うどんが脳になっとんスよ
「なんそれ」
「どういうこと?」
怪訝な顔で遥が訊ねる。
「ほなけんね、うどんが脳なんスよ」
「こわ」
遥は、和の言葉が一ミリもわからないという表情だった。
そして、隣のコンビニから出てきた静を呼び止める。
「エビちゃんこれ、うどんが脳なんやて。こわない?」
遥が差し出したハンカチを、静はまじまじと見ていた。 「かわいいですよ」
静は笑顔でそう答えた。
それを聞いた和が嬉しそうに声を上げた。
「おっさんにはわからんかったッスかね?」
煽る和を横目に、遥は円に向けて手を挙げ、呼び寄せた。
「東雲さんはこれかわいいと思います?」
遥に訊ねられて、ハンカチに刺しゅうされたキャラクターをじっと眺めて黙り込む円。
「なんなんですかこれ」
「うどんが脳になっとうらしいですよ」
遥の言葉を聞いて、円はさらに思案する。
「こわ」
遥と全く同じ感想を漏らす円を指さして、遥はニヤニヤ笑った。
「和が言うには、それのかわいさがわからんかったらおっさんらしいですよ」
和は遥につかみかからんばかりだった。
それを見ていた円が、呆れたように笑う。
「ほな神田橋さん、ここで運転代わってよ」
「あ!ちょっと怒ってるやん!伊勢原さんのせいッスからね!」
和は遥を見上げて、口を尖らせた。
「和、東雲さんはクラウンのハンドルを他人に握らせたことがないんやぞ」 遥がそう言うと、和はキョトンとして黙ってしまった。