構成的記憶
参加者は車が衝突する場面のビデオを視聴する。その後に、一方の参加者には「車がぶつかった時にどのくらいのスピードでしたか」と訊ねる。もう一方の参加者には「車が激突した時にどのくらいのスピードでしたか」と訊ねる。このように訊ねると、後のグループのほうが前のグループよりも車の速度を高く報告することがわかった。さらに、一週間後に同じ人たちに、「車のガラスは割れましたか」という質問をする。実際には割れてはいないのだが、激突という言葉を聞いたグループが「割れた」と報告する割合はもう一方のグループの二倍にもなったのである。
この実験結果は、記憶が符号化や保持の時点ではなく、それらの後に得た情報によって歪み、書き換えられることを示している。ただし、最初の質問で「激突」という言葉を聞いたグループの答えは、その言葉につられて高い値を報告してしまったとも考えられる。そもそも人間は速度を正確に計測することなどできないのだから、そうした可能性は十分にあるだろう。しかし、ガラスが割れるか否かは、そうした問題とは異なる。事実としてあったか、自分が見たか否かであり、場に合わせて値を少し調整したというレベルの歪みではない。再生の時に与えられた情報によって、全くないことが作り出されてしまったのである。これは構成的記憶と呼ばれている。
論文
Loftus, E. F., & Palmer, J. C. (1974). Reconstruction of automobile destruction.
出典