『ユリシーズ航海記』
昨年7月、ジェイムズ・ジョイスやルイス・キャロルの翻訳で知られる英文学者で翻訳家の柳瀬尚紀さんが逝去されました。1993年、翻訳不可能と言われていた『フィネガンズ・ウェイク』を個人で初めて完訳して話題を集め、亡くなる直前まで、ジョイスの最高傑作『ユリシーズ』の完訳を目指して翻訳中でした。 そんな天才翻訳家が遺した『ユリシーズ』に関する文章と、『ユリシーズ1-12』に収録していない試訳を集成した『ユリシーズ航海記 『ユリシーズ』を読むための本』(柳瀬尚紀)が本日刊行となりました。第12章の発犬伝をはじめ、ジョイスが仕掛けた謎を精緻に読み解き、正解の翻訳を追求した航跡を一冊に集めた、まさに航海記です。