隠れた真実
広く受け入れられているが未検証の前提
賛同されない、隠れた真実
賛成する人がほとんどいない、大切な真実はなんだろう?
採用面接でかならず訊く質問がある。「賛成する人がほとんどいない、大切な真実はなんだろう?」
ストレートな質問なので、ちょっと考えれば答えられそうだ。だけど実際には、なかなか難しい。学校では基本的に異論のない知識しか教わらないので、この質問は知的なハードルが高い。それに、その答えは明らかに常識外れなものになるので、心理的なハードルも高いからだ。明晰な思考のできる人は珍しいし、勇気のある人は天才よりもさらに珍しい。
僕がよく聞かされるのは、こんな答えだ。
「この国の教育制度は崩壊している。今すぐに立て直さなければ」 「アメリカは非凡な国家だ」 「神は存在しない」
どの答えも感心しない。最初の二つは真実かもしれないけれど、多くの人が賛成するだろう。三つ目はおなじみの論争の一方に味方しているだけだ。正しい答えは次のような形になるはずだ。「世の中のほとんどの人はXを信じているが、真実はXの逆である」。
最も稀少かつ重要な報酬は最高の仕事
ビジネスで最重要なのは独占
多くの人は創造された成果物を手にするのは好きだけど、創造プロセスは嫌い
技術は劣化する
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「オンラインの資金移動は組織同士の間では可能かつ安全にできるが、個人間はうまくいかない」
「宇宙開発は公的資金を用いて、使い捨てロケットを使わなければならない」
「顧客はビデオを自宅近くの店舗から借りる」
成功した投資案件のリターンが、その他すべての案件の合計リターンに匹敵するか、それを超えること
ベンチャーキャピタルにとっての何よりも大きな隠れた真実は、ファンド中最も成功した投資案件のリターンが、その他すべての案件の合計リターンに匹敵するか、それを超えることだ。
ということは、ベンチャーキャピタルには奇妙な鉄則が二つあることになる。第一の鉄則は、ファンド全体のリターンを一社で叩き出す可能性のある企業だけに投資すること。これには度胸がいる。投資可能な案件の大半がここで消えてしまうからだ(たとえ成功している企業でも、そこまでのリターンを生むことは珍しい)。ここから第二の鉄則が導かれる。つまり、第一の鉄則による縛りが厳しすぎて、それ以外のルールは設けられないというものだ。
もちろん、どのスタートアップが成功するかを確実に予測できる人間はいないし、最高のベンチャーキャピタル・ファームでさえ、「ポートフォリオ」を組んでいる。それでも、 大規模に成功できる可能性があるスタートアップだけを組み入れるのが、良質のベンチャーポートフォリオだ。
投資の焦点が、ビジネスの本質から分散戦略にはまるかどうかという投資テクニックの問題に逸れてしまうと、ベンチャー投資は宝クジを買うのと変わらなくなる。そして、宝クジを買うようなものだと思い始めたとたん、君はすでに心の中で負けを覚悟しているのだ。
グローバリゼーションよりもテクノロジーの方がはるかに重要
先ほどの逆説的な質問への僕自身の答えは、「ほとんどの人はグローバリゼーションが世界の未来を左右すると思っているけれど、実はテクノロジーの方がはるかに重要だ」というものだ。今のままのテクノロジーで中国が今後二〇年間にエネルギー生産を二倍に増やせば、大気汚染が二倍になってしまう。インドの全世帯が既存のツールだけに頼ってアメリカ人と同じように生活すれば、環境は壊滅されてしまう。これまで富を創造してきた古い手法を世界中に広めれば、生まれるのは富ではなく破壊だ。資源の限られたこの世界で、新たなテクノロジーなきグローバリゼーションは持続不可能だ。
新しいテクノロジーが時間の経過とともに自然に生まれることはない。僕らの祖先は固定的なゼロサム社会に生きていた。そこでの成功とは、他者から何かを奪うことだ。富の源泉はめったに生み出されず、普通の人が極限の生活から抜けだせるほどの富を蓄積することはできなかった。でも原始農耕から中世の風車、そして一六世紀の地球儀までの一万年にわたる断続的な進化を経て、いきなり一七六〇年の蒸気機関の発明から一九七〇年頃までの間に、たて続けに新たなテクノロジーが発明されていく。そのおかげで、僕たちの世代はこれまでのどの世代も想像できないほど豊かな社会を受け継ぐことになった。