ならば推論
「ならば」という表現にはいろいろなタイプが存在する。「片面が奇数ならばその裏は平仮名」のような恣意的な「ならば」もあれば、許可や利得と対価を含むような「ならば」もあるし、「水の温度が一〇〇度ならば沸騰する」というような因果に関わる「ならば」もある。論理学の世界で使う「ならば」はこれらをすべて包含したものであるが、私たちは「ならば」の文脈のタイプ(つまり意味の違い)に応じた推論のスキーマを持っている。
実用的推論スキーマの一つである許可のスキーマや、社会契約説における利得─対価のスキーマは、すべての「ならば」のうちのある部分をカバーするだけである。その意味で万能ではないし、論理学でいう「ならば」と等価ではない。
参考: #併走する認知リソース
出典
『教養としての認知科学』
#思考の文脈依存性 #論理学と実世界の違い #言語の未完成性