声でうどんの量は決まらんけん
「伊勢原さん、かき揚げうどんキツイって言うてたやないですか」
そんな遥を横目で見ながら静が口を尖らせた。
「いつぅ?」
「こないだ、もう年やからキツイみたいに言うてましたよ」
「失礼なこと言うなよ」
遥が笑いながら言った。
「伊勢原さん、キツイって言うてましたよ。ボケとんやね」
円が静に威力強めの助け舟を出した。
不満げに遥が言う。
和が遥にとどめを刺した。
「やかましわ!すんませーん、かき揚げうどん、大!」
店員を呼び止めた遥が声を張り上げた。
「ほな僕とり天うどん大」
メニューを眺めながら円が言う。
「僕、肉うどん小」
「俺は肉うどん大な!」
静に続いて和がクソデカい声で注文した。
「神田橋さん、そんなデカい声出さんでも、声でうどんの量は決まらんけん」 静が呆れたように言う。
「知らんの?決まるんやで?」
静を見てニヤニヤしながら和が言った。
静が遥に視線を移すと、遥は真剣な顔をしていた。
「決まるんやで、エビちゃん」
「え、嘘ですよね?」
不安げな静は、少し上目遣いに円を見た。
「エビちゃん」
円も真剣な顔をしていた。そして、2秒ほどの沈黙があった。
「決まるわけないやん」
円が笑う。
静は隣に座る遥の腕を叩いて怒った。