心タンポナーデ
/cardiac tamponade
大動脈解離や心破裂,外傷、膠原病、悪性腫瘍の心膜浸潤(心膜癌腫症)
結核
心タンポナーデの発症は溜まった心膜液の量によるのではなく,溜まる速度に依存
一方で甲状腺機能低下症(粘液水腫)では心膜液貯留速度は極めて遅く,多量に溜まってもまず発症することはない 【問診】
胸部圧迫感(→心臓に問題がある可能性
既往歴:膠原病、悪性腫瘍の心膜浸潤(男性では肺癌,女性では乳癌を原因とすることが多い.なお消化管の癌の心膜転移はまれ)
【身体所見】
頸静脈怒張(→右心不全(→肺高血圧症、右室の外からの圧迫(心タンポナーデや収縮性心膜炎)の2通り 心音ではⅠ音とⅡ音の減弱(→心膜液貯留の可能性
下腿に軽度の浮腫
Beckの三主徴(血圧低下,頸静脈怒張,心音減弱),心エコー図のecho free space
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脈拍116/分,整.血圧88/58mmHg(=洞性頻脈・低血圧→低心拍出量症候群,プレショック状態) (陰性所見)
眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない.(→貧血、肝機能障害
【検査】
血液所見:赤血球346万,Hb 10.8g/dL,Ht 33%,白血球7,200,血小板15万.血液生化学所見:ALT 26U/L,LD 160U/L(基準120〜245),クレアチニン0.5mg/dL,脳性ナトリウム利尿ペプチド〈BNP〉56pg/mL(基準18.4以下).CRP 3.8mg/dL.
収縮期血圧は呼気時に比べ吸気時に18mmHg低下する.(→10mmHg以上の低下は異常であり,奇脈(→「奇脈は究極の右心不全」
胸部X線写真ではCTR 55%,肺野に異常を認めない.心電図では肢誘導に低電位を認める.
心電図:R波低電位
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【治療】
心嚢ドレナージ
なお,Stanford A型急性大動脈解離で心タンポナーデを認めた場合には,緊急上行大動脈置換術が治療法として選択されなければならない.これにより再解離・再破裂を防ぐ.この時,心膜腔のドレナージを先行して行うと血圧が上昇して再解離・再破裂を促進する可能性があるので,治療法として心膜腔ドレナージを選択してはならない.人工心肺による体外循環確立を優先する.なお心囊という言葉が慣用されるが,心膜腔が適切である.