議論が巧みな人は真実ではなく自分の見解を支持する理由を探してる
真実の追求を是とする人は、理性崇拝をやめるべきだ。証拠を冷静に見つめて、思考とは何たるかをよく考える必要がある。フランスの認知科学者ユーゴー・メルシエとダン・スペルベルは、動機づけられた推論をテーマとする(社会心理学の)論文と、思考におけるバイアスや誤りに関する(認知心理学の)論文を徹底的に調査している。その結果、それらの研究の奇異で気の滅入る発見のほとんどは、「思考能力は、真実を発見するためでなく、誰かと論争する際に、議論、説得、人心操作を巧みに行なうための補助手段として進化したと見なせば、完璧に理解できる」と結論している。「議論の巧みな人は、(……)真実ではなく、自分の見解を支持する理由を探している」と二人は言う*50。このことは、確証バイアスが、なぜ非常に強力で根絶しがたいかを説明する。ジョナサン・ハイト. 社会はなぜ左と右にわかれるのか――対立を超えるための道徳心理学 . 株式会社紀伊國屋書店. Kindle 版. 位置2126