スケールダウンメソッド
scale-down method
知識獲得のために応用した例
時間のスケール
1秒未満
数十秒
数十年
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伝統的なスケールアップ・アプローチの別の選択として、ネイサンとアリバリ(Nathan & Alibali, 2010)はシステムと要素アプローチを統合する1つの方法としてスケールダウン・メソッド(scale-down method)を提案した。スケールダウン・メソッドは、システムをシステム視点から研究することで始まる。それが自然に起こる複雑な場面(たとえば、教室)で学習環境を検討するのである。そして、これらのシステムの観察の分析はシステム・パフォーマンスを向上させる方法についての仮説を導き出すために利用される。
1.準分解可能なシステム(nearly decomposable systems)の中でシステム・パフォーマンスに影響を及ぼす潜在的下位システムを同定する。 2.これらの下位システムの設計とパフォーマンスを修正する。
3.修正したシステムを全体のシステムに再統合する。
4.自然な文脈でシステム全体の行動を観察する。
十分に分解可能なシステムは、独立して機能するモジュールから成り立っている比較的シンプルなシステムである。対照的に、準分解可能なシステムは、「要素的な下位システムの各々の短期的な行動はその他利用その短期的行動とはおおよそ独立している」が「長期的に見れば、どの要素の行動も他の要素の行動に集合的な意味合いにおいてのみ準拠している。
このように、準分解可能なシステムの相互作用は、そのシステム内において比較的強いのである。その一方で、もちろん無視することはできないものであるが、下位システムと他の部分との間の相互作用は比較的弱い。たとえば、眼球運動を管理するサッケードは、視覚課題の他の多くの側面から十分に分解可能である。それに対して、読解方略は、比較的独立に測定し向上させることができるという意味で準分解可能である。それでもなお、究極的には読解自体が環境や課題目標と相互作用をもっているのであるが(Perfetti, 1989)。 スケールダウンの目的は、可能であれば下位システムの設計(カリキュラム教材、相互作用のパターン、教師の行動)を向上させることである。下位システムの設計とパフォーマンスの改善は、研究と設計のシステム的方法と同様に、要素的方法を特徴づける正確さと統制によってもたらされる。このように、準分解可能なシステムの改善は、要素研究とシステム研究の方法を必要に応じて繰り返し使い分けながら遂行される。システム研究において測定方法の発達は、たとえば、システム行動の一側面を取り出しカテゴリー分け(categorization)や定量化(quantification)を支援する分析の枠組みに持ちこむ手段を発展させる必要があるという意味で、準分解可能性に準拠している。
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複雑な技術、社会システムをデザインし、評価し、向上させる時、準分解可能性を工学的方法は利用する。工学において歴史的に利用されている1つは、機能的分解(Bradshaw, 1992)である。機能的分解によってデザイナーは、システムの全体的なパフォーマンスを向上させるために、システム的方法(風洞の文脈で飛行行動を観察する)と同様に、要素的方法(浮力の測定)を利用して飛行機の翼のデザインを考えることができる。機能的分解は、複雑系の下位システムのデザインをテストし修正することが、全体のシステムをデザインし直すよりも安価で容易であるという理由で効果的である。
人の行動と目的は設計された技術システムのそれらと非常に異なるので、教育にとって、機能的分解の方法そのものは直接役に立たないかもしれない。しかし、それにもかかわらず、学習環境のデザインは機能的分解のようなテクニックから何らかのインスピレーションをもらえるかもしれない。
複雑系を分析するために要素的方法だけを利用する問題点は、そこで採用される因子分解仮定が、構成要素がシステムに再度投入される時に、特定の参加者と、構成要素を機能させるローカルな文脈の間の固有の相互作用を無視することにある。スケールダウン・メソッドはそうした再統合プロセス(reintegration process)の重要性を強調する。
再設計された下位システムは大きな全体システムの詳細と関心のある要素の質をよく理解している参加者によって思慮深く再統合される必要がある。そして、システム研究の方法を用いて現実場面の学習環境の中で再設計されたサブシステムは研究されねばならない。
論文
Nathan, M. J., & Wagner Alibali, M. (2010). Learning sciences. Wiley Interdisciplinary Reviews: Cognitive Science, 1(3), 329-345.
Bradshaw, G. (1992). The airplane and the logic of invention.
出典
関連
10^4s(時)〜10^6(日)
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もともと人間の知能における記号系RNNは、知覚運動系RNNが長期の行動計画を立てることをサポートするものだったはずだ。知覚運動系RNNが行動計画を立てるには、細かい身体制御のコントロールから、より大きな行動計画まで複数の時間スケールで計画を立てなければならない。抽象度が高く、次元の少ない情報にできれば、時間変化がゆっくりになり、操作が容易になり、より長期の行動を行うことができる。原始的な記号系RNNは、知覚運動系の階層の深いものとして出現したはずである。
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