これなんかおかしない?
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「あれぇ?これなんかおかしない?」
クラウンクロスオーバーのハンドルを握る円が首をかしげる。
「何がですか?」
後部座席から静が訊ねる。
「いや、なんでプロが二人もおんのに僕が運転手なん?」
円がそう言ったが、プロのトラックドライバーである和は助手席で口をつぐんでいた。
「エビちゃん、これいつものことやけん、気にせんでええよ」
同じくプロのドライバーである遥が、隣に座る静に小声でそう言った。
「まぁええけどぉ?」
円がやたらいい声を腹から出すので、静はおかしくなってクスクスと笑っていた。
「俺のロードスターはツーシーターッスから」
若干申し訳なさそうな色をにじませて、和が言った。
「ほな僕と二人でデートするときは神田橋さんのロードスター出してもらうよぉ?」
「はい!」
和は姿勢を正して上ずった声で返事をした。
「和のやつ、めっちゃ緊張しとう」
遥が吹き出すと、釣られて静も吹き出した。
「なっ、なにがおかしいんや!」
後部座席の二人に和が怒りをあらわにするが、そんな態度も笑いを誘うばかりだった。
鳴門の道の駅、くるくるなるとまでの道のりを、和は景色も見ずに、ハンドルを握る円ばかり見ていた。
信号待ちで円が横目で和を見て微笑むと、慌てて視線を外して見ていないふりをしたが、赤く染まった頬までは隠せなかった。
「僕が車を出さんのは、やっぱり東雲さんのクラウンが好きやけんやな~。ええ車やし、東雲さんは運転がうまいし」
嘘か本当か、流れる景色を見ながら遥が言った。
「僕は伊勢原さんの横にも乗ってみたいです」
そんな遥を見ながら、静が言う。
「ホンマ?ほな今度2トンの横乗せたぁわ」
静を見て、ニヤニヤしながら遥が言った。
「ホンマに乗せてくれるんですか?」
静が目をキラキラ輝かせるので、遥は慌てて「うそうそ」と言わなければならなかった。
静は少しがっかりした様子だったが、遥が語る現場の話を興味深そうに聞いていた。
現場のことを知りたがる事務員もあまりいなかったので、遥は饒舌になっていた。
遥は静にいろいろ話して聞かせるのが好きだった。静はどんな話も、遥の目を見つめて真剣に聞いた。
#かわいいなぁ、ホンマ