JASRAC
平成29年5月24日 JASRAC定例記者会見
p9で審判請求取下げに言及
保証金没取申立て東京高決について
排除措置命令の執行について
JASRACの確定排除措置命令の執行について
平成29年2月14日 保証金没取申立て東京高決
東京高決平成29年2月14日・平成28年(行タ)第146号
「保証金の供託によって排除措置命令の執行を免れながら、後にこれが確定した場合には、被審人は、本来ならば速やかに実行されるべきであった排除措置命令の内容の実現及び違反行為の排除を当該確定まで免れていたことになるから独占禁止法70条の7第1項の上記趣旨に照らすと、被審人が供託をしていた保証金は、特段の事情がない限り、全部没取されるべきものである。」(10頁)
この一般論は、排除措置命令後、暫く経って初めて排除措置命令が現実に履行可能となる場合を想定していないのではないか。
「排除措置命令が確定したということ」と「排除措置命令がその発出時から正しかったということ」とを同視している。
本件に、暫く経って初めて排除措置命令が現実に履行可能となったというような事情があったことは、裁判所も理解しているように見える(11頁後半)。
「特段の事情」があることは、10-12頁で詳細に認定。
確定した旨、報道されている。
JASRACに対する課徴金の有無
ジュリスト1502号の拙稿によって全て説明できる内容。
平成28年9月14日 JASRACによる審判請求取下げの公表
平成27年4月28日 JASRAC 審決取消請求最判
判決の概要
「本件行為が独占禁止法2条5項にいう「他の事業者の事業活動を排除」する行為に該当するか否かは、本件行為につき、自らの市場支配力の形成、維持ないし強化という観点からみて正常な競争手段の範囲を逸脱するような人為性を有するものであり、他の管理事業者の本件市場への参入を著しく困難にするなどの効果を有するものといえるか否かによって決すべきものである」
(判決書6頁)
NTT最判では、正常競争手段逸脱人為性と排除効果とが渾然一体となっており、これらをひとまとめにして本判決と大差ない考慮要素を掲げていたが、本判決は、これらの考慮要素を排除効果に関するものとして掲げ、正常競争手段逸脱人為性は排除効果とは別の問題と位置付けているという点で異なっている。
本判決のように、東京高裁判決の事実認定を前提とするのであれば、排除効果があるという結論になるのは自然なことである。
その際、本判決は、平成18年10月のエピソードには簡単に触れるのみで(判決書5頁)、本件行為の一般的な影響の評価に分量を割いているが(判決書7-9頁)、これも、東京高裁判決の論理構造と同じであり、驚くには当たらない。
東京高裁判決は、平成18年10月のエピソードを主な根拠として排除効果を否定した本件審決を否定するために、平成18年10月のエピソードをめぐる判示に分量を割いたのであるが、全体の論理構造としては、平成18年10月のエピソードよりも、本件行為の一般的な影響を主な根拠として、排除効果は成立するという結論を得ていた。
(本件審決が平成18年10月のエピソードを中心に判示したのは、審査官がそれを中心に主張したからであるようである。審決案42-43頁、80頁。)
「…参加人の本件行為は、別異に解すべき特段の事情のない限り、自らの市場支配力の形成、維持ないし強化という観点からみて正常な競争手段の範囲を逸脱するような人為性を有するものと解するのが相当である。したがって、本件審決の取消し後の審判においては、独占禁止法2条5項にいう「他の事業者の事業活動を排除」することという要件の該当性につき上記特段の事情の有無を検討の上、上記要件の該当性が認められる場合には、本件行為が同項にいう「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」ものに該当するか否かなど、同項の他の要件の該当性が審理の対象になるものと解される。」
(判決書10頁)
調査官解説
清水知恵子・ジュリスト1483号(平成27年8月号)
排除効果に関する判示のあと人為性について「なお書き」の「傍論」を置いたのは、として、
「①」として、排除型私的独占ガイドラインの4類型をはじめ、通常は排除効果と人為性が一体的に判断される場合も少なくないことを挙げたあと、
「②本件行為に係る人為性の有無についても、その判断の基礎となる事情は本判決中に示された事実関係等において既に顕れており、取消し後の審判におけるさらなる審理を経ずに法的判断を示すことが可能であったことなどの理由によるものと考えられる。」
(87頁)
とし、さらに、
「なお、本判決における上記の判断には、「別異に解すべき特段の事情のない限り」との留保が付されているが、これは、取消し後の審判において当事者が人為性の有無につき反論する機会を確保するという配慮に基づくものと解される。」
(87頁)
としている。
排除効果と人為性の若干の違いについて、そのあと87頁右段で解説されているが、その解説は必ずしも明快なものとは言えないようにも思われ、さまざまな制約のもとで書かれたものではないかという推測も成り立つところであり、それだけに、上記引用部分で明快に解説されている諸点が注目される。
ひとつの仮説としては、もともと最高裁は、NTT最判に示されたように、人為性と排除効果を分けて論ずるつもりはなかったのであるが、そのNTT最判をみてJASRAC審判手続で排除効果に加えて人為性が別の争点として追加され、しかも、そのうち排除効果だけを否定する審決、そして排除効果だけを審理してこれを肯定し審決を取り消す東京高裁判決、が最高裁に上がってきて、排除効果だけを分離して判断せざるを得ず、最高裁としては困惑し、その結果が上記のような表現になった、という可能性も考えられる。別の受け止め方もあるかもしれず、さらに検討してみたい。
平成27年4月14日 JASRAC 上告受理等
公取委の上告受理
JASRACの上告不受理(二重上告受理の申立て)
JASRACの上告棄却
平成26年(行ヒ)第74号でJASRACの上告受理申立てを、公取委による上告受理申立てより後であり二重上告受理の申立てであって不適法であるという理由で受理しない旨の決定。
(公取委の上告受理申立てとJASRACの上告受理申立ては同日のようであり、時刻の先後があったとみられる。)
平成26年(行ヒ)第75号で、公取委の上告受理申立てを受理しつつ、公取委の上告受理申立て理由の全て、および、JASRACの上告受理申立て理由のうち2条5項の解釈運用の誤りをいう部分以外の部分、を、「いずれも重要でないと認められる。」として排除。
(「申立代理人中里浩」氏は上告受理申立て当時の審決訟務室長(当事者目録欄の岩下生知氏の前任者))
↓
2条5項について最高裁判決。
争訟経緯Gyazo
https://gyazo.com/714b7e2788294ceea329cb685e0dfa8e