放射線感受性
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正常消化管の放射線感受性については,概ね[小腸>胃>下咽頭≒食道≒直腸]
消化管の内面を覆う上皮組織では,未分化な幹細胞から粘膜細胞への増殖,機能分化が常に行われている.小腸ではこの分裂活動の頻度が高く,放射線の感受性が最も高い.
■正常組織の放射線感受性
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■Bergonié-Tribondeau(ベルゴニー・トリボンドー)の法則
以下の性質を持つ細胞ほど放射性感受性が高い.
●分裂頻度が高い細胞
●将来,細胞分裂を多く行いうる細胞
●形態的,機能的に未分化な細胞
■腫瘍の放射線感受性
<高い>
悪性リンパ腫,髄芽腫,胚細胞腫,精上皮腫,Wilms腫瘍,Ewing肉腫,神経芽腫,皮膚癌(基底細胞癌)
<普通>
皮膚癌(扁平上皮癌),舌癌,食道癌,乳癌
<低い>
腺癌,骨肉腫,悪性黒色腫,放射線治療後の局所再発,甲状腺癌
■放射線感受性の高い腫瘍の覚え方
①細胞分裂の盛んな細胞ほど感受性が高い
●小児腫瘍,未分化癌
②放射線に弱い組織から発生した腫瘍は高感受性
●骨髄→白血病,リンパ球→悪性リンパ腫.ただし例外が多いので注意.
③低分化癌(胎児型肉腫)>高分化癌(非胎児型肉腫)
●〜芽(細胞)腫は一般的に感受性大.
〜芽腫は神経膠芽腫以外は高感受性と覚える.
④大まかには,未分化癌>扁平上皮癌>腺癌
※放射線の強い感受性のあるものとしては,一つは血液系の疾患,すなわち悪性リンパ腫,あるいは白血病である.次にセミノーマが感受性がある.「~芽」という字の入ったものは通常未分化な腫瘍を意味しており,そのような場合には放射線感受性がある.代表的なものとしては,髄芽腫,網膜芽細胞腫,神経芽腫,腎芽細胞腫(Wilms腫瘍).また,一般的には肉腫は放射線感受性が低いが,例外としてEwing肉腫は放射線感受性が極めて高いので有名である.
■放射線感受性の高低
1)正常細胞・組織
骨髄,腸上皮(特に小腸)などで感受性が高い.
神経,筋などで感受性が低い.
2)悪性腫瘍
胚細胞腫瘍(セミノーマなど),Ewing肉腫などで感受性が高い.
腺癌(膵癌,腎細胞癌など),肉腫(骨肉腫,線維肉腫など)で感受性が低い.
3)細胞分裂
G2期・M期で感受性が高く,G1期・S期で低い.
分裂頻度の高い細胞の方が感受性が高い.
4)細胞の分化度
形態的,機能的に未分化な細胞の方が感受性が高い.
5)細胞・組織の置かれた環境
酸素分圧の高い組織は感受性が高い(酸素効果).
酸素は放射線照射で損傷を受けた細胞の修復反応と競合し,損傷を固定する.このため低酸素状態の細胞よりも高酸素状態の細胞の方が放射線により細胞致死率が高い.これを酸素効果という.
酸素分圧が高い組織 > 酸素分圧が低い組織
細胞は酸素分圧の高い環境に置かれると放射線感受性が高まる(=酸素効果).
実際の治療においても,高気圧酸素治療と放射線治療を併用することがある.
リンパ球,好中球,血小板,赤血球の順に減少
■放射線障害の分類
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