先行オーガナイザー(Advance Organizer)
容易に理解できるように伝える情報に先行して提供する枠組のこと。
教育心理学者のAusubelによれば,人は新しい概念を学ぶ時,既に持っている知識を枠組みとして利用すると理解が促進され,記憶の定着も良いそうだ.したがって,学習前に既存の知識を再確認することにより,学習は「易しく」なる.どういう「既存の知識」をどのように用いて新しい概念を説明するかが教育者の工夫のしどころであり,この場合の「既存の知識を用いた枠組み」が「先行オーガナイザ」である.
オーズベルとフィッツジェラルドFitzgerald,D.(1961)は,アメリカの大学生に仏教の教義を学習させる課題を用いて,仏教の主要な思想をまとめた文章(説明オーガナイザー)または仏教とキリスト教の類似点・相違点をまとめた文章(比較オーガナイザー)を先行提示する実験を行ない,比較オーガナイザーが既有知識(キリスト教の知識)の低い学習者における仏教の理解と保持を促進する効果をもつこと,説明オーガナイザーも知識の保持に一定の効果をもつことを見いだした。
例
目次
アジェンダ
効果
記憶には効果は薄いけれど、実社会で知識が利用されるといった学習転移に効果がある
中学校第1学年生徒が花の形態を学習するについて,先行オーガナイザの有無が及ぼす学習効果を,成績の上位群と下位群とて比較した。その結果次の二点が明らかになった。
1.保持テストでは,成績上位と下位群間で遂行の差が見られ,先行オーガナイザの有無では差が見られなかった。
2.転移テストでは,成績上位-下位群間,および,先行オーガナイザの有-無群間で遂行の差が見られた。上記の結果から,先行オーガナイザを用いた一つの授業の有効性が明らかにされた。
理科教授における先行オーガナイザの効果 第1報 : 中学校第1学年,花のつくりの学習において
作り方
学習目標の概念や命題を理解する
上記の命題を、学習者の過去の経験や知的成熟にあわせて、学習者の具体的操作の可能な水準や、理解可能性の水準に変換する
上記のモデルを作る
モデルと、学習内容の達成基準との関係を明確にする
検証
事前テスト、事後テスト、遅延事後テストを行って先行オーガナイザーの有効性を評価する
数学の例
https://www.youtube.com/watch?v=2rC0ZsegAvU
関連
論文
佐伯卓也. (1979). 数学の学習に有効な先行オーガナイザーについて.
新谷しづ恵. (2017). 中学生におけるイオンの学習に及ぼす先行オーガナイザーの効果. 教材学研究, 28, 17-24.