トランスヘイトをなくす方法
リーダーシップ・ラボの創設者であるデイヴィッド・フライシャーは、トランスジェンダーの権利についての考え方(そして最終的には政策)を変えるためにこの組織を作った。だが、このように深く根付いた反対派の意識を変えるにはどうしたらよいのだろうか。「ディープ・キャンバシング」という手がある。これはまさに革命的と呼ぶにふさわしい新たなキャンバシング手法(有権者を戸別訪問して投票を依頼したり、関心事や政治的見解を聞き出したりする対話行為)だ。「変化を嫌う人」を動かす:魅力的な提案が受け入れられない4つの理由 ロレン・ノードグレン,デイヴィッド・ションタル (pp.242-243). 草思社. Kindle 版. ディープ・キャンバシングの対話の基本的な流れは5つのステップで構成されている。 ステップ1:ある問題について有権者の意見を求める。 ステップ2:どのような信念を持っているのかを探るために、なぜそのように感じるのか訊ねる。 ステップ3:その問題についての個人的な経験を有権者に話してもらう。 ステップ4:有権者が最初に述べた意見に共感を示す個人的なエピソードを訪問調査員から伝える。 ステップ5:今問題にしている件についての意見を改めて訊ねる。「変化を嫌う人」を動かす:魅力的な提案が受け入れられない4つの理由 ロレン・ノードグレン,デイヴィッド・ションタル(p.243). 草思社. Kindle 版. こちらの意見をいうのではなく、相手の意見をまずは聞く。その意見の理由やそれを裏付ける体験を話してもらう。そうすることによって相手を理解するとともに、相手に考えを整理させるということなんだと思う。
実際のディープ・キャンバシングのやり取りは次のような感じになる。 会話は、 ある問題 (例:トランスジェンダーの権利)についてキャンバサーが有権者に意見を求めるところから始まる。 有権者が意見を述べているとき、キャンバサーは注意深く耳を傾けるが、その意見について評価はしない。 キャンバサーは有権者の意見に満足なのか残念なのかを顔に出してはいけないのだ。 次に、キャンバサーは有権者に対し、この問題と個人的なつながりがあるかどうかを訊ねる。 たとえば、家族や同僚にトランスジェンダーの人がいるかどうかを訊ねてみる。ここでキャンバサーがこの問題にまつわる自身の個人的な経験を話す場合もある。 そして最後に、有権者にこう訊ねる。 「前回、 あなたが本当に困っているときに誰かがあなたのことを思いやってくれたのはいつですか?」 これは、不利な立場にいる人たちと自分が無関係ではないことを有権者に感じてもらうための質問だ。この質問がきっかけで、 有権者はそれまで自分とはまったく違うと思っていたような人たちが、 実は自分と同じ人間だということに自ら気づくことになる。 「変化を嫌う人」を動かす:魅力的な提案が受け入れられない4つの理由 ロレン・ノードグレン,デイヴィッド・ションタル・243 ページ 最後になぜその質問をするのか、それがなぜトランスジェンダーが「実は自分と同じ人間」という気付きになるのか、ちょっと文章だけからは正確な理解ができない。
この手法が従来のキャンバシングとどのように違うのか見てみよう。 通常、活動家は、 どうしてその活動を支持すべきなのか、その理由を有権者に向かって頭ごなしにまくし立て、異なる意見を持つ人を非難する。 デイヴィッド・フライシャーは最近のインタビューでこのように語っていた。 「有権者に事実を叩きつけるのではなく、自由回答形式の質問を投げかけてその答えに耳を傾けます。それから、直前の回答に応じて次々と自由回答形式の質問を投げかけていくのです。 人が学んだ教訓は、統計情報を突きつけられたときよりも自分自身で結論を導き出したときのほうが記憶に残る、と考えているからです」「変化を嫌う人」を動かす:魅力的な提案が受け入れられない4つの理由 ロレン・ノードグレン,デイヴィッド・ションタル・244 ページ それでも、ディープ・キャンバシングを支持する証拠には目を見張るものがある。 最近の研究に、 トランスジェンダーの人々を差別から保護する法律についてフロリダ州の有権者の考えがどのように変わるかを追跡したものがある。 およそ500人の有権者に聞き取り調査が行われた。調査員は、ディープ・キャンバシングを経験した後ではトランスジェンダーの人々に対する嫌悪感が概して大幅に減少していることを発見した。 どのくらい減ったのだろうか。 トランスジェンダーの権利に対する支持の変化は、1998年から2012年にかけての、同性愛者の権利に対する米国人の平均的な変化よりも大きかった。この調査を行った研究者は、従来のキャンバシングの手法で有権者の意見を変えようとした他の49件の実験結果とこの結果とを比較したが、 有効性が証明された研究はその中に1つもなかった。「変化を嫌う人」を動かす:魅力的な提案が受け入れられない4つの理由 ロレン・ノードグレン,デイヴィッド・ションタル・245 ページ 具体的な数字がないのがもどかしい。有効性が証明された研究はその中にの「その」がなんだかわからん.....。