メタメッセージ
言外のメッセージ
関連
メタメッセージの性質
・先行性
・巨視性(枠組を語る)
・言外性
先行するメタメッセージ
実験室を眺めれば、テーブルに一通りの実験が用意されている。ビーカーと、ビーカーに注がれた飽和水溶液、ビーカーのふちに置かれた割り箸、割り箸から水溶液に垂れ下がった糸、糸の先端に接着された種晶という、自然界ではあり得ない意図的な空間上の配置がされている。種晶は飽和水溶液の中で結合と分離の反応を始めている…。
「実験室を眺めれば、テーブルに一通りの実験が用意されている。」は後に続くメッセージの巨視的なメタメッセージ。
コミュニケーションのメタメッセージ
メタメッセージとは、タネン(Tannen, 1986)によれば、私たちの発言(メッセージ)を枠づける(フレーミングする)ための間接的なメッセージのことです。たとえば、辛辣な批判の言葉が親しい間柄で笑顔とともに投げかけられれば「冗談」になったり、ほめ言葉が冷たい口調では皮肉になったりするわけです。「これは冗談だよ」「これは皮肉です」といった言外のメッセージが、メタメッセージということになるのです。
相手の話を聴きながら打つあいづちやうなづきも、「ちゃんと聞いてますよ」「続けてください」というメタメッセージととらえることができます。
関連
裏側を見てみると、その表の糸を表現させるための別の動きがあることに気づきます。それもまた、表と文字通り表裏一体となって一つの表現となるのです。
デボラ・タネンというアメリカの言語学者は、コミュニケーションにおけるメッセージとメタメッセージの区別を大切にすることを主張しました。メッセージとは実際に発せられたものです。たとえば、「なんでできなかったの?」と親が子どものテストの答案を見てため息まじりに言っていると想定しましょう。「なんでできなかったの?」と発せられたことばが、メッセージと呼ばれます。刺繍でいうなら、表側です。
しかし、私たちは表側だけがすべてではないことを知っています。そこには、できなかった原因を純粋に知りたいという親の思い以外のものが見え隠れしています。原因を知りたい以上に、まず親の気持ち「あなたの成績にはがっかりした。」という思いが、ため息から伝わってきませんか?さらには、がっかりしただけでなく、「腹が立っている、いらいらさせられている」という感情も伝わってくるようです。子どもとしてはこのようなことばを投げかけられれば、つい「わかっているよ。うるさいなぁ」と言い返したくなるところです。自分の成績に対する否定的評価がふってきたわけですから、防御に入ります。「親の頭が悪いからだろ」などと攻撃にでるかもしれません。
ことばとして発せられた質問は、落ち着いて考えれば、悪かった原因を明確にして、次に同じ失敗をしないようにしよう、という前向き・肯定的なものとして役に立つ「はず」の質問です。でもそれが「否定的評価と不快感の表明」として受け取られることの裏にはわけがあります。メタメッセージという別の意味がそこに込められている、少なくとも受け手側はそう感じるのです。
さぁ、ここで裏側の登場です。メタメッセージとは、タネンによれば、人間関係における立場や気持ちを伝えるもので、しばしば真の意図を伝えることがあります。さきほどの例でいえば、親が子どもの一段上に立って見下すような構図が見て取れます。「わたし(親)は、あなたの悪い成績を否定的に評価する立場にある」ということを暗に伝えています。つまり人間関係におけるパワーの差、上下関係の差がまず伝わります。誰でも、他者から「あなたは一段下。私のほうが一段上」という位置関係を押し付けられればいやな気分ですよね。
メタメッセージは、ことばの選び方はもちろん、声の調子、トーン、顔の表情、話すときのスピード等、ことばを発するときにことばに覆いかぶさってくるさまざまな要素(これを専門用語でパラ言語的要素と呼びます)によって伝わります。お母さんの厳しい顔の表情、ため息、いらいらした声の調子・・・そのようなものが話し手の否定的感情を伝えているのです。
だから、受け手側はメタメッセージに敏感に反応します。ことばでどんなことを言っても、メタメッセージに込められた、話し手と聞き手の今ここで起きている心理的距離感、人間関係への評価に関する情報を読み取っているのです。
「なぜできなかったの?」ということばの裏に、「勉強しなかったからでしょ?あれだけ言ったのに。お母さんのいうことをちゃんと聞かないからこんなひどい成績とってくるのよ。」というさまざまな裏面のメッセージを受け取るのです。だからこの質問は、しばしば子どものやる気を起こさせるためには何の役にも立たない、とまで言われるのです。
そうはいっても、私たちは生きていくうえで、失敗は当然ありますし、その原因を見つめ対処する必要があります。どうしたら、前向きに一歩進むために失敗の原因を考えることを、相手に促すことができるのでしょうか。
ここでもまたメタメッセージの登場です。メタメッセージで「あなたの応援団です。あなたを否定するのではなく、さらに前進し成長するための一歩を踏み出せるように、一緒に考えたいのです」という思いを伝える工夫が必要です。
表と裏のメッセージを読み解く
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環境のメタメッセージ
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