なんでプロが二人もおんのに僕が運転手なん?
「いやいや、おかしいやろ」
「なんでプロが二人もおんのに僕が運転手なん?」
和は助手席で、遥は後部座席で黙っている。
「いつもすいません」
「全然ええんよ」
たまらず静が言うと、円は全く気にしていない様子でそう言った。
円が運転手を務めるのはいつものことだった。
とりあえず文句を言っておくのも、お決まりだった。
「神田橋さん、助手席に座ったからにはナビ頼むで」
「かしこまりました!」
スマホ片手に和が声を張り上げた。
「何緊張しとん」
「え!してへんスよ!?」
後ろから遥に言われて否定するが、その声もひっくり返っている。
「東雲さんの助手席やけんでしょ」
静の言葉に一転、和はドスの効いた声を出した。
「こわ」
和の手が届かないところに座っているので、静は余裕たっぷりで笑っている。
「かわいいな、神田橋さんは」
振り返って静につかみかからんばかりの勢いだった和も、円の一言でおとなしくなってしまった。