役割葛藤・役割の曖昧さのある職場/冗談やからかいを容認している職場/「男らしさ」が求められる職場/体育会系職場/●パワハラが起こりやすい職場チェックリスト
第5章 パワハラ上司にならないためにはどうすればいいのか
1「部下と自分は対等な同僚だ」と認識する
上司が持つ「横柄さ」「傲慢さ」を手放す/部下が抱えている困難に耳を傾ける
2 安定した自尊心を持つ
運動による自尊心向上効果
3 感情知能を高める
上司の感情知能が高いと、個人にも組織にも良い影響がある/感情知能の構成要素/ ① 自己認識力/感情の自己認識/正確な自己評価/②自己調整力/感情の自己抑制/ 感情の自己調整力に関わる他の要素/感情の自己調整力を高める方法/③社会認識力/④関係調整力
4 ストレスにうまく対処し、体調を整える
5 世代間・文化間のギャップを認識する
上司世代と部下世代のモチベーションギャップ/部下世代は「承認」を求めている/ 日本人労働者と外国人労働者のギャップ/日本の職場で「当たり前」に行われていることが、外国人にとってはパワハラとなる
6 個別配慮型リーダーシップを発揮する
マネジメントとリーダーシップの違い/リーダーシップは難しいものではない/個別配慮型リーダーシップとは/①部下の長所を伸ばせるように助ける/②部下一人ひとりが違うニーズ、モチベーション、スキル、キャリア展望を持っていることを頭に入れて接する/③単なる集団の一員としてではなく個人として接する
7 部下に耳の痛いことを伝えるにはどうしたらよいか
① 周りに人がいない状態で行う/②ほめられる点・できている点を同時に伝える/③人格否定をせずに何をどうしてほしいのか伝える
目次がしっかり組み立てられている
初読で印象に残った箇所のダイジェストkidooom.icon
パワハラの7割は「上司」が行う
人は権力を持つとパワーを行使してしまいがち
パワハラが多い性別は、男
男から男へのパワハラが最も多い
女から男へのパワハラは最も少ない
「何がハラスメントと言われるか怖いから放任しよう」という放任型上司の態度もパワハラを誘発する
パワハラをしやすい時期がある
新しい権力を持った時
ストレスが高い時
パワハラの六類型
1. 身体的な攻撃
2. 精神的な攻撃
3. 人間関係からの切り離し
4. 過大な要求
5. 過小な要求
6. 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)
この中では、精神的な攻撃が最も割合が多い
パワハラの三要件
1. 優越的な関係を背景とした言動である
だからパワハラ行為者に上司が多くなる
2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えている
3. 労働者の就業環境が害されている
パワハラの実態調査
厚生労働省による2020年の実態調査によると、過去三年間にパワハラを受けた人の割合は労働者の31.4%
共働き世帯の増加による、家庭の中での立場の認識にズレがある
昭和60年と比較すると、専業主婦世帯と共働き世帯数の推移は逆転している
昭和の人の価値観は、男は必死に仕事して妻は家庭を支える
平成以降の人の価値観は、夫婦は共働きで子育てするのが当たり前
この価値観の違いがパワハラをうみやすくなる
あなたの職場のイヤな奴で、「クソッタレを採用するな!」と主張しているのは、こういったパワハラを防ぐためでもある p84
彼らは目標達成(特に、金銭、権力、競争)のためには、誰かを手助けしたり、巧みに操作したりすることができるからです。何人も部下を潰しているパワハラ上司が、なぜか上層部の人間から気に入られていることがあるのも、これが理由です。こういった人は、上から見ると、業績も実績も申し分なく、人としても魅力的なように見えてしまうのです。
過去にそういった人を何人か見たことがあるkidooom.icon
自分より優秀な人が現れると、自尊心を守るための防御反応が態度に出る p134-135
例えば、自尊心が高い人はリーダーになりやすい傾向にあります。しかし、自尊心が「不安定に」高い場合は、不安を感じた時に自己防衛反応が起こり、攻撃的になりやすいと報告されています。
例えば、能力の高い部下が来た際に自分の地位が脅かされることを恐れて、その部下がわざミスをするように仕向けたり、自分のほうが上の立場であることを示すために皆の前で罵倒したりすることで、自尊心を回復するという行動に出るのです。
勉強熱心なことで過度な自尊心がうまれてしまっていないか?
運動をすると自尊心が安定してパワハラが減ると主張している パワハラを誘発させる環境
要求度やプレッシャーが高い組織
パワハラも誘発する
「相手」への関心はプライベートな領域に立ち入り、ハラスメントになりかねない