事例解説アウトライン2020-07-07
(排除措置命令・課徴金納付命令のみの段階)
排除型私的独占(2条5項)とされた事例
平成21年改正による課徴金導入後、初めての命令事例
平成20年代の2件の最高裁判決は、いずれも、課徴金施行前の事例
該当の売上額がなく、課徴金ゼロなので課徴金納付命令なし
排除措置命令と課徴金納付命令が別の日
排除措置命令の日に、まだ違反行為が終わっていなかったたため
排除措置命令書の「法令の適用」で7条1項が掲げられている
会社は、「排除措置命令に対しては、粛々と受け止め必要な対応は執ります」と発表
課徴金納付命令書は8月20日に違反行為終了と認定。
7月28日 取締役会決議
8月21日以後 取引先・被排除者への通知
8月20日までが課徴金対象期間
別の日となるのは2件目
令和2年当時の規定では、終了日から遡って3年間のみが課徴金対象期間となったが、令和2年10月から施行されると考えられていた令和元年改正では、最大10年まで伸びることとなっていた(実際には令和2年12月25日から施行)。
違反要件
2条5項
この法律において「私的独占」とは、事業者が、単独に、又は他の事業者と結合し、若しくは通謀し、その他いかなる方法をもつてするかを問わず、他の事業者の事業活動を排除し、又は支配することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。
「排除」
行為
=人為性がある
=商品役務の優位性によらない行為
排除効果
「により」
因果関係
「一定の取引分野における」
市場画定
「競争を実質的に制限する」
反競争性
価格等の競争変数を左右する
正当化理由がない
市場画定
八尾空港における機上渡し給油による航空燃料の販売分野
排除効果
プレゼンスの大きさ(市場シェア8割超(排除措置命令書4頁))
11空港等以外でのマイナミの提携給油会社からの給油
「取引先需要者にとって利便性が高い」
名古屋飛行場・広島へリポートはマイナミのみ
正当化理由
マイナミは、混ぜると危険、と主張(会社リリース等)
排除措置命令書に、公取委の主張とみられる事実認定
排除措置命令の執行停止を求めることなく排除措置命令を履行したら、正当化理由の主張の説得力はどうなるか?
種々の議論があり得る。
課徴金納付命令書
「卸売業」(課徴金納付命令書1頁)
算定率は6%でなく1%
令和元年改正で、卸売業の軽減算定率は廃止。
インテル事件(課徴金導入前)に課徴金を課したと想定した場合も、名宛人である日本インテルは卸売業、と説明されていた(竹島委員長の国会答弁)
施行令の1号の売上げと2号の売上げ(課徴金納付命令書2頁)
現行の施行令14条1項の1号・2号と同様の内容
法律を受けた2分法であり、施行令独自のものではない
以下の条文は、本件に適用される令和元年改正前7条の2第4項のもの(こちらのほうがシンプルなので)
当該行為に係る一定の取引分野において当該事業者が供給した商品又は役務
売上げ:5億8716万円
当該一定の取引分野において当該商品又は役務を供給する他の事業者に当該事業者が供給した当該商品又は役務(当該一定の取引分野において当該商品又は役務を供給する当該他の事業者が当該商品又は役務を供給するために必要な商品又は役務を含む。)
売上げ:2517万円
八尾空港における供給者はマイナミ(名宛人)と佐賀航空(被排除者)の2社、と認定されているので(排除措置命令書4頁)、被排除者に若干の供給をしていた、ということであろうか。