声でうどんの量は決まらんけん
#なんでプロが二人もおんのに僕が運転手なん?
「おっ!かき揚げうどんあるや~ん」
うどん屋のメニューを見て、遥が声を弾ませた。
「伊勢原さん、かき揚げうどんキツイって言うてたやないですか」
そんな遥を横目で見ながら静が口を尖らせた。
「いつぅ?」
「こないだ、もう年やからキツイみたいに言うてましたよ」
「失礼なこと言うなよ」
遥が笑いながら言った。
「伊勢原さん、キツイって言うてましたよ。ボケとんやね」
円が静に威力強めの助け舟を出した。
「ピチピチの47歳やぞ」
不満げに遥が言う。
「もうね、ほの言い方が年寄りなんスよ」
和が遥にとどめを刺した。
「やかましわ!すんませーん、かき揚げうどん、大!」
店員を呼び止めた遥が声を張り上げた。
「ほな僕とり天うどん大」
メニューを眺めながら円が言う。
「僕、肉うどん小」
「俺は肉うどん大な!」
静に続いて和がクソデカい声で注文した。
「神田橋さん、そんなデカい声出さんでも、声でうどんの量は決まらんけん」
静が呆れたように言う。
「知らんの?決まるんやで?」
静を見てニヤニヤしながら和が言った。
静が遥に視線を移すと、遥は真剣な顔をしていた。
「決まるんやで、エビちゃん」
「え、嘘ですよね?」
不安げな静は、少し上目遣いに円を見た。
「エビちゃん」
円も真剣な顔をしていた。そして、2秒ほどの沈黙があった。
「決まるわけないやん」
円が笑う。
静は隣に座る遥の腕を叩いて怒った。