思い出しやすさ(符号化特定性原理)
思い出すべき記憶痕跡(記憶表象)と、思い出す時(検索)の手がかりが一致しているほど思い出しやすくなる 思い出すべき記憶表象とはどんなものなのかということが問題になる。私たちは、実は単語のリストを覚える時にその単語だけではなく、その場のいろいろな情報を含めたエピソード記憶表象を作り出している。
たとえば今「符号化特定性原理」という、意味不明(?)な言葉を覚えようとする時、この単語だけが頭に入るわけではない。この本の周りにあるPC、マグカップ(また?)、スタンド、茶色い机などの対象物、暑いなどの気温、汗がにじんでくるというような自分の体調、「符号化って確か覚えるっていうことだったな」、「英語で何ていうのだろうか」というような自分の認知的な操作など、さまざまなものが込みになって、複雑なネットワークからなるエピソード記憶表象を作り出しているのである。
思い出す時の手がかりについても同様である。心理学の実験では手がかり再生というと、手がかりには主に単語が用いられる。しかし、この単語は単体として認識されるわけではない。意味記憶、概念の複雑な関係性の中に存在しているので、手がかり語が呈示されれば、それに関連する単語や概念もある程度まで活性する
精緻化、つまり、情報を増やすことが、なぜ記憶の障害とならずに助けになるのかもわかってくる。精緻化を行うことは、記憶すべき項目に関する表象のネットワークを豊かにすることである。この中には、記憶する項目と概念的につながっているものや、連想的につながるものも多数含まれるだろうし、またその時に行った自分の認知的な操作も当然入るだろう。こうした豊かなネットワークは、再生状況に存在するさまざまな情報と親和性が高くなると考えられる。このことが想起を助けているのである。 https://gyazo.com/1e98170cced2f8b979f9c0b2f59833fe
出典
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