ナッジ
nudge
当人にとって望ましい行動を自発的にとれない状況下にいる人に、事項可能な方法を提供するもの
方法を選択しない自由を残したパターナリズム
例
低所得者向けの無料健康診断
「あと1ヶ月で1万円分の無料診断が受けられなくなります」
千葉市の男性職員の育休取得率
2016年 育休を取ることをデフォルトにし、取らない場合は理由を提出するようにした
取得率の変化
2013年2.2%
2016年10.3%
2017年22.9%
概要
・ナッジ(英語nudge)とは、「そっと後押しする」という意味で、セイラー教授らは、2008年にその著書の中で「選択を禁じることも、経済的なインセンティブを大きく変えることもなく、人々の行動を予測可能な形で変える選択アーキテクチャーのあらゆる要素」と定義しています。
・ここで、「選択を禁じることもなく」とは規制や強制ではなく、選択の自由は残すことを意味します。
・「経済的なインセンティブを大きく変えることもなく」とは、税制や補助金のように経済インセンティブを大きく変えるものではないことを意味します。この場合、少額の節約やポイントなど経済インセンティブを小さく変えるものは除外していませんが、経済インセンティブの受け止め方の大小は個人差があり一様に言えません。少なくとも、経済インセンティブだけで動かすのはナッジではないと言えます。
・「人々の行動を予測可能な形で変える」とは、行動科学の知見や理論に基づいて、ということを端的に表したものです。
行動科学とは、行動経済学、心理学、社会学、認知科学、脳神経科学等の行動に関する自然・人文・社会科学の総称(behavioral sciences)です。
・「選択アーキテクチャー」とは、人々が選択する際の「環境」のことで、自発的に「合理的」な意思決定をさせるための環境をどうデザインするかが重要となります。
・その後セイラー教授は2018年に、ナッジを通じて選択アーキテクチャーを改善することで、選択肢を制限することなしに人々が賢い選択をできるようになるとしています。そして、「自分自身にとってより良い選択ができるように人々を手助けすること」が目的であるとしており、このような「良いナッジ」を推奨しています。
・セイラー教授はまた、賢い意思決定や向社会的行動を難しくするような「悪いナッジ」を「スラッジ(英語 sludge:ヘドロ)」と名付け、公共部門・民間部門を問わずスラッジを一掃するよう働きかけています。
認知的な処理が必要な場合は効果が薄い
戦略意思決定が必要だったり、現金の支払いと言った心理的なハードルがあるものには効果が限定的という調査もある。たとえばインフルエンザウィルスワクチンの接種や、マンモグラフィー健診の受診率は変わらなかったという報告がある。
その反面、日常的な行動や、自動的な処理が可能な場合は効果が高い。たとえば参加者の平均歩行回数に対して、自分の歩行回数を掲示すると歩数が伸びた報告がある。
・自動的な行動である
・日常的に行っている行動である(頻度が高く、介入から行動までの時間差が短い)
・介入タイミングが適切である
事例
誘導
https://gyazo.com/c30f47fc24065e530782f6dee0549ba9
社会比較ナッジ
https://gyazo.com/24756c1e065b38f3b17fdf4c7668f15d
https://gyazo.com/d91f0285f8946415ddb8909c12bb1865
ナッジの条件
・本人の利益になる
・やらない自由の選択が容易
関連
他の人が関わるナッジ
ナッジの正当性
・時間をかければ選ぶはずの選択肢をナッジを用いて誘導する
ネットフリックスは2012年8月に、「自動再生(post play)」と呼ぶ新機能を導入した。この機能を使うと、たとえばドラマ『ブレイキング・バッド』全13話が、いわば13時間の1本の映画になるのだ。1話が終わると自動的に次のエピソードがロードされ、5秒後には再生が始まる。1つのエピソードが手に汗握るクリフハンガーで終わったならば、そのまま待っていれば続きが始まり、クリフハンガーが解消されるというわけだ。この機能が導入される前は、次のエピソードを観るという判断を能動的に下す必要があった。しかし今は、観ないという判断をする必要がある。
ネットフリックスの新機能に対する反応も、それと同じことだった。自動再生機能が導入されたあと、ネットフリックス・ユーザーは続きを観ない場合に、その意志を自分の力で行動に移さなければならなくなったのだ。そして多くのユーザーが、とりえあず何もしないことを選び、気づいたら『ブレイキング・バッド』を8話連続で観つづけていたのである。
事例
https://gyazo.com/4489e5063e93ee9dff36a1ea55f583bd
https://gyazo.com/ad329787b75755158e3c0ebccb12e4a3
利用者向けのリーフレットは、対象者のイメージに合った写真を表紙に使用し、「申し込みをする」という難しそうな行動を最終目的とするのではなく、シンプルな言葉で「電話を掛ける」という、より簡単な行動にブレイクダウンして後押しするよう変更したほか、得られる利点を目立つようにしたり、社会的規範に働きかけるような利用者のコメントを掲載するなどの工夫を行った。さらに、選択肢が多くなりすぎると人はどれを選べばよいかわからなくなってしまうため、リーフレットに記載する機器は4種類に絞ることで行動に移しやすくしている。
一方、職員向けのリーフレットは、アシスティブテクノロジーがどのような場面で役立つのかを絵を交えたシナリオの形で掲載したほか、サービスを紹介するプロセスを4つに分けることで、利用勧奨のハードルを下げた。
この取り組みを行った結果、事業を実施する3か月前と比較した1か月平均の紹介状の発行件数は、事業実施前の 57 件に対し 79 件に増加、実際の導入も、実施前60 件に対し、76 件となった。しかしこの結果は、委託業者の人員不足によりスピーディーな対応ができなかった状況下でのものであるため、本来もっと差がでるはずだったと分析されている。
世界の「ナッジ」事情~行動変容をそっと後押しするコツ~
「謎の言葉」で万引き3割減 警部が店に仕掛けた秘策
第16回日本版ナッジ・ユニット連絡会議を開催しました 環境庁
https://gyazo.com/f1d35ed46ac8744b92c8e1103bc5b053